父が亡くなり自筆の遺言書を発見!

遺産問題のトラブルを避けるために必要な遺言書

親が亡くなった後、特に男性が亡くなった場合は、残された家族によって遺産相続の問題が発生することがあります。
遺産相続でトラブルにならないためには、どんな準備が必要なのでしょうか。

例えば、父が亡くなった後に、自宅で自筆の遺言書が見つかったらどうしたらよいのでしょうか。
自筆の遺言書には、法的な効力はあるのでしょうか。

その場ですぐに見て良いのか、その遺言書に必ず従わなければならないのかも、突然のことではわからないでしょう。

遺言書についてしっかりとした情報を知らなければ、遺言書が無効となる可能性もあります。
亡くなった人の前で、醜い相続争いを起こしたくはありません。

そこで今回は、法的にも有効な遺言書の書き方や、残された家族の相続の方法について解説していきます。

遺産相続とは

父親が亡くなった場合、父親が残した財産は、配偶者である母親と子で分けることになります。
その際、母親が1/2、残りの半分を子の数で均等に分ける、というのが法律的に認められている「法廷相続」なのです。

父親が「現金」だけを残しただけなら、シンプルに分けることが可能ですが、現実的には家や土地、株などの財産、他にも相続の対象になるものがたくさんあります。

財産の中には、価値のある絵画や美術品、車、固定電話の加入権なども含まれます。

逆に、父親が支払いをしていないクレジットカードの引き落としや、ローンなどの残金も相続とななってしまうのです。
いわゆる「負の遺産」「マイナスの財産」と言われます。

さらに、会社を経営していた、土地を持っていた、農業をやっていたということになると、全ての財産を把握し、それを分けることになります。

父親があらかじめ「遺言書」を残している場合、遺言書の書き方や管理方法が正しければ法定相続よりも有効になります。
しかし、その際父親がしっかりと自分の財産をすべて把握していることも必要です。

以下では「正しい遺言状の書き方」また「書いた遺言書の管理」について、見ていきましょう。

遺言書を作る必要性とメリット

遺言書を作成する人の所有しているものによって、遺言書を書くときの条件も異なってきます。
持っている財産が、銀行残高と現金、持ち家だけの場合は自筆で作ることも可能です。

このときは、自分が持っている財産がわかるものを全て机などに並べて、一つひとつ確認しながら作成していくと良いでしょう。

残された家族たちの関係が良い場合は「残された家族に任せる」という方法もあります。
しかし、家族関係が複雑な場合は、きちんと遺言書があることで後のトラブルを避けることができます。

例えば、息子や娘家族と同居、二世帯住宅で世話になっている場合は、他の子と均等に残すことが難しい場合も考えられるでしょう。
このような場合は、あらかじめ、残された配偶者や、子への配分について明記しておくことが大切です。

口頭で同居の家族を優先すると、姉妹仲が良くしっかりと二人で話し合っていても、その配偶者から申し立てが出る場合もあります。
また、口頭では確信性がないため「言った、言わない」のトラブルも考えられます。

兄弟姉妹間、残された配偶者についてなどのトラブルを避けるためにも、遺言書を作っておくことは大切です。
遺言書によって、自身の意図しない相続が行われないように、準備をすることも必要です。

残された家族がトラブルを起こさないためにも、また、自分自身後悔しないためにも遺言書の作成は重要なことなのです。

正しい遺言書の作成方法

遺言書には、公的に有効な作成方法が決められています。
まずその前に、遺言書にはどのようなものがあるのかを知っておきましょう。

●公正証書遺言…公証人役場で、公正証書として作成します。
●自筆証書遺言…すべて自分で作成し、裁判所の検認手続きが必要です。
●秘密証書遺言…内容を秘密にしておきたい遺言書を作成するときに有効で、また裁判所の検認手続きが必要です。

以上のように、遺言書は3種類の作成方法があることがわかります。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言書を作成したい人が内容を公証人に伝え、公証人が作成します。

公証人役場に行くときは、自分が持つ土地や株、会社や農地、農機具など自分名義のものを全てそろえる必要があります。
相続の対象や対象外なのかわからない場合は、公証人に教えてもらいながら判断をすることができるため、確実な方法と言えるでしょう。

●「メリット」
専門家の公証人が作成、または公証人と一緒に作成するため、紛失や不備での無効、変造の心配がありません。
全文を本人が書く必要がないため、字を書くのが面倒、何を書けばいいかわからない、という人にもおすすめの方法と言えるでしょう。

保管場所は公証人役場となるため、自分で間違って紛失することがなく安心です。
裁判所の検認の必要もなく、手続きを専門家に任せることができるため、自分で調べるなどの手間がないというメリットがあります。

●「デメリット」
公証人が一緒のため、内容を秘密にすることができず、公証人への手数料として費用がかかります。
また、手続きが細かく、公証人役場に行く、公証人との話し合いを行う、など時間の制約があります。

