新しくお墓を建てる時、自由に建てていいの?「お墓のデザイン篇」

~お墓のデザインは自由に決めても大丈夫? 宗教・宗派、地域による違いはあるの?~

墓地や霊園に出向くと様々なデザインの墓石を見かけます。
色・形状ともに個性的であり、中にはかなり奇抜なデザインもありますが、お墓のデザインは自由に決めてもよいものでしょうか?
今回のコラムはお墓のデザイン(形や色)について特集し、宗教・宗派や地域性などによる違いを解説します。

多様化するお墓のデザイン

墓石のデザインは年々多様化しており、従来の和型墓石や洋型墓石に加え、デザイン墓石も増えてきました。
既存のデザインから個性重視へと変化しつつあることも理由ですが、墓石となる石材の多様化や加工技術の発達も一因となっているようです。
ただし、宗教・宗派によってある程度の制約はあり、また地域によってスタンダードとなる墓石のデザインも異なります。
まず宗教・宗派別の墓石デザインから解説します。

宗教・宗派ごとの違い

墓石については宗教・宗派ごとに決まりがありますが、墓石のデザイン(形や色)そのものに大きな制約はないようです。しかしお墓の付属品(付帯品)や文字などには決まりがあるため、お墓全体のデザインを考える上では重要な知識となります。

●仏教系のお墓
仏教には多くの宗派があり、宗派や宗旨ごとにお墓のルールも違います。色や形といったデザインは比較的自由ですが、墓石に刻む文字や付属品には決まり事があります。
浄土系の宗派では「南無阿弥陀仏」、密教系の真言宗では「南無大師遍照金剛」といったように棹石(さおいし)に刻む文字が異なります。
また五輪塔に刻む文字も宗派別に異なり、天台宗では上から順に「空・風・火・水・地」、日蓮宗では「南無・妙・法・蓮華・経」とそれぞれ決まっています。
なお、浄土真宗では卒塔婆を使わないため卒塔婆立ては必要なく、他の宗派で見かける五輪塔を建てることもありません。浄土真宗では亡くなった方は直ぐに成仏する(往生する)という考え方であり、遺族などが故人の往生を念じるための追善供養(卒塔婆供養)そのものがないためです。「お墓には霊が宿る」という考えもないため、先祖の霊を祀る五輪塔を建てることもありません。
ただし、地域によっては宗派に関係なく卒塔婆を立てる慣習があるようです。

文字や付属品に違いはありますが、墓石のデザインには殆ど決まりがないため、仏教系のお墓は色や形を自由に決めることが出来ます。

●神道のお墓
神道のお墓は仏教のお墓とよく似ていますが、棹石が少し長めであり、石頭部を四角錘にした角兜巾(ときん)と呼ばれる形状になっています。墓石に刻む文字は「◯◯家奥津城(おくつき)」や「○○家奥都城」、「◯◯家先祖代々霊位」などが一般的です。

デザインにも厳格なルールがありそうな神道ですが、墓石の形はかなり自由であり、文字や角兜巾などがきちんとしていれば洋型の墓石でも問題ありません。
ただし神道では線香をあげないため香炉はなく、お供え物は八本の足からできた「八足台」を使います。

●キリスト教など諸教のお墓
カトリックやプロテスタント、正教会といった教派のあるキリスト教ですが、どの教派でもお墓に十字架を刻むのが通例となっています。戒名や法名がないため、亡くなった方の名前や洗礼名に加え、聖書の一説を刻むことが多いようです。
お墓はオルガン型やストレート型など背の低いタイプが多く、重心が低いことから地震にも強いため、洋型のデザインを採り入れたお墓は徐々に人気が上がっているようです。またキリスト教のお墓ではろうそく置き場を設けるのが一般的となっています。

キリスト教の他、イスラム教など他の海外宗教も沢山ありますが、墓石の大きさやデザインよりも埋葬方法を重視しているところもあり、供養や法要の仕方も様々です。お墓を見かける機会は少ないですが、デザインが多様化している現在、諸教の墓石デザインが見直されることがあるかもしれません。

デザイン墓とはどんなお墓?値段はどのくらい?

最近ではユニークな形・色のデザイン墓が増えつつあります。
故人との思い出が風化しないよう、楽器や乗り物(車やバイク)など生前の趣味を象ったり、好きな言葉や花を彫り込んだりなど、お墓のデザインも多様化しています。
また形状は従来のお墓であっても、棹石に強化ガラスを使うなど素材に拘ったお墓もあり、しゃがまなくても墓参り出来るよう、全体を底上げした機能性重視のお墓もあります。

●デザイン墓の種類
デザイン墓には大きく2種類あり、一つは石材店のオリジナルとなる既製品(プロトタイプ)です。
各石材店のWebサイトやカタログなどに掲載されており、洋型をベースとした背の低いものが多く、価格も手頃なものとなっています。
もう一つは完全なオーダーメード(フルオーダー)であり、唯一無二のお墓を作り上げるタイプです。対応できる石材店は限られているため相見積もりをとりにくく、価格も既製品よりは高価になります。

