エンバーミングってどういうときにするの?

~その意味と実際に行うときの事例や費用について解説~

エンバーミングとは

私たちの体は「死」迎えると、徐々に硬くなり「死後硬直」という状態になります。そして、そのまま放置しておくと臓器に残る消化酵素や体内の微生物によって分解が始まります。
このまま放置してしまうと、腐敗の原因となる「クロバエ」「ニクバエ」の幼虫、いわゆる蛆虫(うじむし)の接触活動による損壊が進んでしまいます。このような腐敗・損壊しないように処理をしなければなりません。これがエンバーミングです。

なぜエンバーミングをするのか

エンバーミングは、感染症予防の最善策として行われる処理です。病気などで亡くなった場合はもちろん、事故でもそのまま病理解剖をすることで感染症を引き起こしてしまうことがあります。特に、臨床の場での医師や病院スタッフ、遺族への感染の可能性が出てきます。

しかし、エンバーミング処置を行うと、遺体からは感染症を引き起こす病原菌の数が激減します。そこで、医師や看護師などの病院スタッフや、遺族などへの感染症の予防対策として、エンバーミング処置を行うようにしています。

海外のエンバーミング

かつては宗教的な意味や「土葬」による遺体から感染症が広がることを防ぐために、消毒などの処理を行っていました。アメリカやカナダでは、エンバーミングは一般的な遺体処理の方法でした。

義務付けられている州もあるほか、エンバーマー(エンバーミングをする人)の教育・資格制度もしっかりとしています。しかし、アメリカでも火葬が広がるに伴い、以前のようなエンバーミングをする率は減少しています。

また、国の指導者の権威を高めるために、生前の姿のままエンバーミングし、その後も定期的にメンテナンスを行っていることもあります。をロシア革命を主導したソ連のウラジーミル・レーニンがエンバーミングと、定期的なメンテナンスされているのも有名です。

日本のエンバーミング

日本では99%が火葬されているため、日本にエンバーミングの手法が伝わったのは1988年です。その後、火葬までの遺体の保存や保全だけが目的ではなく「生前のような安らかな表情」などを目的とし、エンバーミングが広がっていきます。

病院で死亡した場合は、看護師らの手によって「エンゼルケア」「エンゼルメイク」と呼ばれる措置がとられます。体液や糞便の排出、メイクなどが行われることで、感染症のリスクはほとんどありません。

エンバーミングの方法

エンバーミングは、次のような工程で行われます。病院では、死亡の診断が下された後、遺族が待つお別れの部屋へ連れていく前に、看護師らの手で行われることがほとんどです。遺体をより生前の時と同じような状態に戻し、清潔な状態で遺族との別れの時が過ごせるようにします。

① 人が亡くなった場合、病院などでは点滴や心配蘇生装置などを外します。

② 死亡が確認されると、遺族との対面や確認が行われます。看取りを行っている病院や、総合病院ではエンバーミングの処理を始めます。感染症の原因となる病原菌・ウイルスの有無に関わらず、危険な感染から防ぐために、遺体の全身を消毒し洗浄します。

③ 遺体の表情を整えて、必要に応じて化粧や髭を剃るといった処置なども行います。

④ 遺体の頸部などを切開し、動脈より循環器経路を使用し防腐剤を注入します。逆に、静脈より血液を排出し、血流を止めます。

⑤ 腹部におよそ1cmの穴を開けます。そこからトローカーと言われる金属製の管を刺して胸腔や腹腔部に残った体液や、腐敗を起こしやすい消化器官内に残っている物を吸引します。そして、同時に、胸腔や腹腔内に防腐剤を注入します。この処置により、「死臭」という臭いもほとんど感じることがありません。

こういった処理が不充分だと、棺桶に入れた後も、鼻や耳などから出血したり、体液が漏れてしまったりすることがあります。特に、体格の良い肥満の人の場合は脂肪が多く、こういったことが起こりやすくなります。

⑥ 切開を施した部位を縫合します。また、事故などで損傷箇所がある場合はその部分の修復作業も行います。特に手術後に亡くなってしまった、事故で無くなってしまった場合は、縫合した場所をテープで隠すなどの処理も行います。

⑦ 再度全身・頭髪を洗浄し、遺族より依頼のあった衣装を着せ、表情を整え直した上で化粧を施します。

⑧ この後、葬儀を執り行う業者によって、遺族の希望する場所へ搬送し、火葬の日まで遺体を保存するために、ドライアイスなどで、腐敗を防ぎます。
エンバーミングをすることで、遺体が腐敗することもなく、安心して遺族とのお別れを過ごすことができます。

人が亡くなった後、そのまま放置しておくと、体は死後硬直の後腐敗を始めます。孤独死の人が知らぬ間に亡くなり、腐敗の匂いによって発見されるといった事件があるのは、こういったことが原因です。

しかし遺族や最期の看取りに責任を持つ人がいれば、病院へ搬送されたり、病院で亡くなったりすることで、専門の知識を持った人によってエンゼルケアやエンゼルメイク、エンバーミングをしてもらうことができます。