残す財産が多いほど、手数料が高くなり、100万円以下の場合は5000円と比較的低額でお願いすることができます。

公証人にお願いする場合も、戸籍抄本や住民票など遺言書に必要なものは、自分でそろえるか、手数料を支払って司法書士などにお願いする必要があります。
公証人役場での手続きの時間が、平日の9時から17時と限られているところが多く、時間を取ることが難しいということも挙げられるでしょう。

●「作成方法」
①公正証書遺言では、公証人1名、証人2名が必要です。
公証人の他に、成人の証人をお願いしますが、証人としてお願いできるのは遺産を相続する立場ではない人になり、相続人の配偶者、血族や血族の配偶者、推定相続人は証人になることはできません。
2名の証人が見つからない場合は、公証人が用意しますが、その場合は有料となります。

②公証役場にお願いする前に、自身が持つ財産をすべて把握することが必要です。
遺言状を作るためには、他の方法を選択する場合でも土地や建物、現金、口座の残高など全ての財産を把握しておきましょう。
あらかじめ、一定の手続きや書類の収集をしてから、公正証書遺言をお願いしましょう。

③遺言状は、代筆やパソコンで作ることはできません。
必ず自筆、または公証人が本人の目の前で作成したものになります。
そこで、公証証書遺言の場合は、本人がそろえた財産を確認しながら、本人の言葉に合わせて公証人が作成していきます。

④出来上がった遺言書は、誤りがないかを確認し、それぞれが署名、捺印します。
そして、公正証書遺言は公正証書として公証役場に保管されます。
公正証書遺言による遺言状を確認するときは、原本ではなくコピーを公証役場が発行することになります。
原本は本人が亡くなったときまで触れることができないため、本人の意志のない不正な変造ができないようになっています。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、本人が直筆で書き、本人が保管する遺言書です。
しかし法律の改正に伴い、令和2年7月10日より法務局に保管することができるようになりました。
これにより、自分の家に保管する必要がないため、安全に保管することが可能となっています。

また、近年遺言状の書き方の本やサイト、遺言書キットというものもあるため、自分で文字や文書を書くことが可能な人におすすめの方法と言えるでしょう。
一般に自筆の遺言状というと、自筆証書遺言をイメージする人が多いことでしょう。

●「メリット」
自筆証書遺言のメリットは、費用がかからないということです。
証人も不要なため、自分の意志と判断で書くことができ、自分だけが内容を知っているため、何を書いたかということを誰かに知られることもありません。

いつでも自分の都合に合わせて書くことができるため、公正証書遺言よりも簡単で、書き方を間違えなければ、何度でも書き直しをすることもできます。

●「デメリット」
手軽に作ることができる自筆証書遺言ですが、必ず裁判所の検認が必要です。
そこで、書き直すたびに裁判所の検認を受けるため、書き直しができるといってもやはり手間はかかります。

また、内容に不備があると遺言状そのものが無効になってしまうことがあります。
また、間違ってしまったときの訂正の方法が複雑で、面倒という点もあります。
正しく作るには、遺言状作成キットを利用すると良いかもしれません。

保管による紛失や変造、隠匿が問題になっていましたが、令和2年4月から法務局に預けることができるようになったため、不安がある場合は法務局に保管をお願いしましょう。

自筆証書遺言は、全文「自筆」であることが最も大切な条件です。
代筆やパソコンなどで作ることはできないため、手が震えて字が書けない、字が苦手で面倒、と文字を書くことに安定感がない人にはおすすめできません。

●「作成方法」
①公正証書遺言と同じく、自身の財産を一覧表などにまとめます。
対象になるのは、預金口座、持ち株、年金、土地や建物の権利書や自治体から届く固定資産税の支払い証明、固定電話の権利書、車の車検などです。
このほかにも、高額な美術品や宝飾など現金化が可能なものは用意をしておくことをおすすめします。
古書や着物の価値があると思われる場合、不明なものは鑑定書などを調べておくと良いかもしれません。
以前は、こういったもの全部を遺言書に全文の中に書くことが定められましたが、平成30年の民法の改正により、財産目録については自筆でなくても構わず、パソコンなどで作成し、添付してもよくなりました。

②自筆証書遺言は、公証人や証人が必要なく、自分一人で書くことができます。
しかし、書き方が良くわからない、間違いや不備が心配という場合は「遺言書キット」を書店で購入し、作成しても良いでしょう。
キットを使用しない場合は、簡単に消えないペンときちんとした紙を用意します。
また、訂正などが複雑なためしっかりと下書きをして、清書すると良いでしょう。

③遺言書を書くにあたり、民法第968条第1項では、自筆証書遺言をする場合には、遺言者が「遺言書の全文、日付及び氏名を自書(自筆で書くこと)し、これに署名捺印を押さなければならないものと定めています。
しかし、平成30年の改正によって新設された同条第2項では、自筆証書によって遺言をする場合でも財産目録を添付することで、全文自筆で書かなくても良いことになりました。
ここでのメリットは、訂正をするとき、再度すべてを書き直す必要がなくなったことです。
ただし、遺言書を作成する人は、財産目録の各頁に署名捺印が必要となります。
署名をする量が増えた、というデメリットがありますので、相続者の数や項目の種類、数によって判断すると良いでしょう。

