もし葬儀で宗派を間違えていたらどうする?

~葬儀中や葬儀後に発覚した時の対処法について~

近年、菩提寺との関係が薄れ、自分の家の宗派のことまで知らない方が増えています。葬儀会社から宗派は?と聞かれても分からず焦ってしまいことも少なくありません。また、菩提寺が地方で遠い場合などに僧侶派遣サービスで葬儀を行う場合も出てきました。もし葬儀で宗派を間違えて僧侶を呼んだ場合などでどうするのかについて、葬儀中や葬儀後の対処法などについて説明します。

仏式葬儀と宗派の関係

仏式葬儀において宗派が問題になるのは、家のお墓、戒名、その後の法要に関するものです。
「もし葬儀で宗派を間違えていたらどうする?」についてですが、家のお墓、戒名、その後の法要について宗派との関係からみてみます。

(1) 家のお墓と宗派の関係
檀家制度によりお墓をお寺で設けた場合、お寺を菩提寺と呼び、お墓の管理とお墓に入っている故人、先祖を供養してもらい、その代わりとしてお墓の利用者は檀信徒としてお布施を払う、寄進する関係で成り立っています。
しかし、檀家としての関わりはお墓を継ぐ人にとってともない、お墓を継ぐ立場にない従来の家制度では次三男などは分家し別にお墓を設けることとなり、女性は一般的には結婚すれば婚家の夫のお墓に入るものと考えられています。

つまり宗派に関係するのは家のお墓を継ぐ立場の人に限定されています。家のお墓を継ぐ立場にない人は、新たにお墓を作るか、配偶者のお墓に入ることが一般的で、従来の宗派の継承は故人が特に望まない場合は関係ない、拘束はないと考えられます。

(2) 戒名と宗派の関係
戒名はいつ必要になるかですが、本来戒名は仏教徒としての証として生前に授かるものです。しかし、その後日本の仏教では戒名が死後の名前となり、死後家のお墓があればその菩提寺の僧侶によって授けられてきました。
戒名を必要とするか否かの問題もありますが、一般的に戒名を授かる時期は次のような時になります。
①葬儀の時(通夜の時、仮位牌に使います)
②位牌に書く(四十九日の法要時本位牌に使います)
③お墓に刻む(四十九日の法要の納骨時)

戒名は一般的には上記の①の葬儀でお通夜までにいただきます。
間に合わない場合は、葬儀は俗名で行い、戒名は本位牌を用意する関係から四十九日の法要までに授かるようにします。

(3)法要と宗派との関係
四十九日の法要後の年忌法要でも寺院墓地ではお墓のある宗派の僧侶による法要を行うことになります。

葬儀で宗派を間違える場合と対策は?

葬儀で宗派を間違える場合とは、お墓が地方にあり、お墓参りにも行けないため菩提寺との付き合いがほとんどないときに起こる可能性があります。そこで、宗派を間違える、宗派がわからない場合とは、現実的にどのような状況で起こるかを考えてみます。

(1) 家のお墓を継ぐ立場にない場合
次三男、女性などで家のお墓を継ぐ立場に原則的にない人では、基本的に菩提寺の宗派との関係はなくなっても構わないと考えられます。これらの人は家のお墓に入らないためです。
お墓を自分もしくは遺族により新たに設けるか、女性で結婚すれば夫と一緒のお墓に入る可能性が高いためです。
これらの人の葬儀で遺族が宗派を間違えるケースとは、次三男などの父親・夫が生前に自分のお墓を準備することなく亡くなった時に、遺族が急な葬儀を行う場合にありうることです。多くは、父親・夫は従来の家のお墓の宗派に対する特別の信仰も関心もなく、菩提寺との付き合いもない場合です。

この場合、葬儀は家のお墓のある宗派でなくても構いません。多くは僧侶の派遣サービスを使う場合が考えられます。ただし、新たに設けるお墓が決まっていない段階なので葬儀の時に戒名を授かるのではなく、お墓が決まってからにします。寺院墓地に入る場合は新たに入る墓地の宗派の戒名に従うことになるためです。霊園墓地の場合はお墓に入る時点では宗派は関係ありません。