エンバーミングの費用

高齢者の多い病院や、総合病院では最期の看取りを行うことがあり、こういった病院へ入院すると、必ずエンゼルケアなどの説明を受けます。その時に、エンゼルケア代としてこれくらいの価格がかかります、という説明もあります。

このように、看取りを行う総合病院や高齢者の多い、認知症専門病院では、エンゼルケアまで行っていることがあり、比較的安価にすみます。しかし家で亡くなり、その後医師が死亡を診断すると、葬儀社がエンバーミングをすべて行う場合もあります。

遺体の状態によっては、高額になることもあるため、費用の違いを把握しておくと良いでしょう。それでは、エンバーミングの費用の違いです。

エンバーミングの費用の違い

エンバーミングの費用は、15万円から25万円と言われています。病院で行う工程、葬儀社が行う工程があり、病院で行うエンゼルケアは、医療保険外になりますが3,000円から18,000円で、葬儀社が行うよりも安くなります。

病院でもしっかりと看取りを行っている病院、特に高齢者を受け入れることが多い病院では比較的安く設定されています。しかし、葬儀社が行うエンバーミングは15万円から25万円となります。

そこで、近年高齢者や、持病を持つ人が病院で亡くなると、医療的な処置を病院で、その後の保存などを葬儀社で行う、という形をとることが一般的です。この場合は、比較的安価で行うことができます。

しかし、家庭で亡くなりそのまま医師の死亡診断を受けると、葬儀社が行うことになります。清拭だけの湯灌の場合は5万円~、浴槽での湯灌は10万円~、正式なエンバーミングは20万円~といった料金です。それが、15万円~25万円ということです。

総合病院では、湯灌用の浴槽設備があることも多く、その場で湯灌までできます。しかし、ない場合は葬儀社が湯灌用の浴槽設備を持ち込む、という場合もあります。この場合は、葬儀社からの請求となるため、割高になります。

さらに孤独死などで遺体の発見が遅れたり、遺体の状態が良くなかったり、火葬場の予約が取れず長期保存が必要となった場合は、費用が高くなり場合もあります。2~3日で火葬ができれば20万円未満です。

しかし、火葬場が空いていないといったことで、4~5日かかってしまうと、その分「ドライアイス代」や「保存するための維持費」がかかり、割り増しになることもあります。

火葬場が空いていない理由

昔は「友引」は良くないと仏事を避ける傾向がありました。しかし、近年、通夜なら友引でも良い、と行ってしまうこともあります。また、火葬場は公共の施設となるため、基本年中無休です。

しかし、「友引」「大晦日」「正月」だけはお休みになります。そのため、どうしても暮れ間近に人が亡くなると、火葬を待つことになってしまいます。すると、その分ドライアイス代がかかってしまいます。

また、亡くなる人の体型によっては、どの火葬場でも火葬できるわけではありません。普通の棺桶に入らないといった大柄な人は、火葬をする場所も限られています。県や地域によっては、数か所しかありません。

体重100㎏、150㎏を超える巨体の場合は、県内でも数か所、場合によっては両国にある火葬場を待つことになります。このように、通常よりも火葬までに時間がかかる場合は、エンバーミングも違ってくるため、費用が掛かるということです。

エンバーミングができない

一般的な死の場合は、エンバーミング処理をすることが可能です。しかし、孤独死などで発見が遅れてしまうと、すでにご遺体が腐敗を起こしてしまい、エンバーミングの処理をすることができない場合もあります。

発見されると警察などの調査、確認が入り、親族や知人などの確認ができればそのまま火葬となってしまいます。まったくの孤独死、身寄りがないご遺体の場合は、役所の人間が立ち合い、処理する場合もあります。

こういった場合は、エンバーミングをせずに、そのまま遺体を周囲に見せられる状態にはできないため、通夜は行いません。略式の火葬で、無縁仏として埋葬されることもあります。そのため子供がいない独身者や夫婦で残された人は、「財産管理等委任契約」と同時に、自分の最期を看取る親族を決定する必要があります。

また、地域住人による見守りサービス、安否確認サービスなどを行っている自治体もあります。自身が悲しい最期を迎えないためにも、周囲の人に迷惑をかけないためにも、一人暮らし、または子供のいない夫婦だけの世帯は、近所の人とのつながりを密にすることも大切ということです。

スムーズなエンバーミング

人が亡くなった後、葬儀や相続以外に、その前後にもたくさんの準備と処理することがあります。一つ一つ準備したつもりでも、全てを把握しているわけではありません。そこで、可能な限りお金を残すこと、そして自分の最期を誰に委ねるのか、どこに委ねるのかを決めておくことが大切です。

できる限りの準備をしても、最低限のことしかできていないのが現実です。そこで、子供がいる人はもちろん、全国で3割を超えるという一人暮らしの高齢者は、「いつまでも自分は元気だ」「自分だけは大丈夫」と過信せず、周囲の人にいつかは最期を委ねることを考えて準備をしましょう。

こういった準備がスムーズなエンバーミングにもつながっていきます。