いま「おひとりさま」が急増!

~おひとりさま本人はどのように備えていけば良いのか?~

生涯独身の人も増え、また、結婚しても子供がおらず配偶者が亡くなった人も増えています。いわゆるおひとりさまですが、死後の事柄はもちろん、突然の病気や入院、介護についても心配事があります。おひとりさまは、まず本人が老後に備えてしなければならないことが多くあります。ここでは、本人がどのようなことを準備しておかなければならないかを整理し解説します。身近にそのような方がいる人にとっても、いざという時のために知っておくと良いでしょう。

おひとりさま本人による病院入院や介護対応

いわゆるおひとりさまで、同居する家族がいない単身高齢者は、生活すべてにおけるリスクマネージメントが必要です。元気であればなんとかなると思っていても、ある日突然病気になったり事故に会ったりする時もあるからです。

(1) 緊急時の連絡先の確保

病気の緊急時は救急車になりますが、それ以外の時に助けてもらえる人も確保しておくことが重要です。同居家族がいなくても、別居の家族や親族の連絡先の電話番号などがすぐわかるようにしておきます。それらの人がいない場合は、身近な知人などを、少人数でも作っておくべきでしょう。多くの孤独死の場合はまったく人間関係がない場合が多く、賃貸住宅であれば大家さんや隣人が異変に気が付いて分かる場合がありますが、それでは手遅れなのは言うまでもありません。
地方自治体のサービスで安否確認などの電話サービスや、警備会社などの見守りサービスがある場合もあります。

(2) 病気や事故の入院に備える。

高齢になれば病気や転倒などのケガなどで入院をしなければならないこともあります。おひとりさまの老後では、その手続きや金銭の準備もしておかなければなりません。

①入院費の準備
救急車で病院へ行っても当面の入院費が支払えるよう、手元現金をいくらか準備しておくと安心です。入院保証金は病院や病状により異なりますが5万円から10万円程度です。

②入院時に必要な身元保証人
病院の9割以上で、入院時には身元保証(保証人)が必要です。その理由は、「入院に必要な生活用品の用意」、「緊急連絡先の必要性」、「支払いの保証」、「死亡後の対応」などです。

a. 入院に必要な生活用品の用意
衣類、歯磨きや洗面用品、その他生活用品などの準備が必要です。ただし、最近の病院ではアメニティサービスとして外部業者と提携してこれらの用品とサービスを有料で提供している場合が多くあります。準備する手間が省ける点は良いのですが、この費用は健康保険の対象から外れ医療費よりも高い場合があります。

b. 緊急連絡先の必要性
病気やケガの治療の対応などで、身元保証人などの同意が必要になる場合もあります。

c. 支払いの保証
病院にとってはこの支払いの保証の要素が大きくあります。支払いの保証がない場合は救急以外では入院拒否の理由となります。

d. 死亡後の対応
高齢者の場合は万一患者が亡くなった場合の対応も病院にとっては重要です。葬儀の処理や片付けがあります。

(3) 介護の助けが必要になった時に備える。

高齢になればいつかは要介護の時期が訪れます。

①介護認定
介護認定を受け、要支援・要介護の段階であれば認定を受けておきます。認定を受ければ介護サービスが受けられる対象となり、ケアマネージャーと介護サービスの利用について相談します。

②介護サービスを受ける。
介護認定を受ければ必要な介護サービスは受けるのが望ましいです。これは単身高齢者の場合の孤立を防ぎ、いざという時の安否確認にもつながるからです。

③食材の宅配サービスも検討する。
高齢者向けに食事の宅配サービスがあります。これも、いざという時の安否確認につながります。

④介護施設入所
軽度認知症向けのグループホーム、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの入所用の介護施設があります。これらの入所には申し込みが必要で各種の手続きが必要です。ケアマネージャーと相談することはできますが実際の手続きなどを行う人が必要です。おひとりさまは自分で行うか、手助けてくれる人が必要です。そのような人がいない場合は行政の地域包括支援センターなどに相談します。
また、介護施設入所にあたっては各種の準備しておくことは病院入院と類似していますが各種の手続きが必要です。

a. 介護施設への入所申し込み
介護施設は簡単にいつでも入れるものではありません。入所の規定に合っていることと、空きがなければ入れません。例えば特別養護老人ホームでは、入所要件は要介護3以上であり、入所の必要性が高い人ほど優先されます。地方自治体により制度は異なりますが、一般的には住まいのある地方自治体の希望の施設を選び申込書類を提出します。入所は先着順ではなく、入所に関する判定委員会の審査により入所が決まります。多くの地域で入所待ちの待機がありすぐには入れません。

b. 入所にあたっての身元保証人の必要性
特別養護老人ホームなどの介護施設の入所でも約8割の所で身元保証人が必要となります。
理由は病院入院と同様で、「入所に必要な生活用品の用意」、「緊急連絡先の必要性」、「支払いの保証」、「死亡後の対応」などです。

c. 入所費用の支払いの体制
介護施設の入所は長期に渡るため毎月の支払では銀行口座の引き落としになります。入所にあたっての施設選択では、当然本人の毎月の年金などの収入で支払える額でなければなりません。ただし、特別養護老人ホームでは収入額に応じて入所の月額利用費が設定されるため比較的支払いの心配は無くなります。

