新しくお墓を建てる時、自由に建てていいの?「宗派篇」

~宗派による決まりなど、素朴な疑問を解決します~

近年は葬儀やお墓に対する考え方も変化し、墓地や霊園に出向くと様々なデザインのお墓をみることが出来ます。樹木葬といった現代的なスタイルも広がりつつあるため、「建て方は自由なの?」と思えてしまいますが、お墓の建て方にはいくつかの制約・ルールがあることを知っておいてください。
今回はお墓の建て方について、宗教や宗派ごとの違いなどを解説します。

国内の宗教・宗派

日本国内の宗教は仏教系や神道系が9割近く(比率はほぼ半々)と多く、残りの1割がキリスト教や諸教となっています。
仏教については大きく6つの系統に分類され、またその中で十以上の宗派に分かれています。

①奈良仏教系~法相集、律宗、華厳宗
②法華系~日蓮宗
③密教系~真言宗
④密教・法華系~天台宗
⑤浄土系~浄土宗、浄土真宗、融通念仏宗、時宗
⑥禅系~曹洞宗、臨済宗、黄檗宗

お墓を建てることそのものは宗教から派生した行為ではないため、形状に関しては特に宗派・宗旨間の違いはありませんが、墓石に刻む文字などは宗派によって異なります。

一方、神道の場合、神社神道や教派神道といった仏教でいう宗派のようなものはありますが、お墓については特に形状・文字などの違いはないようです。また仏教のお墓と形状もほぼ一緒であり、細かな点で違いはあるものの、一見しただけでは仏式・神式の違いは分からないようです。

お墓を建てる場所は自由に決めてよいのか?

お墓といえば墓地や霊園などが思い浮びますが、郊外や田舎では民家の敷地内や道路沿いに建っていることもあるため、「私有地なら建てられるのか?」と疑問に感じることもあります。
しかしお墓を建てる場所は法律によって決められており、どこでも自由にという訳にはいきません。お墓や墓地については「墓地、埋葬等に関する法律」が定められており、各地方の条例も関係してきます。
ではどのような場所に建てられるのか、具体的に解説していきます。

お墓を建てる場所~墓地・霊園

お墓は都道府県知事の許可を得た場所(墓地)にしか建てることが出来ず、墓地・霊園の利用が一般的となっています。
墓地・霊園には民営と公営があり、それぞれの違いは以下のとおりです。

●民営墓地(霊園)
文字どおり民間(宗教法人や公益法人)によって管理・運営されている墓地であり、殆どの場合、宗派や宗旨に関係なく販売されています。法要向けの施設や永代供養墓などもあり、墓石のデザインも比較的自由ですが、指定の石材店を使うことが条件であったり、管理費用が公営墓地よりも高く設定されていたりします。

●公営墓地(霊園)
地方自治体が管理・運営する墓地であり、民営に比べ管理費などは安くなっています。人気があるため抽選になることが多く、また当選しても希望する区画になるとは限りません。民営と同様に宗派や宗旨の制限はなく、石材店も自由に選べますが、地価に影響されるため都市部の霊園は高額となっています。

お墓を建てる場所~寺院墓地

各宗派の寺院(お寺)が管理する墓地であり、境内の中や隣接地などに設けられています。お寺が管理・運営しているので、葬儀や法要の際は細かなこともお寺に任せるなど安心して利用できます。
寺院墓地の利用については、多くの場合そのお寺に入檀し、檀家になることが条件となっています。
宗派や宗旨については、「生前の宗派等は問わない」とするお寺が多いのですが、納骨後はそのお寺の宗派・宗旨に従った葬儀や供養となり、キリスト教など仏教系以外のお墓は断られることもあるようです。

お墓を建てる場所~共同墓地

共同墓地と呼ばれる墓地には2タイプあり、それぞれの違いは以下のとおりです。

●共同墓地(合祀墓・合葬墓)
近年利用者が増えている墓地であり、大きなお墓を共同利用する形態です。
一般的なお墓と異なり、石碑や石塔(供養塔)の地下に骨壺を納めるタイプが多く、血縁関係など全くない他人と一緒に納骨されるため抵抗感のある人もいますが、跡継ぎがいない場合や費用を抑えたい人に多く利用されています。

●みなし墓地
山間部などの田舎でよく見かけるタイプの墓地であり、集落墓地や村落墓地と呼ばれることもあります。
墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)の制定以前からある墓地であり、同法第10条により都道府県知事の許可を得たものとみなされることから「みなし墓地」と呼ばれています。
実際には無許可で建てられたお墓も点在しているようですが、新たに建てることはほぼ不可能であり、既存墓地の拡張なども認められることは殆どありません。

その他~お墓を建てない供養

お墓を建てない供養の仕方もあります。
マンションタイプやロッカー式の「納骨堂」や樹木を墓標とする「樹木葬」、海洋や山林に遺骨を撒く「散骨」、納骨をせず手元(自宅)に遺灰や遺骨を置いて供養する「手元供養」などが代表的であり、故人の遺志や費用面から少しずつ広まっているようです。

