失敗しない自宅供養(手元供養)

供養の方法とその注意点を解説!自宅供養は今後どうなっていくのか?

失敗しない自宅供養(手元供養)
近年、葬儀形態の多様化とともに、遺骨についても墓地に納める以外に「海洋散骨」「樹木葬」「永代供養」などのスタイルをとるケースが増えてきました。遺骨の全部、もしくは一部をお墓ではなく身近に置く「自宅供養」(または「手元供養」)も、従来型とは違う新しい概念で、この10年ほどの間に選ばれ始めています。まだそれほど一般的ではありませんが、遺骨を自宅に安置したり、アクセサリーとして身に付けたりして供養する方法です。2006年にNPO手元供養協会が発足し、この団体が中心となって自宅での供養方法が提唱されるようになりました。この記事では自宅供養が行われるようになった社会的背景、自宅供養を行う上でのメリット・デメリット、注意点を考えていきます。

●自宅供養とは

お骨を手元に置いて供養することを「自宅供養」または「手元供養」といい、大きくわけて3つの方法が考えられます。

①遺骨のすべてを自宅に置いて供養する方法
②従来通り遺骨は墓地に納骨し、一部を自宅に置いて供養する方法
③遺骨の一部を自宅に置いて供養し、残りは散骨などを行い墓地には納めない方法

①遺骨のすべてを自宅に置いて供養する方法

墓地はあっても遠方にあり、すぐに納骨に行くのが困難である、または、まだ墓地の用意ができておらず納骨する場所がない場合、自宅で遺骨を保管し供養することができます。この場合は、いずれお墓に納骨することを前提としていますので、一時的な管理場所として自宅を選ぶという意味合いになります。さらに、様々な理由で墓地を用意すること自体が難しい場合や、お墓の建立を選択しないケースでも、遺骨のすべてを自宅供養することができます。

いずれも、火葬時に用意した骨壺に遺骨を入れてもらい、自宅に持ち帰ります。将来的にお墓への納骨を行うのであれば、納骨の時期に決まりはありませんので、納骨の日までお骨は納骨用の骨壺に入れたままで保管して供養します。将来も墓地には納骨しない、または墓地は持たないという場合は、自宅に供養のスペースを設けて遺影や供養の品とともに遺骨を安置する人が多いようです。墓地を持たない場合、おもに東日本で使われる大型の納骨用骨壺だと、自宅に置くのには少々大きいかもしれません。通常、葬儀社が提供するパック料金に含まれる骨壺はお墓への納骨用ですので、自宅供養にしたい場合はそれにふさわしい骨壺を選ぶのもよいでしょう。焼骨を粉砕して体積を小さくし、小ぶりな骨壺で自宅供養を行うこともできますから、希望があれば葬儀社や仏具店に相談することをお勧めします。ただし、専門業者に粉骨してもらう場合は別途料金が発生します。

自宅供養用の骨壺はデザインやカラーが豊富で、故人のイメージに合ったものやインテリアにマッチしたものを見つけることができるでしょう。なお、自宅にお骨を置いて供養することに法律上の問題はありませんが、昭和23年に制定された「墓地、埋葬等に関する法律」により「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」と定められています。つまり、家の中に特別なスペースを作って遺骨を供養することはかまいませんが、自宅供養だからといって家の庭にお墓を作って納めてはいけません。地方に行くと庭に墓石があるお宅を見かけることがありますが、その法律制定以前のものと考えられます。

②従来通り遺骨は墓地に納骨し、一部を自宅に置いて供養する方法

墓地があるので納骨は行うが、遺骨の一部は身近に置いていつでも供養をしたいという、主に心情的な理由から行われる方法です。遺骨の一部を自宅に持ち帰ることになりますので、「分骨」という手段をとることになります。分骨供養をする場合には、火葬場で納骨用の骨壺と分骨用のミニ骨壺などにそれぞれお骨を納めてもらいます。自宅供養品としてはミニ骨壺のほかに、遺骨・遺灰の一部をペンダントやブレスレット、指輪などに入れて常に身に付けていられる遺骨アクセサリーもあり、価格は2~5万円のものが中心でデザインも豊富です。さらに、遺骨そのものをアクセサリーに加工する技術も生まれましたが、この方法は費用が10~100万円とかなり高額で、日数も数ヶ月ほどかかることがあります。

③遺骨の一部を自宅に引き取り、残りは散骨などを行い墓地に納めない方法

近年は少子高齢化、核家族の増加でコンパクトな住環境を選ぶ人が増えています。転勤が多いために定住地を持たない人もいて、大きな仏壇や新たな墓地の購入が難しいケースもあるでしょう。そのような場合に、遺骨の一部を自宅で供養して残りを散骨したりする方法が選ばれることがあります。

●自宅供養は今後どうなっていくか

葬儀や納骨に関することは宗教行事の色合いが濃く、日本では主に仏教(一部にはキリスト教他)とのかかわりを大切にしてきた文化があります。しかし近年、そういった宗教的な供養を望まない人が増えてきています。「形にとらわれない供養をしたい」「遺された人々が好きな方法で供養をしたい」という希望も社会的に認められつつある昨今です。「慣例だから」という理由で、従来の供養形式に従わなくてもよいのではないか、という考え方がしだいに浸透してきました。「お墓離れ」「宗教離れ」「供養の多様化」という現象が広がってきた結果、自宅供養が選ばれるようになったといえるのかもしれません。今後、若い世代を中心にさらに供養のスタイルも多様化し、従来の形式に縛られない方法を選ぶ人が増えていくと考えられます。そのような需要に応じて、葬儀社や仏具店でも自宅供養のためのバラエティに富んだ商品を販売するようになり、インターネットでも購入することができる時代になりました。

