親が突然の入院!そんな時家族はどうしたら?

~家族が困らないためにもエンディングノートで自分の意思を伝える方法~

はじめに

親としては介護や医療費などで子供たちに迷惑をかけたくないものですよね。
しかし、突然倒れたり、大きな病にかかったりすると、どうしても子供たちに迷惑をかけることになってしまいます。パートナーにも先立たれた状態なら尚更です。
万が一、倒れて意識が戻らず延命治療だけを続けた場合、莫大な費用がかかります。その負担を全て子供が背負う可能性もあります。
親として、それだけは避けたいものです。
そこでお薦めしたいのが「エンディングノート」です。エンディングノートを活用すれば、もしもの時に子供たちにかける負担を最小限にとどめることが出来ます。
本記事では、終末期医療を迎えた父親に、家族がどのように対処できるかについて考えてみます。そしてその時、エンディングノートがどのように役立つかを解説していきます。

エンディングノートとは

家族や友人などに、自分の最期の意志や伝えたいことを書くノートのことです。
エンディングノートには、自分が最期をどう迎えたいのか、親族や家系のこと、お金のこと、家のこと、お墓やお寺のことなどを書くことが出来ます。
備忘録として暗証番号やパスワードを書いておいたり、大事なものをしまってある場所を記録したりもできます。遺言書とは違って法的拘束力はありませんが、遺言書よりも身近で、幅広く使うことが出来ます。

なぜエンディングノートが必要なのか

高齢になるにつれて、急な病で倒れたり、認知症になったりする確率は上がります。もし、突然倒れて意識が戻らなかったら、何も自分の意思を伝えることができなくなります。それを未然に防ぐために、エンディングノートが必要になります。
厚生労働省も、自分の終末期にあたって、元気なうちに家族や友人などに自分の意志を伝えておくことが大切であると提唱しています。
◆人生の最終段階における医療・ケアの 決定プロセスに関するガイドライン(厚生労働省のガイドラインより引用)
人生の最終段階における医療・ケアの方針決定は次によるものとする。
(1)本人の意思の確認ができる場合
① 方針の決定は、本人の状態に応じた専門的な医学的検討を経て、医師等の医 療従事者から適切な情報の提供と説明がなされることが必要である。 そのうえで、本人と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合い を踏まえた本人による意思決定を基本とし、多専門職種から構成される医療・ ケアチームとして方針の決定を行う。
② 時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて本人の意思が 変化しうるものであることから、医療・ケアチームにより、適切な情報の提供 と説明がなされ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えることができるよう な支援が行われることが必要である。この際、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等も含めて話し合いが繰り返し行われることも必要である。
③ このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくも のとする。
このガイドラインは、人生の最期の時を本人の意思を大事にしようという考えで作られたものです。ですから、元気なうちから、「こう生きたい」「最後はこうしてほしい」ということを考えておきましょう。
また、終末期の処置について、子供の方からは聞きづらいものです。できれば親の方から元気なうちに自分の終末期の話を切り出したほうが良いのですが、「なかなかそういう話はできない」という方も多いでしょう。そんなときにも、エンディングノートが役に立ちます。終末期にどうしてほしいかが書かれていれば、ご家族もいざというときに冷静に行動することができます。ご家族を困らせないようにするためにも、今からエンディングノートを準備しておきましょう。

エンディングノートを終末期に活用する方法

エンディングノートを終末期に活用するために、記入するべき項目をご紹介します。家族で話し合って決めることが望ましいですが、話し合いが難しい場合は、ご自身の意思を記入しておきましょう。

エンディングノートに書くことは、

◆延命処置の有無について
いざというときに、延命処置をするかどうかを決めておきましょう。
延命処置の有無が決まっていなければ、ご家族や代理人が判断をしなければなりません。
どの程度まで延命処置をするのか等を事前に決めておけば、ご家族も迷わず行動することができます。
◆長期療養が必要な場合の施設選びについて
近隣の施設や療養型病院の情報を集めておきましょう。自分たち家族にはどういう条件を満たすことが必要なのかを考えておきましょう。
◆転院が必要な場合の手続きについて
子供たちが遠くに住んでいる場合など、近くの親族や頼れる友人などピックアップしておくといいでしょう。
◆意識障害がある場合の胃瘻造設の有無について
自分の意志として、「胃瘻造設」を望むか望まないかを書いておくとご家族が迷わなくて済みます。
◆預金通帳や保険証等に関する情報について