葬儀中に親戚から家のお墓の宗派と違うと言われた場合は、家のお墓には入らないので家の宗派とは関係なくお墓を設ける予定ですと答えれば良いでしょう。

(2) 家のお墓を継ぐ立場にある場合
家のお墓を継ぐ立場にある場合で遺族が宗派を間違える場合とは、家のお墓を継ぐ立場に父親や夫自身が、家のお墓が地方の実家近くにあるため滅多にお墓参りはせず家の菩提寺との関わりも薄い場合があります。その上で父親や夫が急逝した場合も考えられます。
その場合は、家のお墓に入るのか、家のお墓には入らずに新たにお墓を設けるのかにより対策は異なります。

①家のお墓に入る場合
故人が家のお墓に入りたいと希望していた場合、もしくは故人の遺志は不明でも遺族がそれを望ましいと思う場合は、菩提寺と相談し家のお墓に入れてもらいます。その場合は、すでに宗派が異なる僧侶により戒名を授かっている場合は戒名のつけ直しになります。また、四十九日の法要は菩提寺で行いそこで納骨もすることになります。檀家としての関わりが継続します。
ただし、今までお墓を継ぐ立場にあっても、故人が檀家としての付き合いは薄いため毎年お墓の管理にためのお布施などをはらっていたかどうかは確認する必要があります。不明な場合はお寺に聞いてみるのも良いでしょう。

②家のお墓には入らずに新たにお墓を設ける場合
家の墓が地方で遠くお墓参りもできないなどの場合は、家の墓には入らずに住まいの近くに新たにお墓を設ける場合もあります。その場合は、新たに入るお墓の状況により異なります。霊園墓地ではお墓に入る時点では宗派は関係なく、寺院墓地の場合はその宗派によるのが基本です。

ただし、近年ではお墓を継ぐ人がいない時代となり、墓地と墓石のない納骨堂や墓地も墓石も位牌も置かない土に埋葬する樹木葬などが増えてきています。その場合は宗派による制限が薄くなり、霊園墓地では当然ですが、寺院墓地でも宗派にはこだわらず新たに檀家になる必要はない形態が増えてきました。その場合は自分で求めない限り宗派との関係は必要なくなります。

家のお墓を実質的に継ぐ人がいなくなった場合、菩提寺がどのように対応するかですが、お墓の年間管理費用を請求せずにそのままになる場合もあるかもしれませんが、連絡先が分かる場合は遺族にお寺が年間管理費用を請求してくる場合もありえます。毎年継続的になる場合は負担と考え、墓じまいを検討することもでてきます。
墓じまいで先祖の遺骨も入っている時では、遺骨を引き取り新たに設けるお墓に移す場合と、先祖の遺骨は菩提寺の合同墓、合祀墓に入れてもらう場合があります。遺骨を引き取り新たに設けるお墓に移す時で新たなお墓の宗派が異なる場合は、先祖の遺骨も宗派替えとなりますが、今までの戒名はどうなるかは新しいお寺との相談になります。また、宗派に関わらない霊園墓地では今までの戒名は継続されます。

葬儀中に親戚から家のお墓の宗派と違うと言われた場合ですが、家のお墓は遠くて墓参りにいけないので、お墓の引越しを考え新たに家の近くにお墓を予定で、宗派は変わってしまいますと答えれば良いでしょう。

葬儀前に宗派の間違いに気づいた場合

家のお墓に故人を入れる場合で、葬儀前に宗派の間違いに気づいた時僧侶派遣サービスを使った場合は宗派の変更を伝えます。菩提寺とは異なる近隣のお寺に依頼した場合はお詫びをしてキャンセルをします。

新たにお墓を設ける場合には宗派の縛りは基本的にはないので、葬儀を依頼した宗派で葬儀を行い、葬儀では戒名は授けてもらわずに俗名で行い、新たなお墓が決まってから寺院墓地であればそのお寺の宗派で戒名を授けてもらうのが適切です。また、こだわりが特になければ、葬儀の時の宗派のお墓を探しても良いでしょう。

宗派にこだわらないお墓と戒名、法要についての考え方

(1) 霊園墓地の選択
霊園墓地は、宗教・宗派不問ですので、今までの家の宗派にこだわらずにお墓を設けることができます。
戒名については不要と考えることもでき、その後も無宗教でいくという考え方もできます。法要についても、年忌法要を行うのかどうかも遺族の自由です。法要とは僧侶を招いて読経してもらうことです。その場合は、戒名を授けてもらった場合はその宗派から僧侶を招く方法があります。