●自宅供養のメリット・デメリット

供養の方法が多様化したため、社会的に認められつつある自宅供養ですが、メリットとともに当然デメリットも考えられます。自宅供養はまだ主流の供養方法ではなく、少数派であるがために周囲の理解が得られないケースがあることも、心にとめておかなくてはいけません。

▼自宅供養のメリット

・故人の死を受け入れられない、気持ちの整理ができない、故人と離れる悲しみに耐えていけないケースでは、遺骨を身近に置くことで心の癒しの助け(グリーフケア)となる
・墓地が遠方にあり、高齢や健康上の理由で納骨や墓参りに赴くのが困難な場合に自宅で供養ができる
・費用面では、納骨や墓参りの交通費がかからないため自宅で供養する方法がもっとも負担が少ない
・経済的理由でお墓の建立が困難な場合でも、自宅で供養が可能である
・宗教観や社会通念にとらわれない、自由な形式で供養を行うことができる

▼自宅供養のデメリット

・まだ新しい供養方法であるため、従来の供養をするべきとする家族など周囲の理解を得られず、反対される場合がある
・「お墓に納めないと成仏できない」「分骨すると成仏できない」などは迷信だが、それを信じている人がまだいる以上、慎重な対応が必要になる
・自宅で遺骨を管理する人が亡くなった場合は、その遺骨も遺品となり、遺された人たちが対応に困ることがある

●自宅供養のために準備できること

葬儀は予定がたてられないもので、突然にやってくるものです。しかし、親御さんが高齢だったり、ご家族のどなたかが余命を宣告された病気にかかっていたりした場合、漠然とでもある程度の心の準備はしていることでしょう。お葬式の準備をすることはとても悲しいことで、できることなら避けてとおりたいものですが、遺された人たちが後悔しないためにも、葬儀やお骨の供養方法について家族や周囲の人と話し合っておくことが必要になります。

ここからは、自宅供養を行ううえで準備できることを考えていきます。

先述した、自宅供養のデメリットに対応していくことが主となりますが、ポイントは以下のとおりです。

①自宅供養を独断で行わないこと
②周囲の理解を得ること
③遺骨や自宅供養品を持っている人が亡くなった場合のことを考えておくこと

①自宅供養を独断で行わないこと

遺骨は、それが誰のものか、つまり所有者を規定する法律はありません。喪主のものなのか、子どものものなのか、または故人の親のものなのか、という規定は実はないのです。そこで遺骨の取り扱いについて、遺された人たちの間で意見が分かれることがあります。「自宅にお骨を置きたい」と希望する人、「お骨はお墓に納めるべき」と考える人の両方がいても不思議ではありません。価値観が異なるのは、家族の間でもよくあることです。遺族間で感情的ないざこざを起こさないためには、やはり「話し合い」が大切ではないでしょうか。不幸があったばかりの段階で、冷静な話し合いは無理かもしれませんが、それでも努力してお互いの言い分を聞き、自分の希望も伝えられることが望ましいのです。
お墓に納骨せずに自宅供養を行うということは、遺族の誰かの家に遺骨を置くことになります。そのお骨の置き場所について、親族間で争うことは避けたいものです。なお、自宅供養をしたい人が複数いた場合、分骨により解決することができます。「お骨の取り合い」のようなことにならないようにしましょう。

②周囲の理解を得ること

自宅供養そのものがまだ新しい供養のスタイルであり、従来のお墓にお骨を納める方法に比べると、選ぶ人が少ないのが現状です。なにごとも、歴史が浅いものや少数派に対しては抵抗感を持つ人がいることを心にとめ、配慮が必要になります。「皆がやっていることだから」「ずっとそうして来たのだから」という理由で、従来どおりお墓への納骨を主張する人がいたとしても、「現代的ではない」とか「古い考えだ」と一蹴することはやめましょう。どうして自宅供養にしたいのか、心情的な理由、物理的な理由を含めて説明をして理解を得られるように努力をすることが大切です。

③遺骨や自宅供養品を持っている人が亡くなった場合のことを考えておくこと

自宅供養は人が行うものですから、いずれその人もこの世を去ることになります。その場合、自宅で供養している遺骨や供養にまつわる品々を誰が継承するかを考えておくと、遺された人たちも困ることがないでしょう。自宅供養を行っている人は、エンディングノートなどにその旨を記載し、供養品をどのように扱ってほしいかの希望を書いておくことをお勧めします。

まとめ

この記事では、比較的新しい供養形態として知られるようになった「自宅供養」(もしくは「手元供養」)について、メリット・デメリットを含めて解説してきました。新しい供養の方法とはいっても、たとえばお子様に先立たれた親御さんがお骨を手放せずに自宅で供養することは、昔からたびたび見られたものです。自宅供養は大きな喪失体験を癒していく過程、グリーフケアに非常に有効な手段で、それが社会的に認知されるようになったのは喜ばしいことです。現在終活を行っている人、これから終活を考えている人は、お骨をお墓に納めないことも選択肢のひとつにできますので、その希望があればエンディングノートなどに記載しておきましょう。

お墓にお骨を納めず、身近においていつでも供養できる「自宅供養」という方法があることを知っていただけましたでしょうか。供養の選択肢として「このような方法もあるのだ」と理解していただけると幸いです。そこで最後に、失敗しない自宅供養のために大切なポイントを3つあげておきます。

●失敗しない自宅供養の極意3ヶ条

1.自宅供養を一人で決めず、家族や周囲の人たちと話し合い、葬儀の専門家である葬儀社や仏具店にも相談してみること
2.自宅供養に関して抵抗を示す人がいることを考慮し、理解が得られるように努力すること
3.自宅供養品を誰が継承するか、次世代のことも想定しておくこと

頭の片隅に入れておいてください。