生前葬ってどういうもの?

~生前葬の具体的な内容や費用、マナーなどについて解説~

従来のスタイルに捉われず、個性的な葬儀を行いたい方は「生前葬」を検討してみるのもよいでしょう。
生前葬は財界人や芸能人が行うこともあるため認知度は高くなっていますが、詳しい中身はそれほど知られていないようです。今回のコラムでは生前葬の具体的な内容や大まかな費用、参列する際のマナーなどについて解説します。

生前葬とはどのような葬儀?

生前葬とは生きているうちに自分の葬儀を行うことであり、喪主も本人が務めます。誰かが自分のために行ってくれるものではなく、自分が主催する自分の葬儀ということになります。実際の生前葬は「お別れの会」や「感謝の会」などの名称で行われ、本人がまだ存命であることから明るく賑やかな式が多いようです。

●意外と長い生前葬の歴史

生前葬が行われた記録としてもっとも古いものは江戸時代であり、肥前国平戸藩の第九代藩主であった松浦清(一般には松浦静山)が記した「甲子夜話」という随筆集に記録されています。
甲子夜話によれば、肥後国の家老が「命のあるうちに葬礼をしてほしい」と城下に住む住職へ願い出たとされており、当時の形式で葬儀が行われた後、埋葬の直前で棺から出たと記されています。

●生前葬は感謝の気持ちを伝える場

死後に執り行う葬儀は弔いの場ですが、生前葬は本人から参列者へ感謝の気持ちを伝える場となっています。身内や知人などお世話になっている方へ、生きているうちに直接お礼をすることが目的であり、日頃会えない方を招待することも多くなっています。

人生の節目に生前葬を行うことも

還暦や古希、喜寿などの年齢的な節目や、仕事からの引退時などに生前葬を行う方も多く、重い病気にかかったこと、または完治したことをきっかけに生前葬を行うケースもあります。

生前葬の主流はパーティ形式

生前葬には決まったスタイルがないため、一般的な葬儀と同様の形式で執り行われる場合もあります。しかし殆どの生前葬はパーティ形式であり、招待者と一緒に食事やお酒を楽しみながら、ビンゴゲームなどの余興を行う方もおられます。会場にはホテルを使うケースが多く、少し披露宴と似たような雰囲気もあります。死亡後の葬儀は家族任せになることが殆どですが、生前葬は自分が主催するため、「こうしたい」という思いを叶えることができます。

生前葬にかかる費用

生前葬の費用は内容や規模によって変わるため明確な相場はなく、30万円程度で行えるものから100万円以上など様々です。生前葬の費用内訳には以下のようなものがあるので、予算に応じてグレードなどを調整することになります。

①生前葬を行う開場

生前葬はパーティ・宴会施設やホテルで行われることが多く、施設の格付けや場所によって費用は大きく変動します。招待する方が遠方の場合、交通費や宿泊費の一部または全部を負担する場合もあります。

②会場の飾りつけや付帯設備

生花などで飾りつけをする場合、会場費とは別に花屋やレンタル業者への支払いがあり、動画やスライドの上映にプロジェクターやスクリーン、マイクなどの付帯設備を使用する場合、オプションとして別料金になっていることもあります。

③招待者の人数

生前葬の費用に大きく影響するのが招待者の人数です。会場の広さも招待人数に合わせますし、食事や飲み物、交通費や宿泊費のほか、記念品の量(個数)も人数次第で変わります。

④専門業者等の利用

動画上映用にプロのフォトグラファーやビデオグラファーへ撮影を依頼することもあり、中にはフォトアルバムの作成を依頼する方もいます。プロの司会者や葬儀のプロデュース業者を利用する例もありますが、費用も高額となってしまうため、予算を提示しながら相見積もりしておくとよいでしょう。

生前葬はどのような流れで行われる?

パーティ形式の生前葬は以下のような流れ(式次第)で行われることが多くなっています。
①喪主(主催者)の挨拶
②招待者のスピーチ等
③乾杯後、食事と歓談
④花束などの贈呈
⑤自分史ムービーの上映
⑥ビンゴゲームなどの余興、カラオケ等
⑦閉会挨拶、招待者のお見送り
余興では喪主にちなんだクイズなどもよく行われ、招待者を見送る際には会葬品に代わるプレゼントを渡すことが多くなっています。

生前葬へ参列する際の服装

生前葬では平服が一般的であり、喪服で参列することはまずありません。生前葬そのものが少ないため参列者が服装に困ることのないよう、招待状には服装について案内されていることが多いようです。男性の場合はスーツスタイル、女性はセレモニースーツやアンサンブルなどにしておくと無難でしょう。ただしデザインやカラーが華美になり過ぎないよう注意してください。髪型や色、アクセサリーなども派手にならないよう気を付けてください。一般的なビジネスシーンで通用する服装と思っておけば、ミスマッチになることはありません。