④書き終わったら、書いた内容の不備や漏れがないことを確認します。
「日付」「署名」「捺印」を忘れないことが大切です。
相続する相手は、妻や子、だけでなく「名前」も明記し、曖昧な表現も使わず、必ず「相続する」と書くことが重要です。
銀行の口座番号、登記簿の登記番号、残す土地や建物の正式な住所などにも不備がないようにします。
鑑定書があるものは、鑑定書に書いてある番号や名称を正しく書きましょう。

⑤そのまま家庭に保管しても良いですが、できれば法務局で保管をお願いすることをおすすめします。
法務局に預けることで、残された家族が土地や建物の相続、名義変更の際に「遺言書」の存在を知ることができます。
遺族は、自筆証書遺言を勝手に開封することはできません。
必ず家庭裁判所に遺族が集まり、内容を確認することになります。

⑥検認を終えると家庭裁判所から「検認済証明書」が発行されます。
検認済証明書をもって「きちんと裁判所で検認を受けた遺言書」となり、遺言書に基づく相続となります。
このとき「法務局」に預けられた自筆証書遺言は、家庭裁判所による検認の必要もありません。
こういった点でも、自筆証書遺言は作成をした後、法務局で保管をお願いすることが、一番良いのではないでしょうか。
相続にあたる親族は、全員「戸籍謄本」「印鑑証明」が必要であり、場合によっては「委任状」「住民票」の提出を求められます。
また、亡くなった父親の「原戸籍」というものも必要で、本人が用意していない場合は、遺族が用意しますが、戦時中原戸籍が失われている場合は、それに変わるものを申請することができます。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、公証人1名、証人2名と共に本人が作成します。
必ずしもではありませんが、秘密を守るためにも本人が望ましいとされています。

●「メリット」
自筆ではなく代筆やパソコンでの作成も可能となっているのは、秘密証書遺言だけになります。
本人の意向を活かしたい、他の家族には知られたくない、という人におすすめの作成方法です。
遺言者が封をして、公証人が封紙に署名をするため、絶対に内容を誰かに見られたり、変造されたりすることはありません。

有償ですが、証人2人も公証役場でお願いすることができるため、知人に信用を置ける人がいない、親族や知人が相続人になってしまう場合などに良い方法となります。
作成をするのは自宅でできる、という点もメリットでしょう。

●「デメリット」
公証役場では内容確認や保管ができず、自筆証書遺言と同様に、自分で書き、自己管理となります。
公証人が封をしますので、変造の心配はありませんが、書き方の不備や紛失の可能性はあります。

紛失の心配がある人は法務局に保管をお願いすると良いでしょう。
この点も自筆証書遺言と同様に、自己管理をすると遺族は家庭裁判所で「検認手続き」が必要となります。

作成時は自宅で、本人が作るため不備がある場合もあります。
公証人に見せる前に、不備がない状態にしておかないと、亡くなった後に不備が見つかり、無効となってしまう場合もあります。

●「作成方法」
①遺言状の作成までは、自筆証書遺言と全く同じです。
異なる点は、書いた後の遺言書を公証役場に持って行き、そこで公証人と証人2名、本人の計4名の目の前で封をします。
封をすることで、他の人が内容を見たり変造したりすることができなくなります。
また、このとき公証人は内容を確認しないため、公証人にさえ遺言書の内容が知られることはありません。

②封をした後、本人が亡くなった後の開封も自筆証書遺言と同じ流れです。
自宅に保管されていたものは、家庭裁判所によって検認手続きが必要となり、法務局に預けてあったものは、検認手続きを省くことができます。

父親の自筆の遺言書を発見したときの遺族の対応

以上のように、自筆の遺言状の作り方にもさまざまな規則があることがわかりました。
もし、父親が亡くなったとしたら、残された家族はエンディングノートや遺言書、登記簿謄本などを見つけて、今後の話し合いをすることになるでしょう。

その際、まず一番に有効なものは「不備のない」遺言書です。
遺言書が法務局に預けられている、公証役場に預けられている場合は、その場で手続きを行い、内容を開封、不備がなければ遺言書の通りに、遺産相続を進めることになります。

不備がなければ、自筆の遺言書は法的効力を持つことになります。

自宅に保管されていた場合は、家庭裁判所に持って行き、遺族全員の前で検認手続き、開封となります。
そのため、父親の死後に自筆の遺言書を自宅で見つけた場合、勝手に開封することは絶対にやめておきましょう。
法律では五万円以下の罰金が課せられると定められているため、注意が必要です。

仮に家で自筆の遺言書が発見されたとしても、一人で勝手な判断はせず、家族や親族と相談をし、適切な対応ととることが大切です。