●デザイン墓の価格相場
墓石の相場は工事費込みで50万円~200万円が一般的ですが、デザイン墓は3割程度上乗せした金額になるようです。石材やデザインによっては4割増し以上になることもあるため、予算はしっかりと組んでおかなければなりません。
また完全オーダーメードでは制作完了までの期間も長くなり、2カ月程度で仕上がる既製品の2~3倍はかかります。デザイン墓を検討する場合、早めに石材店へ相談することをおすすめします。

デザイン墓で気を付けておくこと

個性を表現できるデザイン墓は魅力的ですが、希望する霊園や墓地に建てられるかどうか確かめておく必要があります。区画の面積によっては収まり切らないこともありますし、墓地全体の統一性や景観を損なうことから奇抜なデザインを渋られることもあります。独自性が強い場合、親族が難色を示すこともあるでしょう。親族と相談しながらデザインを考えることで無用なトラブルを避けることも出来ます。

またオーダーメードの場合、思い描いているイメージが石材店に伝わっているかも重要です。
多くの石材店ではコンピュータによるCAD設計していますので、外柵などの付属品も含めたお墓全体のイメージ画像を見せてもらい、行き違いが生じないようにしておきましょう。

お墓のデザイン~地域性による違いはあるの?

お墓は宗派・宗旨ごとの決まりに従っていればよいのですが、和型墓石の場合は地域性があり、スタンダードなデザインも異なっています。周囲との調和を重視する場合、地域色を採り入れたお墓のデザインにするとよいでしょう。
有名なお墓の型としては北から順に「北海道型」「宮城型」「関東型」「名古屋型」「小松型」「金沢型」「富山型」「京都型」「大阪型」「神戸型」「福岡型「九州型」があり、全体的にはシンプルなデザインですが、中部地方は装飾性がやや強く、九州方面はどっしりとした重量感あるデザインになっています。

また和型から洋型、デザイン墓へとシフトしている地域もあり、東北~関東では洋型墓石が徐々に増えており、もともと装飾性の高いお墓が好まれている中部地方ではデザイン墓も増えています。

お墓のデザインは自然災害や安全面も考慮

●耐震構造のお墓
和型墓、洋型墓、デザイン墓全てに共通しますが、日本が地震大国である以上、耐震や免震について配慮しておく必要があります。
耐震構造のお墓は基礎部分に水抜き穴をつくり、石材同士をホゾ穴やアンカーボルトで固定するため大きな地震にも耐えられるようになっています。中には一見すると普通の墓石ですが、従来の三段積みではなく一つの石をくり抜いたものもあり、真石から納骨台までステンレスの心棒を通すタイプもあります。
工法によって価格は変わりますが、いずれも高い耐震性能となっています。

●免震構造のお墓
免震構造の場合、石と石の間にゲル状の衝撃吸収材を取り付け、揺れを伝えにくくするお墓もあります。
加工が比較的簡単なのでコストも低めであり、既に建立されたお墓の修繕やリフォームにも使用することが出来ます。また石材専用の強力接着剤もあり、耐久年数は短いものの安価に施工できる点が特徴となっています。
洋型墓やデザイン墓には背の低いものが多いため、和型墓ほどの耐震・免震構造は不要かもしれませんが、地震の多い地域だと不安に感じてしまいます。そんなときこそ専門家である石材店に相談し、最適な工法を提案してもらいましょう。

●お墓の水害対策
地震とともに多いのが台風などの影響による水害です。
墓石自体は水濡れに強いため、雨水だけでは大きな影響を受けませんが、沿岸部では塩害が出てしまうこともあります。塩害にあうと表面のツヤがなくなり、錆(サビ)などによる色褪せも起きてしまうため、塩分に強い石材選びや表面のコーティングが必要になるでしょう。
水害ではお墓全体が傾いてしまうこともあるため、雨量の多い地域では基礎部分をしっかりつくっておくことが重要であり、納骨室への入り口を地面より高くするといった工夫も必要となります。

もっとも重要なのは霊園・墓地全体の水はけです。
水の逃げ道が確保されていなければお墓が水没することになり、納骨室にも浸水してしまいます。
山間部の山すそなどにある「みなし墓地」では、豪雨水害で墓石が流されてしまった事例もあるため、場所選びは何より大事です。
せっかく気に入ったデザインのお墓が完成しても、流されたり倒壊したりしては意味がありません。霊園や墓地を選ぶ際、水はけの良し悪しも確かめておいてください。

お墓のデザイン~まとめ

お墓のデザインは自由度が高く、様々な色・形のお墓を建てることが出来ます。
しかしお墓は完成してからが長い付き合いのスタートなので、見た目を重視するあまりに強度が犠牲・・・ということがあってはいけません。
気候や風土、地域性も考慮した上でデザインを決めていくのがベストといえるでしょう。
家族とも相談しながら、子孫へ残せるお墓として相応しいものを選んでください。