老後の生活資金 自宅に住みながら資金調達!「リバースモーゲージ篇」

~「リバースモーゲージ」を利用した積極的な活用法を考える~

老後の大敵は「孤独」、そして「貧困」といわれます。
孤独については各種サークルに積極参加するなど、気持ち一つで何とかなりますが、「貧困」だけは自分で対策を練らなければなりません。
今回のコラムでは老後の生活資金に不自由しないよう、資金調達の方法を紹介します。

老後資金はいくら必要なのか?

2019年の金融庁試算では、平均寿命が延びている現在、95歳まで生きるには2,000万円の資金が不足するとしています。男性65歳以上、女性60歳以上の夫婦では年金に頼る生活だと毎月5万円程度の赤字となり、20年で1,300万円、30年で2千万円が不足するという試算です。
月々に必要な老後資金ですが、60歳以上の世帯で約30万円、70歳以上の世帯では約25万円であり、60歳から95歳まで生きるとすれば1億1千万円以上の資金が必要となってきます。
※総務省統計局「家計調査」(令和元年)より推計

金融庁や総務省の資料はあくまでも一般的・平均的な収入や支出から算出したものなので、世帯によっては更に高額な資金が必要となる場合もあります。
老後30年間に必要な生活資金をどのように準備するか、預貯金や年金だけで足りるのか、十分な検討が必要ということです。

老後の生活資金~ライフイベントを考慮しておくべき

老後に必要な生活資金については、政府や保険業界など様々な機関により試算されていますが、ライフイベントは盛り込まれていないようです。月々に必要な資金は把握できますが、突発的に発生する支出も考慮しておくべきでしょう。
人によっては60歳以降も住宅ローンを支払うことがあり、自宅の大規模修繕やリフォーム資金が必要となる場合もあります。親の介護や医療費負担もあるでしょうし、ご自身の介護や医療費も確保しておかなければなりません。
葬儀への参列が増えてくるのも60歳以降であり、香典の相場も年齢とともに高額になってきます。その他の緊急用資金やレジャー資金なども考えると、毎月5万円の不足は現実味のある数字といえます。

リバースモーゲージとはどんなもの?

リバースモーゲージとは、自宅を担保として金融機関から融資を受けるローン商品です。
自宅に住み続けながら融資を受けることができ、死亡時には担保となっている自宅を処分(売却等)して借入金を返済する仕組みとなっています。
シニア層向けのローン商品として注目されていますが、どのような特徴があるのか、一般的な住宅ローンとどこが違うのか、具体的にみていきましょう。

リバースモーゲージの仕組みと特徴

リバースモーゲージの仕組みを図に表すと以下のようになります。
老後の生活資金 自宅に住みながら資金調達!「リバースモーゲージ篇」
借入人は自宅を担保として銀行から融資を受け、老後資金に充てることになります。死亡時には配偶者が契約を引き継ぐことができ、配偶者も死亡した場合は相続人が自宅を売却するなどして銀行へ返済する仕組みとなっています。
自宅を担保とする点では住宅ローンと似ていますが、リバースモーゲージの場合、融資や返済方法が住宅ローンと異なります。

●融資は一括または毎月、月々の返済は利息分のみ

住宅ローンでは一括で受け取った融資額を毎月返済していきますが、リバースモーゲージは融資の枠内(極度額内)で一括または定期的(毎月)お金を借り入れ、月々の返済は利息のみとなっています。
住宅ローンとは逆に、借入元本を死亡時に一括返済することから、「リバース(逆)」「モーゲージ(抵当または抵当権)」の名称になっています。
元本部分については、契約者の死亡後または契約終了時に担保となっている自宅を売却するか、自己資金で返済することになります。

●どんな金融機関で取り扱っている?

リバースモーゲージはメガバンクや地方銀行、信用金庫や社会福祉協議会で取り扱っています。
一口にリバースモーゲージといっても各金融機関によって内容は様々であり、資金の用途によっても融資の可否判断が異なります。
銀行系の場合、資金用途の制限はあまり無く(事業用や投資目的は不可)、介護施設への入居資金や介護用のリフォームといった使い方もできますが、一定額以上の収入があることを融資条件としています。
一方、運営が国となる社会福祉協議会のリバースモーゲージは、低所得の高齢世帯を支援することが目的のため、銀行とは逆に一定額以上の所得がある方は利用出来ません。
また銀行系では、50歳以上であれば契約できるところもありますが、社会福祉協議会では原則65歳以上となっています。金利は銀行系に比べてかなり低く、「年3%または毎年4月1日時点の長期プライムレートのいずれか低い利率」ですが、今のところ1%程度の金利となっています。

また社会福祉協議会のリバースモーゲージでは、マンション(集合住宅)を担保にすることは出来ず、使途も生活資金に限定されているため旅行やレジャーの費用に充てることは出来ません。
低金利で利用できる反面、制限が多いのも国のリバースモーゲージの特徴です。詳しい条件などを知りたい場合は地元の社会福祉協議会へ相談してみるとよいでしょう。

リバースモーゲージではいくら融資してもらえる?

