LGBTの高齢者はどうやって生きていく?

LGBTとは?

LGBTの高齢者はどうやって生きていく?
LGBTとは性的少数者の総称です。
女性が女性を愛するレズビアン、男性が男性を愛するゲイ、男性と女性の両方に愛情を持つバイセクシュアル、体と心の性別が一致していないトランスジェンダー。
これら4つの頭文字を総称して、LGBTと呼びます。

日本での現状

民間会社の統計調査によれば日本のLGBTの割合は、「おおむね総人口の10%前後で推移している」という統計結果が出ています。
日本の総人口が1億2500万人だと仮定すると、LGBTは国内に1250万人も存在することになります。
しかし、日本ではLGBTの社会的認知が進んでいないため、周囲の偏見を恐れ、自分がLGBTであることを隠しながら生きている人が数多くいます。

日本の法律上の扱い

日本では長らく、戸籍上の性別変更ができませんでした。
しかし、2003年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が制定され、LGBTは戸籍上の性別変更を家庭裁判所に請求することが可能になります。
一方で、この法律では婚姻をしていないことや、生殖不能手術をして性器を除去することなど、非人道的な条件が請求要件になっています。
また、同性同士の結婚に対して法的な認可を与える国々が増えつつありますが、日本では未だに法整備が進んでいません。

LGBTの高齢者が抱える課題

LGBTの高齢者はどうやって生きていく?
これまでの日本社会は、LGBTのような人たちを想定していなかったので、それらに対応した制度や法律の制定の進捗は芳しくありません。
そのため、LGBTの人たちは以下のような課題を抱えています。

LGBTへの偏見・差別

LGBTはエイズ(HIV:ヒト免疫不全ウイルス)に掛かりやすいという偏見や差別が日本では根強く残り、そのため多くのLGBTは自分の性的嗜好を隠して就職するケースが多いです。
その他にも、LGBTのカップルは賃貸物件の入居審査が通りにくい傾向にあります。
なんとか入居できたとしても、周囲の偏見や差別に怯え、近所付き合いを極力控えながら暮らす人は珍しくありません。
また、女性あるいは男性に性転換手術をしたトランスジェンダーが市役所や病院の窓口に行くと、外見と性別が合致しないことから、差別的な対応をされることがあります。
同じように職場や学校でも、LGBTの話し方や外見をからかったりする差別的行為が後を立ちません。
民間団体の統計ではLGBTの約7割が、子供の頃に学校でいじめや暴力を受けたことがあると答えています。

LGBTに対応した高齢者施設の不足

現在の日本では「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に元付き、介護や医療サービスが充実した高齢者向け賃貸住宅、通称「サ高住」の建設が全国で進んでいます。
しかし、サ高住には60歳以上の単身高齢者、または高齢の夫婦という条件があるので、LGBTのカップルは同居できません。
現行法でサ高住に入居する場合は1人ずつ別々の物件に住むしかなく、余分な出費を強いられることになります。
仮に別々で入居できたとしても、日本では高齢者ほどLGBTに対する偏見や差別意識が強く、当人たちへの嫌がらせや、ハラスメント行為が発生する可能性も高くなります。

家族主義による締め出し

日本は古くから夫婦とその家族というかたまりを基準にして、個人を判断する風潮が強いです。
政治や行政も男性の家長を中心とした家族世帯を対象に、年金や医療介護の行政サービスを整備してきました。
その関係上、LGBTのような例外への対応は考慮されておらず、色々な問題が生まれています。

金銭的なリスク

LGBTのカップルは正式に結婚できないため、生命保険へ加入する際、同居している同性パートナーを保険金の受取人に指定することができません。
また、生命保険や医療費の税控除、所得税の配偶者控除、厚生年金の加給年金なども一切受け取れません。

相続上の問題

高齢のLGBTは相続の面でも大きな不利益を被ります。
例えば、内縁の同性夫婦が夫名義の分譲マンションで同居し、もし夫が病気などで亡くなった場合、同居している妻は夫と正式な婚姻関係がありません。
そのため妻に法定相続人の権利が無く、夫の預貯金や住んでいた分譲マンションの相続権が、夫の前妻の子供または夫の親兄弟に移ってしまいます。
これは共同所有している土地や有価証券、自動車などでも同様の問題が発生します。

このように日本の行き過ぎた家族主義の弊害で、特に高齢のLGBTには特殊な金銭的リスクと、相続上の問題が数多くつきまといます。

LGBTの高齢者が今からできる対策

LGBTの高齢者はどうやって生きていく?
LGBTの人々を受け入れるための制度や法律の制定には時間がかかりますが、現行の制度やコミュニティの存在を上手く活用すれば、問題に対処することもできます。
具体的には以下のような制度の活用が推奨されています。

LGBTコミュニティへの参加

LGBTの人々は社会から疎外されがちですが、LGBTが集まるコミュニティに参加すれば、仲間を見つけて孤独を解消することができます。
コミュニティを主催する人々の多くは、自らがLGBTでありながら市民ボランティアとして、色々な悩みや困りごとのアドバイスを引き受けています。
また、東京や大阪など都市圏ではオープンスペースを無料開放し、定期的な交流イベントを開いている規模の大きい法人団体もあります。
参加する場合はコミュニティの活動内容や方針をしっかりと調べて、自分に合った団体を選びましょう。

パートナーシップ制度

現在、全国で100を超える自治体がLGBTに配慮した「同性パートナーシップ」という新しい取り組みを開始しています。
法的な拘束力はありませんが、これらの精度を採用している自治体に居住すれば、同性婚を認める旨を記したパートナーシップ証明書が発行されます。
これがあれば自治体が管理する公営住宅へカップルで入居できたり、入院先の病院で同性パートナーが他人ではなく、家族として扱われるようになります。
また、この証明書は同性パートナーでも受取人になれる生命保険へ加入する時の、必要書類になる場合もあります。
ただし、自治体ごとに形式や証明方法が異なっているので、利用する際は事前に詳細を調べることをおすすめします。

成年後見制度

高齢になれば誰でも認知能力が落ちてきます。
特に高齢のLGBTは頼れる身内や友人が少なく、カップルで暮らしていて片方が認知症になった場合は、日常生活に大きな支障が出てきます。
そのような際に役立つのが成年後見人制度です。
後見人には法定後見と任意後見の2種類があり、法定後見は片方の同性パートナーの認知機能に問題が発生した場合、もう片方が家庭裁判所に申し立てて、後見人を付けて貰う公的な制度です。
申立後は本人の状況に応じて定期的な介護や医療サービス、住居の確保が可能になります。
ただし同性カップルの場合、法律上は他人という扱いなので、お互いが法定後見の申立人になれません。
一方で、任意後見は自分の判断能力が衰えたと感じた時に、後見人になって欲しい人と公正証書を取り交わして業務契約し、報酬を決めて後見人になって貰う私的な制度です。
同性カップルの場合は両方がお互いの任意後見人になることで、法定後見をスムーズに行えるようなり、住居の確保や財産の保全、さまざまな行政サービスが受けやすくなります。