生前契約をしていた葬儀社が倒産!いったいどうなるの?

~生前に支払ったお金が戻ってこない どうすればいいの?~

終活の広がりにより自分の葬儀について考える人も増えてきました。そして、自分の葬儀について考える中で、葬儀の生前契約への関心も高まっています。ただ、死はいつ訪れるかは分からず、家族にとっても葬儀の生前契約がどのようなものかよくわからない場合もあります。そして、生前契約のリスクとして葬儀社の倒産の恐れもあります。もし葬儀社が倒産したらどうなるのか、また、その予防策についても紹介します。

葬儀の生前契約

(1) 葬儀の生前契約とは
葬儀の生前契約とは、自分自身の葬儀の内容や予算、葬儀会場などをあらかじめ決定し、葬儀社と予約契約を結んでおくことです。
生前契約を行う葬儀社は葬儀会社、冠婚葬祭互助会などです。

(2) 契約できる葬儀内容
契約できる葬儀内容では、葬儀の形式、葬儀規模、葬儀会場、その他の細かい希望などです。
葬儀の形式では、「一般葬」、火葬のみ行う「直葬」、家族のみで行う「家族葬(密葬)」などで、宗教形式では、日本で大半を占めるのは「仏式」の葬儀ですが「キリスト教式」「神式」などの葬儀を選ぶこともできます。その他の細かい希望では、死亡を伝えて欲しい人、葬儀の演出などです。

(3) 葬儀の生前契約の流れ
葬儀の生前契約のおおまかな流れとしては、葬儀社を選び、葬儀内容を相談・決定し、契約を結ぶことになります。
葬儀社の選択では、生前契約のサービスを提供している業者の話を聞き内容を比較検討し、見積りを出してもらってサービス内容や価格を比較した上で利用する業者を決めます。
業者と相談しながらどのような葬儀にしたいのか、葬儀の形式や遺影の写真など具体的に内容を決めます。納得ができたら業者と契約を締結し葬儀を委託します。
その際死後の葬儀や埋葬に関する事務の代理権を与える「死後事務委任契約」を結んでおくと死後の仕事がスムーズに運びます。希望通りの葬儀内容で葬儀が行われるように「公正証書遺言」を作成しておくこともできます。

(4) 葬儀費用の支払いはいつ?
生前契約の場合、葬儀料金の支払方法は次の3つです。
①契約時に前払い
②葬儀後に後払い
③葬儀信託を利用して葬儀後に精算

その他、生前相談ができる会員制度を設けている葬儀社もあります。
会員になることで、実際に葬儀を行うときにさまざまな特典を受けることができます。たとえば葬儀料金が10~20パーセント程度安くなる場合や、お見舞金が出たりするなどです。会員制の費用では無料から入会金1万円程度までがあります。

(5) 葬儀の生前契約の増加の背景
最近は、自分の葬儀を生前予約する人が増えているようです。かつては、「自分の葬儀を生きている間に予約するなんて縁起が悪い」と考える人が大半でした。しかし、生涯独身で親族とも疎遠になってしまっている高齢者も増え、また、子供に迷惑を掛けたくない高齢者が、葬儀の生前予約に関心を示すようになりました。また、自分の葬儀は自分でプロデュースしたいという葬儀に対するこだわりを持っている人も増えています。

(6) 葬儀の生前契約の注意点、メリットとデメリット
葬儀の生前予約に関して、注意すべき点やメリット・デメリットなどについて考えてみたいと思います。

①生前契約の注意点
生前予約をするときに気をつけなければいけない契約の保証に関することです。葬儀契約については契約内容を保証するための法的システムが、いまのところ整っていないというのが実情です。

葬儀の生前予約をしても高齢化している現在、実際に葬儀が行われるまでの期間は不明です。数十年かかる可能性もあります。そのため、生前葬儀予約した本人が亡くなる前に業者が破綻してしまって約束通り葬儀が行われなくなってしまうことも考えられます。
また、前払い制の生前予約(生前契約)かどうかが問題です。前払いした場合はお金が保全されていないと取り戻すことはできません。

②葬儀の生前予約をすることのメリットとデメリット

a. メリット
ア. 自分が死んだあとの葬儀を任すことができる。
子どもに葬儀の負担をかけたくないという人や、「おひとりさま」で誰も自分の葬儀をしてくれそうもないという人にとっては、自分が死んだあとの葬儀のことを任すことができ安心できる点です。

イ. 本人の希望に沿った葬儀ができる。
何の備えもなく死を迎えた場合、本人の意志に関わらず葬儀は遺族の一存で行われることになります。しかし生前契約を結ぶ場合、事前に納得がいくまで打ち合わせをした上で葬儀の内容を自分で決めることができます。