(4) 民間の身元保証サービスもある。

家族、親族、知人で頼める人がいない場合には、民間に身元保証サービスを行う団体も一部あります。
入会制度をとる団体が多く、入会金や月会費が必要です。一部団体では後述する葬儀などの死後に行うべき事務全般も請け負う所もあります。

おひとりさま本人による認知症、医療などの終末期の対応

(1) 認知症に備える「任意後見契約」

認知症などにより判断能力が十分ではなくなった人は、財産管理や契約などを正常な判断にもとづいて行うことが困難です。こうした人を法律的に支援する「成年後見制度」という制度があります。
成年後見制度には、判断能力が低下する前に後見人になってもらいたい人と契約をしておいて必要なときに利用できる「任意後見制度」、判断能力がすでに低下しているときに利用できる「法定後見制度」の2つがあります。

おひとりさまが認知症に備える場合に利用するのは、主に前者の「任意後見制度」です。
後見人になってもらいたい人を本人が選び、公証役場で「任意後見契約」を締結します。
任意後見人の職務は、あらかじめ契約で定められた法律行為を行うことです。本人から与えられた代理権のみがあり、同意権や取消権はありません。

支援が必要になったときに、家庭裁判所に申し立てをすることで利用することができます。
契約で定められた法律行為は次の点です。

①財産管理
現金・預貯金・不動産・有価証券などの管理、税金・公共料金・保険料などの支払いです。

②身上監護
福祉・介護・医療などに関する契約や手続きなどの代理です。契約や手続きの代理であり、生活や介護そのものの支援ではありません。

(2) 「任意代理契約」

先に述べた「任意後見契約」の効力が生じるのは、判断能力が十分ではなくなってからです。
そのため、認知症に備えて任意後見契約を結んでいても、いざ認知症が発症したときに誰にも気づいてもらえなければ意味がありません。また、認知症にならなかったときには「任意後見契約」を利用することはありません。そのため、認知症でなくても体力や判断能力が落ちてくると、ひとりでは不安だという人もいます。そのため正常な判断能力があるうちから、こうした状況に備えておく契約があります。
「見守り契約」や「財産管理契約」、「任意代理契約(財産管理等委任契約)」です。内容的には次のようなものです。

①見守り契約
定期的な訪問や電話連絡などにより心身の状態を把握してもらいます。

②財産管理契約
当事者の合意にもとづいて財産管理などを行ってもらいます。

③任意代理契約(財産管理等委任契約)
見守りや財産管理などを行ってもらいます。

(3) 医療同意

医療同意はおひとりさまにとっての大きな問題です。医療行為には患者本人の同意が必要ですが、危篤状態であったり判断能力が弱まっていたりして本人が意思決定できない場合には、誰かが代わりに同意しなければなりません。その際、誰が決定権を持つかが問われているのです。たとえば、意識のない人がひとりだけで搬送されてきた場合、現場の医師たちは、何とかして身内など連絡の取れる人を探そうとします。人命救助を最優先して最善を尽くそうにも、誰がその判断に責任を持つのかがわからないから、怖くて治療ができないという問題があるからです。

遠く離れていても家族がいれば依頼し、家族がいなければ信頼できる親族に依頼しておかなければなりません。法律的には親族以外でも可能です。

また、成年後見人には、医療同意の権限はありません。成年後見人の仕事は「財産管理」などです。人の生死に関わる判断をすることになるため、自分であらかじめ「このような場合はこうして欲しい」という連絡先リストを作成しておくなどの対応が必要です。

終末期医療に対する延命治療については、自分の意思を示す文書を残しておくことが必要です。本人の意思を示す「証拠」となります。
延命治療の内容も具体的に、人工呼吸器はつけるか、「胃ろう」は行うか、腎臓の人工透析は行うかなどもあります。また、苦痛緩和ケアについても求めるのかどうかなどもあります。消極的安楽死を希望するなどもあります。

おひとりさま本人による自分が死んだ後の葬儀、お墓などの対応

(1) 死後の葬儀やお墓に関する「死後事務委任契約」

本人が亡くなった後も、葬儀や遺品整理などなすべきことは数多くあります。家族や親族など身内がいない場合、これらを誰かに頼んでおかなければなりません。
その際に結ばれる契約を「死後事務委任契約」といいます。先に挙げた「任意後見契約」や「任意代理契約」などは、本人が死亡した時点で契約が終了となります。そのため、死後のさまざまな事務手続きについては、死後事務委任契約が必要になります。