(2) 宗派不問、入檀不要の寺院墓地と永代供養墓の選択
お墓の承継者のいなくなる時代で増えてきたのが納骨堂と樹木葬です。先述したように、寺院墓地の納骨堂では宗派不問でかつ新たに檀家に入る必要もないところがあります。樹木葬では、遺骨を地下に埋葬するため個別の空間でのお参りもなく、個別の法要も行われません。
戒名の必要性も位牌は置かれませんので、自宅に置かれた位牌の中でのみ使われます。

永代供養という家族に代わってお寺が供養してくれる形態が一般的でお墓を継ぐ人がいなくても安心です。また、規定の弔い期間以後、遺骨は合祀され他の人の遺骨と一緒に埋葬されます。

(3) 無宗教化、自然散骨の選択
実質的に多くの日本人は仏式の葬儀やお墓になっていますが、実質的には仏教信仰というよりは葬式仏教のしきたりに従っている状況でしょう。檀家制度から自由になっても良いはずです。
また、実質的に無宗教であれば、お墓は霊園墓地にし、戒名は付けず、僧侶を招いての法要については遺族が命日にお参りするなどでも構いません。
仏教の世界ではあくまでも手を合わせる対象はこれら本尊であり、故人ではありません。一方の無宗教の法要は宗教のように信仰対象となるものがありませんから、手を合わせる対象は亡くなった人(故人)になります。ですから無宗教の法要では故人の生前の写真や愛用品、もしくはお墓に向けて手を合わせるのが一般的です。

また、故人の遺骨を海に散骨するなどの自然散骨をする場合、お墓はないので無宗教・無宗派化となります。

もし葬儀で宗派を間違えていたらどうする?~まとめ

(1) 仏式葬儀と宗派の関係
仏式葬儀において宗派が問題になるのは、家のお墓、戒名、その後の法要に関するものです。新たに故人及び遺族がお墓を作る場合は、今までの家の宗派の関係はあまり問題にはなりません。

(2) 家のお墓と宗派の関係
宗派に関係するのは家のお墓を継ぐ立場の人に限定されています。家のお墓を継ぐ立場にない人は新たにお墓を作るか、配偶者のお墓に入ることになり、従来の宗派は故人が特に望まない場合は関係ないと考えられます。

(3) 戒名と宗派の関係
戒名は宗派により異なります。一般的に戒名を授かる時期は葬儀の通夜の時になります。宗派を間違えたと気づき葬儀までであれば、戒名を頼まない方法があります。寺院墓地であれば、入るお墓と一致する宗派の戒名を授かるようにします。

(4) 家のお墓に入る場合で、葬儀の宗派を間違えた時
故人が家のお墓に入る場合で、遺族が葬儀の宗派を間違え、葬儀の時に宗派が異なる僧侶により戒名を授かっている場合は、戒名のつけ直しになります。また、四十九日の法要は菩提寺で行いそこで納骨もすることになります。

(5) 家のお墓には入らずに新たにお墓を設ける場合
家のお墓を継ぐ立場の人で家のお墓に入らない場合は、新たにお墓を設けることになり、1つは、葬儀の時の僧侶の宗派のお寺でお墓を設ける方法があり、2つには、お墓に入る上では宗派不問の霊園墓地もしくは寺院墓地でも檀家に入らなくても良い納骨堂などに入る方法があり、3つには、新たな寺院墓地に入りその寺院の宗派に変わる方法があります。

戒名については葬儀の時の僧侶の宗派のお墓を設ける場合でも、宗派不問の霊園墓地でもそのままで構いません。新たな寺院墓地に入りその宗派に変わる場合では戒名の付け替えが必要と考えておくべきでしょう。寺院墓地でも檀家に入らなくても良いという場合は、他宗派の戒名を受け入れるかどうか相談が必要です。寺院により対応が異なります。

仏教の宗派の問題は、檀家制度により個人の信仰というよりも家のお墓の問題になってしまいました。逆に言えばお墓次第で菩提寺の宗派は関係なくなります。
宗派の特徴では、浄土真宗では戒名はなく、法名という名前で生前に信徒としての名前を授かることを推奨はしていますが、戒名と同様に死後の名前となっている実態があります。また、浄土真宗では人がなくなると誰でも阿弥陀如来の力で往生できるとされ、教義上位牌や塔婆を作らない点が他の宗派と異なります。