ウ. ある程度の費用目安を把握できる。
葬儀は、多くの場合急な出費となります。生前予約であれば、想定する規模や内容の葬式を執り行う場合に、どの程度の費用が必要となるかを事前に把握できます。

b. デメリット
ア. 遺族が生前予約を知らなければ実行されない。
生前予約の内容が実行に移されるのは、契約者である本人が亡くなった時であり、その時が来たことを葬儀社に知らせるのは当然のことながら故人本人ではありません。本人が生前予約をしている事実を遺族が関知しない場合、遺族から葬儀社への連絡がなされず、予約内容が履行されないままとなってしまう危険性があります。

イ. 遺族の思い描く葬式との食い違いでトラブルとなるケースがあり得る。
自身の希望する葬式の内容に、遺族が快く賛同してくれるとは限りません。生前予約した葬式の内容が、遺族の思い描く葬式とかけ離れているような場合には、遺族と葬儀社との間でトラブルとなることも考えられます。

ウ. 生前予約の最大のデメリットは、業者が倒産してしまう可能性があるということです。
自分が死んだ後に子どもや親族に迷惑をかけたくないとの思いから、葬儀費用を事前に支払っておいたにもかかわらず、業者が破綻してしまうと無駄になってしまう恐れです。

(7) 葬儀社倒産の背景
厚生労働省の人口動態統計によると、2017年の死亡者数は134万人を超え、2000年と比べると約38万人も増えています。高齢化が進み死亡者数は増えるのですから、葬儀市場は拡大するはずですが葬儀社の倒産が増えています。
なぜ葬儀社の倒産が増えているかですが、近年激しくなってきた価格破壊による葬儀の低価格化が最大の理由と考えられます。葬儀件数は増えても、葬儀「単価」が下落すれば売り上げは伸び悩み、この17年間で年間死亡者数が4割近く増えているにもかかわらず、葬儀社の経営が厳しくなっています。葬儀の低価格化の背景には、二つの要因があります。

第一に、葬儀の簡素化です。葬儀も、最近では血縁関係の近い親族だけを招く「家族葬」が増え、葬儀を行わない「直葬」も都市部では増えています。首都圏の家族葬の価格になると数十万円~100万円以下と従来の葬儀費用相場の半額以下に下がります。
第二に、葬儀業界の競争激化があります。「単価」が下落すれば、受注件数を増やすことでしか売り上げは上がりません。当然、競争激化となり低価格競争になります。
低価格競争が激化すれば、体力の弱い葬儀社から淘汰されていくことになり、大手葬儀社の売上は拡大していますが、零細葬儀社では売り上げが減少し二極分化が進んでおり、倒産しているのは地方の中小葬儀社がほとんどの現状です。

生前契約をしていた葬儀社が倒産したらどうなるのか?

もし生前契約をしていた葬儀社が倒産したらどうなるのかですが、一般の企業の倒産と同様になります。まとめた金額で葬儀費用を前払いしてしまった場合には費用を払った人は債権者になります。倒産の債権回収は厳しい現実があります。

(1) 一般人がどこまで企業の倒産情報を入手できるのか?
まず、一般人がどこまで企業の倒産情報を入手できるのかですが、新聞などで情報入手できる場合以外にはなかなか難しいのではないでしょうか。相手の業者が倒産したのかどうかもすぐには分からない恐れがあります。

(2) 相手先の実情の確認
相手先の倒産情報が入った場合には、最初に行うことは、相手先の実情の確認です。もし、交渉が可能な状況に思える場合には、以下のステップに進みます。

①契約書の準備
葬儀業者が倒産した場合、契約内容、契約金額、支払金額を証明する資料を準備しておきます。債権者であることを証明する資料です。

②法テラスなどでの法的相談
国の法律的事案の無料相談ができる団体に法テラスがあります。
法的トラブルを抱えて困っている方、どうやって解決したらいいかわからなくて悩んでいる方が相談できます。また、弁護士費用の分割払いの制度があります。必要に応じて弁護士を付けて対応することが必要になってきます。
「法テラス・サポートダイヤル」
法テラスの専門オペレーターが、問い合わせ内容に応じて、法制度や相談機関・団体等を紹介します。電話 0570-078374 無料です。

③相手方との交渉
多くの場合債権回収の経験のある弁護士に依頼します。
破産の申立等の法的手続が取られておらず、相手が交渉に応じない場合、法的手段に訴えて相手の資産の保全措置をとったり、強制執行したりすることも選択肢の一つです。
保全措置には、仮差押えなどがあります。手続きには保証金が必要ですが、債務者の同意などは不要です。
仮差押えとは、訴訟を提起する前に、一定の財産を差し押さえておく手続です。訴訟を提起して判決を得るまでの間に相手方が破産してしまう場合や、財産を隠匿してしまうおそれがあるなど、債権を保全しておく必要がある場合、訴訟提起前に、相手方の財産のうち債権額に相応する財産を差し押さえることができる手続きです。

取引先の倒産後に、債権を全額回収することは困難ですが、考えられる法的な手段を尽くして、少しでも多く債権回収できるように行動するのが基本ですが回収できない場合が多くあります。

生前契約をする場合、倒産などに対応する予防策は?

