映画「おくりびと」で有名になった「納棺師」 いったいどんな仕事?

~その裏側に隠された知られざる苦労とは~

2008年の映画「おくりびと」で一躍有名になった「納棺師」という職業ですが、その裏側について詳しく知っている人はあまり多くはないのではないでしょうか。

そこで今回は納棺師という職業について詳しくご紹介していきます。

納棺師とは?

映画「おくりびと」で有名になった「納棺師」 いったいどんな仕事?

納棺師とは亡くなった方の遺体を整理し棺桶に納める作業を専門とする職業で、その仕事内容は大きく分けて2つあります。

①遺体の腐敗の防止

遺体は通常亡くなってから2~3日後に腐敗が始まります。それを防ぐために、防腐剤やドライアイスを遺体の内部へ詰める事が納棺師の大きな仕事の一つです。

②遺体の化粧

死後硬直によって硬直した顔を柔らかい表情にしたり、遺体に着物や化粧を施す事によって遺族や参列者が安心して死者を見送れるようにする事も納棺師の仕事です。

納棺師のやりがい

納棺師には以下のようなやりがいがあります。

①遺族からの感謝

納棺師は死者に最後の手入れを施す職業なので、遺族とも深く関わる事が多いです。その中で着付けや化粧を通し丁寧に死者に接する事によって、多かれ少なかれ遺族の心は癒されます。

そういった一つ一つの所作の積み重ねによって遺族から大きな感謝を受け取る事が出来るのは、納棺師だけのやりがいです。

②生や死への理解

納棺師は仕事の中で色々な事情や背景を持った死者や遺族に寄り添う必要があるので、「死とは何なのか」「生きる意味はどこにあるのか」といった生や死に関する疑問に向き合い続けなければなりません。

その過程の中で生や死に対して理解を深める事が出来るのも納棺師のやりがいだと言えます。

③専門技術の習得

納棺師には特別な資格は必要ありませんが、湯灌や化粧は専門的な作業なので誰でも出来る訳ではありません。また納棺師という職業自体は人がいる限り無くならない職業なので、一度就職して経験や技能を積み重ねれば他社へ転職したりフリーランスとして独立したりと幅広い選択肢を持つ事も可能です。

納棺師の大変な点

納棺師は大きなやりがいを感じる事が出来る一方で、実際には大変な点もあります。

①厳しい肉体労働

納棺師は一日に平均して4件、多い日は7件前後の納棺作業を行わなければいけません。つまり1件あたりに割く事が出来る時間は多くても90分程度しかなく、その中で入浴から腐敗の防止、着付けや化粧といった一連の作業を済ます必要があります。

もちろん基本的にはどの作業もチームで行いますが、多くても2~3人なので1人あたりの負担はどうしても大きくなってしまいます。

また遺体は軽くても40kg以上はあるので、それだけ重たいものを短い時間の中で入浴させたり着付けをしたりするのは非常に大変です。

②死者や遺族との関わり方

死因が年齢による衰弱死である場合は遺族も満足してあまり悲しむ事なく納棺が進む事が多いですが、自殺や事故などによって人生半ばで亡くなられた場合は遺族の悲しみも深く重たい空気の中で納棺の作業を行わなければいけません。

そのような状況でも納棺師は絶対に涙を流してはいけないので、自分の心を強く律しながら出来るだけ遺族の心を落ち着かせる必要があります。

③遺体の状態

死因によっては遺体の損傷が激しく、元の顔が判別出来ない場合もあります。しかしそのような状態でも死者と向き合い出来る限りの対処を行う事が納棺師には求められます。

湯灌師との違いとは?

遺体に化粧などを施す前には遺体を入浴させて洗浄する事が一般的です。これは遺体を清潔な状態にするという意味だけでなく、現世の煩悩や苦しみを洗い流し、故人が悔いなく旅立てるようにするという意味もあります。

この遺体の入浴や洗浄を専門とする職業を湯灌師と言います。とはいえ納棺師と湯灌師に明確な区別はなく、納棺師が入浴作業を担当する事もありますし、湯灌師が納棺までを行う事もあります。

特に湯灌は大きな湯舟や専用の排水装置などが必要になるので、近年ではシャワーや掛け流しを利用して簡易的に行う場合も増えてきており、湯灌のみを専門とした湯灌師も減りつつあります。

納棺師になるためには?

映画「おくりびと」で有名になった「納棺師」 いったいどんな仕事?

現在、納棺師になるために取得しなければいけない資格は存在しません。また学歴による縛りもないので、基本的には葬儀会社などに就職して実際の業務の中で技術やノウハウを身に付ける事になります。

近年になって納棺師の育成を目的とした専門学校も登場しており、半年の学習期間と120万円前後の費用を支払えば誰でも通えるようになっています。直接葬儀会社に就職する場合と違い、学校で専門的な技能を身に付けた上で学校側から就職先を斡旋してもらえるため確実に納棺師になりたい人にとっては良い選択肢と言えます。

一方で納棺師は葬儀に関連する法律やビジネスマナー、宗教・宗派ごとの対応の仕方など学習しなければいけない事が非常に多岐にわたる上、基本的には2~3人のチームで動く場合が殆どなので、他人との協調性がないと厳しいでしょう。

また業務の過程で腐敗や損傷の激しい遺体と接する機会も多いですし、就職先によっては安月給で長時間労働をよぎなくされる場合もあるので、離職率は高めとなっています。

納棺師の給料は?

納棺師の平均的な給料は月25万円程度、年収に換算すると約300~400万円になります。

2018年の国税庁の調査によると日本人全体の平均月収は約36万円、平均年収は約440万円とされているので平均よりは下回る結果となっています。

一般に納棺師の多くは葬儀会社に雇われていますが、納棺の作業について特別な手当てが出るという事は少なく突発的な残業による残業手当が付く程度です。

もちろん大手の葬儀会社に属すれば平均年収は500~600万円程になりますし、管理職になれば1,000万円の大台も目指す事は出来ますが、納棺師として現場に携わる機会は減っていくでしょう。

また新卒として納棺師になった場合の初任給は約15万円が相場です。就職してから数年は研修や先輩の指導による勉強期間となるので、相対的に給料も安くなりがちです。

ただ納棺師として平均以上の給与を目指したい場合はフリーランスという選択もあります。なぜならフリーランスの場合は葬儀会社のような仲介を挟まないため報酬がそのまま自分の懐に入ってきます。もちろんその分、営業や事務作業なども自分で行わないといけないですし、安定的な雇用は見込めませんが、納棺師としてある程度経験を積んだ後にフリーランスとして独立するという事は一つの選択肢として考えておくと良いでしょう。

納棺師の将来性

少子高齢化によって葬儀の需要は高まる一方なので、納棺師の仕事も当分は増え続けると予想されています。

とはいえ近年の日本では費用や手間の関係で大規模な葬儀から、家族葬のような身内や親しい人達だけで行う小規模な葬儀へとトレンドが移行しつつあります。それに伴い納棺師が行っていた入浴や化粧といった作業を看護師や身内の人間が代行する事も多くなっています。

つまり葬儀のあり方が変わりつつある今、納棺師もその変化に対応し新しい仕事や価値を生み出していかないといけないでしょう。

まとめ

納棺師は死と向き合い、死者に最後の手入れを施す大切な職業です。

遺族からの感謝のように大きなやりがいを感じる事が出来る一方で、その裏には厳しい肉体労働や死と接する事による精神的負担のような大変な事もたくさんあります。

しかし死者に寄り添い遺族の心を癒す納棺師という職業はこれからも必要とされ続けるでしょう。