宗派等によるお墓の違い

仏教系の場合、お墓の形や石の材質(色)などは原則自由ですが、墓石に刻む文字には宗派ごとの決まりがあります。各宗派の特徴を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

●奈良仏教系:法相集、律宗、華厳宗
奈良仏教系の宗派には檀家が存在せず、葬式も行っていません。従って葬儀は他の宗派で執り行うことになり、またその宗派へお願いしてお墓に入れてもらう形となります。

●法華系:日蓮宗
日蓮宗では、墓石に念仏である「南無妙法蓮華経」を刻むことが一般的ですが、「妙法」や「○○家之墓」と刻む場合もあります。墓石とともに建てる五輪塔には「南無・妙・法・蓮華・経」と刻むのが決まりとなっています。

●密教系:真言宗
真言宗では墓石に大日如来を表す「ア」の梵字を刻み、続けて「〇〇家之墓」と刻むことが多く、また真言宗で一番短いお経となる「南無大師遍照金剛」の文字を刻むこともあります。五輪塔を建てる際は上から順に「空・風・火・水・地」の梵字を刻むこととなっています。

●密教・法華系:天台宗
天台宗のお墓は同じ密教系となる真言宗と似ており、「ア」の梵字に続けて「〇〇家之墓」または「〇〇家先祖代々之墓」と刻むことが多いようです。法華系でもあるため「南無阿弥陀仏」と刻む場合もあり、五輪塔も上から順に「空・風・火・水・地」の梵字を刻みます。

●浄土系:浄土宗、浄土真宗、融通念仏宗、時宗
浄土宗では阿弥陀如来を表す「南無阿弥陀仏」または、阿弥陀如来を表す梵字に続けて「〇〇家之墓」と刻むことが多く、また梵字に続けて戒名を刻む場合もあります。五輪塔を建てる場合は、上から順に「南無・阿・弥・陀・仏」と刻むようになっています。
浄土真宗の場合は「南無阿弥陀仏」または「倶会一処(くえいっしょ)」と刻むことが多く、「〇〇家之墓」の文字は墓石の右側面に刻み、その下に法名を刻むようになっています。また浄土真宗には追善供養の考え方がないため卒塔婆や卒塔婆立てもなく、五輪塔や宝塔を建てることもありません。
融通念仏宗では「南無阿弥陀仏」や「〇〇家之墓」が一般的であり、時宗では「南無阿弥陀仏」とともに一段下へ家名を刻むのが通例となっています。

●禅系:曹洞宗、臨済宗、黄檗宗
曹洞宗や臨済宗、黄檗宗のお墓には共通点が多く、墓石上部(頂部)に円相である「○」を刻み、正面には「南無釈迦牟尼仏」を刻むことが多いようです。五輪塔がある場合は上から順に「空・風・火・水・地」を刻みます。

神道のお墓

神道のお墓は一見すると仏教系に似ていますが、棹石(さおいし)が少し長めであり、上部は四角錘の形状になっています。この形は日本神話にも登場し熱田神宮の御神体にもなっている草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)を象ったものであり、墓そのものを神器と捉えているようです。
お墓に刻む文字は「◯◯家奥津城(おくつき)」や「○○家奥都城」が一般的であり、「◯◯家先祖代々霊位」とされる場合もあります。
神道には戒名・法名の考えはありませんが、生前の名前の後に男性では翁(おきな)、女性では媼(おうな)といった称名(たたえな)をつけ、後に続く尊称と合わせて「諡(おくりな)」や「諡号(しごう)」、または霊号(れいごう)と呼んでいます。

神道のお墓はどこに建てる?

神道では「死は穢れ」とされており、神社の敷地内にお墓が建てられることはありません。神社が神域と考えられているためですが、神道の場合、宗教や宗旨、宗派を不問とする墓地・霊園を探してお墓を建てることになります。
寺院墓地では断られることもありますが、入檀(檀家になる)することを条件に建てらる場合もあるようです。

無宗教や夫婦で宗教・宗派が異なる場合

無宗教の場合、寺院墓地へお墓を建てることは難しいようです。戒名や法名がないことなどが理由となりますが、宗派や宗旨を問わない墓地・霊園であればお墓を建てることが出来ます。
夫婦間で宗教・宗派が違う場合、宗派・宗旨不問の墓地・霊園であれば同じお墓に入れますが、宗派によって刻む文字が異なるため、墓石を新たに買い直すこともあるようです。
寺院墓地の場合、異なる宗教・宗派の納骨を渋られることもありますが、最近では考え方も柔軟になり、中には檀家制度のない寺院もあります。宗教が違っても同じお墓に入りたい場合、あらかじめお寺の住職に相談してみることをおすすめします。

宗教・宗派によるお墓の違い~まとめ

今回のコラムではお墓を建てる場所、またお墓に刻む文字について宗派別の解説をしました。
しかしお墓を建てる際には石材の選択やお墓全体のデザインなどもあり、また故人の遺志もあることから簡単に決めることは難しいようです。
お墓の建立は一生に一度となる場合が殆どであり、値段も高額となるため、失敗しないお墓選びなど、今後もお墓に関するコラムを特集していきま