葬儀の生前契約をする場合の特別の社会的な保証制度はありません。ただし、業者により信託制度による保全システムがあります。その他、倒産に対する予防策、リスク回避策があると思われます。

(1) 葬儀社による信託会社提携
葬儀社の信託会社との提携による信託制度の活用があります。前払い金は将来、葬儀が執り行われるまで投資運用はせず、専用の銀行口座で管理されます。信託会社が葬儀費用を管理しているため、仮に葬儀社が倒産した場合でも、信託法23条及び25条並びに信託契約の定めにより全額保全されています。
葬儀社は信託会社との間で、「葬儀費用保全信託契約」を結んでいます。
必要な手数料は、信託会社の手数料20,000円(税別)と預り金額が50万円未満の場合は、預り金額の4%(消費税別)となっています。

(2) 冠婚葬祭互助会の前払い金保証制度
冠婚葬祭互助会とは、加入者が毎月一定額の掛金を前払金として払い込むことにより、冠婚葬祭の儀式に対するサービスが受けられるというシステムです。
加入者から前払いされた前受金は、主として結婚式場や斎場を建設する費用や維持費などに当てられる他、儀式に必要な各種の衣裳や祭壇などの備品を購入することなどに使われています。葬儀の生前予約については、冠婚葬祭互助会の契約そのものであるとも言えます。

冠婚葬祭互助会については前受金保全制度があります。
消費者保護の観点等から、加入者が結婚式や葬儀に利用するまでの間、冠婚葬祭互助会が預る前受金は、割賦販売法によって前受金の1/2を保全することが義務づけられています。
保全方法としては、
①法務局に供託する。
②経済産業大臣の指定する者(指定受託機関―保証会社)と供託委託契約を結ぶ。
③銀行又は信託会社その他法令で定める金融機関と供託委託契約を結ぶ。
の何れかになります。
この他に互助会事業は、経済産業省による同法に基づく報告徴収、立入検査等が行われ、事業者の経営状況を指導する等、適切な法的措置が講じられています。

(3) 葬儀社の選択
安心して契約できる生前予約業者を選ぶのは難しいのが現実です。せっかく自分の葬儀を生前予約したとしても、契約をした業者や団体が将来的に破綻しないという保証は現状ではどこにもありません。その会社が倒産するリスクがあるかどうかを確実に見極める方法はありません。業者の財務状況を把握するというのは上場企業のほとんどない葬儀社ではありませんし、仮に現在の財務状況が良いと判断することができても、それが今後も続くという保証はありません。
しいて言えば、長期間の経営実績のある会社、上場企業や経営規模の大きい会社であったり、良いクチコミが集まっている葬儀会社であったりする場合は、比較的リスクが低いといえるでしょう。

まとめ

(1) 葬儀の生前契約とは
葬儀の生前契約とは、自分自身の葬儀の内容や予算、葬儀会場などをあらかじめ決定し、葬祭業者と予約契約を結んでおくことです。

(2) 葬儀費用の支払い時期
生前契約の場合葬儀料金の支払方法は次の3つです。
①契約時に前払い
②葬儀後に後払い
③葬儀信託を利用して葬儀後に精算

(3) 葬儀の生前契約の保証する法的システムはないこと
葬儀の生前予約をしても、葬儀社との葬儀契約については契約内容や前払い金を保証するための法的システムがないのが実情です。ただし、冠婚葬祭互助会に対する割賦販売法に基づく前受け金の2分の1の保全の制度はあります。

(4) 葬儀の前払い金を回収するのは難しい場合が多いこと。
まとまった葬儀の前払い金を払った場合は一般倒産の場合と同様になり債権の回収は極めて難しい現状があります。また、対応には債券回収に経験のある弁護士に依頼することが必要になってきます。

(5) 葬儀社による信託会社提携による前払い金保全システム
前払い金保全では、葬儀社による信託会社との提携による信託制度の活用があります。信託会社が葬儀費用を管理しているため、仮に葬儀社が倒産した場合でも、信託契約の定めにより全額保全されています。

生前契約をしていた葬儀社が倒産! 3つのポイント

(1) 葬儀社が倒産したら多くの場合前払い金は取り戻せない。

(2) 葬儀の生前契約では信託会社提携による前払い金保全システムを活用する。
葬儀社で信託会社提携による信託制度を持っているところは一部ですが、全額保全されるので確実です。

(3) 葬儀の生前前払いをせずに、葬儀社の生前の会員制度を活用する。
葬儀の生前前払いはリスクがあるのでしないのが賢明です。葬儀社の生前の会員制度を活用し、いざという場合の亡くなった人の個人情報や葬儀内容の希望も伝えておけば生前予約に準じた対応も可能です。同時に家族にその内容を伝え、葬儀社から概算見積りを取りそのお金も準備しておけば確実性は増します。

葬儀費用の前払い金の保全では冠婚葬祭互助会における割賦販売法による2分の1の金額保全があります。ただし、冠婚葬祭互助会の倒産はあまり聞きません。葬儀社の倒産で多いのは中小事業者でそれも地方に多い現状です。