各金融機関で扱うリバースモーゲージの殆どは、担保評価(担保価値)の50%~70%を融資限度額(極度額)としています。ただし、土地と家があれば誰でも借り入れが出来る訳ではなく、一定の要件を満たしておく必要があります。

●一戸建てを担保とする場合

リバースモーゲージは土地付き一戸建てを担保とする場合が多く、基本的には不動産取引が活発な都市部の物件を対象としています。つまり土地評価額の高い地域が対象であり、山間僻地など評価額の低い地域や立地条件の悪い物件は対象外になることもあります。

●マンションを担保とする場合

マンション(集合住宅)を担保とするリバースモーゲージは少なく、取り扱いがあったとしても駅近の立地や築年数の浅いマンションなど条件は厳しくなっています。マンションの場合は土地と建物(部屋)が分離しており、土地部分の資産価値や不動産活用の自由度が低いことから、リバースモーゲージの対象外とする金融機関が殆どです。
現在、マンションを担保に出来る銀行は、リバースモーゲージを積極的に扱っている東京スター銀行の他、みずほ銀行、群馬銀行の3行のみとなっています。

リバースモーゲージのメリット

老後の生活資金確保に有効なリバースモーゲージですが、何事もメリット・デメリットは表裏一体です。
まずリバースモーゲージのメリットからみていきましょう。
①高年齢でも融資を受けることができる
②自宅に住みながら老後資金を確保できる
③配偶者の住居を確保できる
④毎月の支払いは利息分のみ
⑤手元資金を残しておくことができる
⑥元本の返済方法を選べる
リバースモーゲージは土地や建物の資産価値を利用したローンであるため、65歳以上のシニア層でも融資を受けることが出来ます。契約者(借入人)が死亡した際は配偶者へ契約を引き継げるため、残された配偶者が住居に困ることもありません。
また毎月の支払いは利息分のみであり、元本の返済は死亡時または契約終了時に自宅の売却などで一括返済します。そのため、預貯金などを取り崩すことも少なく、自由に使える手元資金を残しておくことが出来ます。

リバースモーゲージのデメリット

一方、リバースモーゲージのデメリットにはどのようなものがあるでしょうか。
①相続人(推定相続人)の同意が必要
②利用にあたっての制約が多い
③不動産価値の下落と金利上昇リスク
④長寿リスク
リバースモーゲージは自宅を売却することが前提であり、相続人(子など)に土地・建物が残らないため、推定相続人の同意を必要としている金融機関が殆どです。
また基本的には老後の生活資金確保が目的なので、比較的自由度の高い銀行系のリバースモーゲージでも、事業用の資金や投資目的は認められていません。
さらにリバースモーゲージのデメリットとして注意したいのが「不動産価値の下落と金利上昇リスク」及び「長寿リスク」です。
リバースモーゲージの融資額は、契約時における土地・建物の評価額を基準としますが、評価額(担保価値)は一定期間ごとに見直されます。価値が下落すると融資限度額も引き下げられることになり、最悪の場合、融資を止められてしまう可能性もあります。将来自宅を売却する際、不動産価値の下落とともに売却額も少なくなってしまうと、返済の不足分は相続人が負担しなければなりません。
リバースモーゲージには変動金利型が多く、契約期間中に金利が上昇するリスクもあります。金利が上昇すると毎月の返済額が増えてしまい、借入残高も増えることから担保割れとなる可能性もあります。利用の際は数年おきの金利上昇を返済プランに盛り込むなど、ある程度のストレスをかけてもプランが成り立つかどうか、十分に検討する必要があります。
リバースモーゲージには長寿のリスクもあり、生きている間に借入額が限度額に達すると融資はストップし、また契約期間が終了した場合には元利金を一括で返さなければなりません。
それぞれのリスクは複合的に発生するため、土地も自宅も無くなり借金だけが残るケースもあり得るということです。

リバースモーゲージがおすすめな方

リバースモーゲージは以下のような方におすすめのローン商品です。
①預貯金は少ないが自宅の資産価値は高い
②自宅を継いでくれる人がいない
③介護施設等で暮らす予定がある
④住宅ローンの返済が残っている
自由に使える手元資金が少なくても、土地の評価額が高い場合はリバースモーゲージを検討するのもよいでしょう。子供がいない、または子供には既に持ち家があるため継ぎ手がおらず、将来の自宅処分に困っている場合もリバースモーゲージは有効です。
老人ホームなどに入る予定でも存命中は自宅を残しておきたい場合、入居用の資金をリバースモーゲージで準備することも出来ます。
また住宅ローンが負担になっている場合、リバースモーゲージに借り換えると月々の支払いは利息分だけになり、老後の生活資金にも余裕が出てきます。

リバースモーゲージによる老後の資金調達~まとめ

リバースモーゲージを利用する場合、まず家族で話し合ってみることが重要です。
将来的に誰も継ぐ予定がなく、自宅を残しておく理由が無いのであれば利用する価値は十分にあるでしょう。ただし金融機関ごとに条件の違いがあり、借金である以上リスクも伴います。
将来自宅が売れなければ相続人の金銭負担も大きくなるため、金融機関との綿密な協議も必要です。
借り入れから返済まで無理のないプランになるよう、慎重に検討してみてください。