生前葬のメリット

一般的な葬儀とは様子も異なりますが、生前葬ならではのメリットもあります。

①感謝の言葉を直接伝えることができる

お世話になった方へ直接お礼の言葉を述べることができ、家族など近しい人にも生前葬をきっかけに本音を伝えることができます。生きているからこそできる最大のメリットといえるでしょう。

②明るく賑やかな葬儀にできる

厳粛な形式の生前葬であっても、本人が生きているため終始明るい雰囲気で葬儀を行うことができます。生前葬の時点では火葬や初七日法要などを考えなくてもよいため、遺族の心的負担も軽くなります。

③葬儀内容を自分でアレンジできる

生前葬は従来の型にとらわれる必要がなく、予算の範囲内で会場の飾りつけや式次第を自由に決めることができます。

④計画的に行うことができる

一般的な葬儀は限られた時間の中で葬儀や火葬、お寺などの手配を行うため、かなり慌ただしいものとなります。しかし生前葬は、あらかじめ日程等を調整し計画的に行うことができます。

生前葬のデメリット

①葬儀費用が高額になることもある

生前葬を行ったことから死亡後の葬儀は不要と家族に伝えていても、本人への気遣いや世間体などから従来の葬儀が行われてしまい、費用が倍近くになるケースもあります。

②葬儀内容が決まりにくい

生前葬は自由度が高いだけに、却って内容が決まりにくいというデメリットもあります。日時、場所、招待者、具体的な内容や料理など、考えておくことは沢山ありますが、予算との兼ね合いもあるため1人で決めていくのはかなり難しいようです。

③意図を理解してもらいにくい

生前葬は従来の葬儀ほど一般社会に定着したものではないため、意図や目的を理解してもらいにくい面もあります。招待者の中には「不謹慎」「縁起が悪い」と考える人もいますし、家族でさえ難色を示すこともあります。

④参列者には特別な配慮も必要

参列者(招待者)の全てが生前葬に理解がある訳ではないので、一般的な葬儀以上に細やかな配慮が必要となります。死亡後であれば葬儀業者や僧侶など、いわゆるプロフェッショナルがいるため進行もスムースですが、生前葬では自分が取り仕切らなければなりません。来てよかったと思っていただけるよう、綿密な計画を練っておくことが必要となります。

生前葬に香典は必要なの?

香典の要・不要は生前葬のスタイルによって変わります。案内状に香典不要とある場合や、会費制の生前葬では香典を用意する必要はありません。香典について特に案内がなく、会費制でもない場合は1万円~2万円程度を包んでおくとよいでしょう。還暦や古希、病気や怪我からの復帰など、お祝いの要素が強い生前葬では香典に祝儀袋を使うこともあるようですが、迷うようであれば白無地の封筒などに包んでください。表書きも御香典や御霊前ではなく、御礼や御花料にしておけば違和感もありません。

生前葬を行えば死後の葬儀は不要?

生前葬を行った場合、死後の葬儀を不要とし、火葬のみ(直葬)を希望する方が多いようです。故人の遺志に従えばよいのですが、死後は遺族の希望も尊重されるため、従来どおりの葬儀が行われることもあるようです。また生前葬を行っているため、死後の葬儀は家族葬など小規模にする傾向があります。

●生前葬にも参列していた場合、香典はどうしたらよいか

生前葬に参列し香典を渡していた場合でも、故人や遺族に対するマナーとして香典は用意しておくべきです。金額は一般的な葬儀と同様に友人や知人は5千円から1万円程度、親族など近しい人であれば3万円程度になり、故人との関わりや社会的な地位によっては10万円程度になります。

●菩提寺との関係について

生前葬は宗教色のないものが殆どですが、菩提寺がある場合は通夜~葬儀・告別式を執り行うことになり、戒名を授かることにもなります。特に菩提寺にお墓がある場合、宗教者を交えず簡素に葬儀を行ってしまうと、納骨に難色を示されることもあるようです。今後の供養にも影響するため、葬儀方法は遺族や親族間でしっかり話し合っておくべきです。

主催者が気を付けておくべきこと

生前葬は死亡後のことも視野に入れて検討するべきであり、本人は「生前葬が終わったから一安心」と思っていても、家族は死亡後の葬儀を予定しているかもしれません。また参列者の時間や労力、香典も倍になってしまうため、案内状やしおり、または生前葬の場で、死後の葬儀について案内(行う、行わない等)をしておいた方がよいかもしれません。

まとめ

生前葬は馴染みの薄い葬儀スタイルであり、本人が希望しても周囲に理解してもらえない場合があります。また自由度が高いために内容が決まらず、遅々とした準備になることもあるようです。しかし生前葬でなければ実現できないこともあるため、迷った場合は葬祭業者への相談をおすすめします。予算に応じたプランを考えてもらえますし、家族への理解を得る方法などもアドバイスしてくれます。
自分が納得できる生前葬にするには、まずは周囲の理解が大切だということを忘れないようにしてください。