高額医療制度など手続きに必要なものです。保管場所は決めておきましょう。

エンディングノートの活用事例

親が突然倒れると、家族は冷静な判断ができないものです。エンディングノートは、そんなときにとても役立ちます。ここからは、実際の活用事例をご紹介します。

Sさんの場合

Sさんご夫婦は、定年後も再就職し、少しずつ働きながらも元気に過ごしておられました。子供たちもそれぞれ独立し、離れたところで生活しています。
70歳になったころ、Sさんは会社で行われた終活セミナーで、エンディングノートを薦められました。教えてもらったように書き、家では奥さんにも教えながら二人でエンディングノートをかいていました。
しばらくして、Sさんが突然脳出血で倒れました。駆けつけた長男は、なぜこんなことになったのかと青ざめ、何が何でも父親を助けたい、できる限りのことをしようと言いましたが、母親にSさんの書いたエンディングノートを見せられて冷静になりました。エンディングノートにはこう書かれていました。

 「もしも、私が、急に倒れても、延命処置はしないでほしい。延命だけであれば人工呼吸器は付けてほしくない。誰が間に合わなくても気にするな。多分そういうことにはならないと思うが、そうなったら、それが運命だと思って、あきらめてほしい。」
「もしも、自力で何もできなくなったら、胃瘻造設などはせず、静かに見守って欲しい。」
「リハビリが必要になったら、しっかりリハビリさせてほしい。自立できるように厳しくしてくれよ。弱音は吐きたくないが、きっと弱音を吐くと思うから。」
「認知症になったら、まだ元気なうちでいいので施設に入れてほしい。自分では大丈夫だと思うはずだから、母さんが大変だなと思ったら、さっさと手続きをして施設に入れてください。」

などと、細かく記載されていたそうです。
Sさんは、脳出血の範囲が広く人工呼吸器は付けていましたが、数日後に息を引き取られました。家族全員が見守る中で亡くなりました。
エンディングノートには、葬儀のことや、Sさんの資産のことなども書いてありました。
「母さんが、ちゃんと生活できるように考えて、兄弟姉妹で考えて、相続は私の言うとおりにしてほしい」と、書かれていたことで、家族が話し合って父親の意志を大切にしようという方向でまとまったのです。その後母親のエンディングノートも読み、これからのことを話し合うことも出来ました。
Sさんがエンディングノートを書いていたことで、子供たちにも冷静な判断が出来ました。急な時にこそ、意思を伝える手段として役に立ったケースです。

エンディングノートを書いていなかった場合はどうなるのか

ここからは、エンディングノートを書いていなかった場合の事例をご紹介します。

Kさんの場合

Kさんは、夫を亡くして地方の田舎町で一人暮らしの74才です。数年前までパートで働いていました。今は引退し、近くに住む妹家族や友人たちと穏やかに暮らしています。ところがある時、Kさんは脳出血で倒れ、緊急入院することになりました。子供たちも駆けつけましたが、Kさんは集中治療室で治療されていて意識はありません。
 医師との話で、「Kさんは、家に帰ることはできないでしょう。」と言われました。意識が戻らず、話すことも歩くこともできないということでした。「しばらくは、ここで治療しますが、その後は長期療養型の病院に移ってもらいます。」と言われました。そして、いくつかの病院を薦められましたが、どこにしていいのかわからず、叔母など地元の親族に聞きながら転院先をきめました。
転院までの数週間の間に、医師の方からKさんの経管栄養が必要だと言われました。Kさんは意識がないため自力でご飯を食べることが出来ません。鼻のチューブから胃に流動食を流し込むのです。それも、長期になるため、お腹から胃にチューブを差し込む「胃婁」を作ることを薦められました。ですが、その時には子供たちで意見が分かれました。
長男は、胃瘻造設に難色を示しました。そこまでしなくてもいいだろう、という意見です。次男はやりたいと言います。長女は悩みます。いつまでも鼻にチューブが入っているのは可哀そうだという思いからです。
叔母であるKさんの妹が、「やって欲しい」と言ったことで、胃婁をすることになり、胃婁造設後に長期療養型の病院へ転院しました。
高額療養費制度のこともわからず、通帳や印鑑がなかなか見つからなかったために、手続きに手間がかかりました。キャッシュカードやクレジットカードは財布の中にありましたが、暗証番号がわからず、当面必要なお金は長男が工面することになりました。

まとめ

本記事では、親が突然入院した時に、エンディングノートがあるといかに家族が助かるかということについてお伝えしました。これは体験者の聞き取り調査で、よく皆さんからお聞きすることでもあります。
エンディングノートを活用すれば、もしもの時でもご家族に自分の意思を伝えることが可能です。ご自身のためにもご家族のためにも、元気なうちから準備しておくことが大切です。
また、本記事だけではどのように書けば良いのかわからない方、もっと詳しくエンディングノートの書き方を知りたい方は、より詳しい内容を以下の記事でご紹介しています。興味のある方は、ぜひこちらもご覧ください。
https://shukatu-life.com/column?id=375