自分が死んだ後の対応で依頼することは、次のようなことです。

①葬儀、火葬
葬儀社への連絡と火葬などの処理を依頼し費用を処理する。

②お墓、納骨
入ることが決まっているお墓があればそこに納骨し支払いを処理する。

③遺品整理
住宅内の遺品整理、ごみの処分などです。住宅が賃貸の場合は原状回復処理、敷金の返還処理などもあります。

④死亡に関わる各種事務手続き
地方自治体への死亡届の提出、健康保険や公的年金の資格抹消の手続き、公共料金の支払いや銀行口座の解約、インターネット上のメールアカウント等の解約などです。

⑤遺産の処理
本人が亡くなった後に財産をどうしてもらいたいのかの指定は、遺言書がなければ行うことができません。死後事務委任契約があったとしても、債務の支払いや不動産の売却、最終的に残った財産の処分などを勝手に行うことはできないからです。遺産の処理では、公正証書遺言が必要になります。

いずれも本人が生前に誰か信頼できる人に依頼しなければなりません。代理人となる人がいなければ民間の死後事務委任契約による終活サービスの利用もあります。

民間企業では、葬儀から納骨までパッケージにして提供するものも出てきました。終活関連サイト運営の鎌倉新書では、おひとり様向けに葬儀・墓・死後事務の手続きをサポートする「いい生前契約」と名付けたサービスを49万8000円(税別)で、火葬のみの葬儀(直葬)と、保険証や免許証の返納といった死後の手続き、納骨までをパッケージにして提供しています。対象は50~80代のおひとり様とその予備軍で、同社の提携会社で直葬を執り行い、すでに墓を持っている人は指定場所に納骨、墓がない人は同社が運営するサイトと提携している霊園の合祀(ごうし)墓に納めるものです。

法律的処理では弁護士事務所、司法書士事務所などがあり、生活全般に関わるものではNPOなどが行っている例もあります。

(2) 生前に預託金の用意

葬儀費用などの実費と代理人への報酬を、生前に預託金として頼んだ人などに渡しておくというのが一般的です。

まとめ

(1) 病院入院では身元保証人がいること。
遠く離れた家族、親族、身近な知人などで身元保証人を頼める人を元気なうちに見つけておかなければなりません。救急車で自分が入院してから急に頼むのは大変です。

(2) 介護施設入所でも身元保証人がいること。
介護施設入所でも病院入院と同様に身元保証人を頼める人を元気なうちに見つけておかなければなりません。

(3) ある程度のお金は用意しておくこと。
病院入院ではすぐ支払えるために手元の現金で10万円程度は用意しておいた方が良いでしょう。介護施設入所では高額な有料老人ホームの入居一時金を払うのでなければ多額の入所金は必要ありませんが、1カ月分程度の前払い金は必要です。その後月々の利用費を払えるだけの年金収入や貯金は必要となってきます。
また、死後の事務委託契約では、葬儀費用や納骨費用の生前の預託金の支払いは必要です。数十万円から100万円程度の費用は必要になってきます。

(4) 自分が認知症になった場合の「任意後見制度」の活用
おひとりさまが認知症に備える場合に利用するのは、主に「任意後見制度」です。後見人になってもらいたい人を本人が選び、公証役場で「任意後見契約」を締結します。任意後見人の職務は、あらかじめ契約で定められたことに限定し代理することです。

(5) 各種の老後の不安に対応する「任意代理契約」などの活用
認知症でなくても体力や判断能力が落ちてくる不安に対応するための「見守り契約」や「財産管理契約」、「任意代理契約(財産管理等委任契約)」などです。

①見守り契約
定期的な訪問や電話連絡などにより、心身の状態を把握してもらいます。

②財産管理契約
当事者の合意にもとづいて財産管理などを行ってもらいます。

③任意代理契約(財産管理等委任契約)
見守りや財産管理などを行ってもらいます。

(6) 死後の葬儀やお墓に関する「死後事務委任契約」
自分が死んだ後の対応で困ることは次のようなことです。

①葬儀、火葬

②お墓、納骨

③遺品整理

④死亡に関わる各種事務手続き

⑤遺産の処理
家族や親族など身内がいない場合、これらを誰かに頼んでおかなければなりません。
その際に結ばれる契約を「死後事務委任契約」といいます。先に挙げた「任意後見契約」や「任意代理契約」などは、本人が死亡した時点で契約が終了となります。そのため、死後のさまざまな事務手続きについては、死後事務委任契約が必要になります。

(7) 身元保証人や死後の葬儀などの事務委託を誰に頼むのか
身元保証人や死後の葬儀などの事務委託を誰に頼むのかですが、親族や知人で頼める人を元気なうちに探しておく必要があります。どうしてもいない場合は行政の地域包括支援センターなどに相談したり、民間NPO団体などを探したりする必要があります。