特別養護老人ホームとは?

~その特徴と入所方法や要件まで詳しく解説~

特別養護老人ホームの入所難易度は、入所待機者数は50万人以上、1年以上の待機期間も当たり前で非常に高い状況が続いています。ご承知のように特別養護老人ホームは有料老人などと異なり公的な管理で行われています。そのため費用は収入に応じて定められる方式となっており安く抑えられていますが、入所居に関しては基準があります。特別養護老人ホームの特徴、タイプ、入所方法、入所要件、費用などを紹介します。

特別養護老人ホームについて

(1) 特別養護老人ホームとは
特別養護老人ホーム(略称:特養)は、地方自治体や社会福祉法人が運営するいわば「公的な老人ホーム」で介護保険法では「介護老人福祉施設」とも呼ばれます。
老人福祉法によると、特別養護老人ホームは以下のように定義されています。
「65歳以上の者であって、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものを入所させ、養護することを目的とする施設」(老人福祉法第20条の5)

寝たきりや認知症などで常時介護が必要になり、自宅での生活が難しい方が入所できる施設で、食事、入浴、排泄といった生活全般にわたる介護を24時間受けることができます。また、原則として65歳以上・要介護3以上という入所条件があります。

(2) 特別養護老人ホームの特徴
①費用の安さ
特別養護老人ホームの最大の利点と言えるのが、その費用の安さです。民間型の老人ホームと違い入居一時金は不要で、月額費用も標準的に10万円前後から10万円台程度で済むのが一般的です。

②重度介護への対応可能
要介護3以上が入所基準のため重度の要介護者が入所するという性格があります。そのため、手厚い介護が受けられます。

③終の棲家の可能
長期入所が可能なので、高度な医療ケアが必要にならないまでは、人生の最期まで住み続けることができます。

(3) 特別養護老人ホームの入所要件
入所要件では次のような点があります。
①65歳以上で要介護3以上の高齢者
②40~64歳で、かつ特定疾病(がん末期や脳血管疾患、関節リウマチなど)が認められた要介護3以上の方
③特例により入居が認められた要介護1~2の方。特例の内容には次のような状況があります。
a. 認知症で、日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られる。
b. 知的障がい・精神障がい等を伴い、日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られる。
c. 家族等による深刻な虐待が疑われる等により、心身の安全・安心の確保が困難である。
d. 単身世帯で、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分である。
などがあり、居住環境や既往歴などによって入居が認められるケースもあります。

ただし、医療処置を必要とされていて施設での対応が難しい方は、優先順位が高くても入所できない場合があります。感染症や腎臓の人工透析が必要な方は入所できない可能性が高くあります。

また、後述する「地域密着型特別養護老人ホーム」のタイプでは、設置されている市区町村の居住者のみの要件があります。

(4) 特別養護老人ホームの入所方法
施設への申込は地方自治体別に、地域内の特別養護老人ホーム施設ごとに入所申込書に必要事項を記入の上、介護保険被保険者証の写しを添付し、入所(入居という地域もあります) を希望する施設へ直接申し込みます。「地域密着型特別養護老人ホーム」以外では住まいの地域以外での申し込みも可能ですが、一般的に申し込みの倍率が高いため市区町村により地域住民優先の方針があるところもあると思われます。

①入所申込方法
a. 入所を希望する施設から、訪問や郵送で申し込み書類を入手します。
b. 入書申込書をはじめ、介護保険証のコピーなど提出する書類をそろえます。施設や市区町村によっては、介護認定調査票の写しや健康診断書なども必要です。
c. 必要な書類をそろえたら、入所を希望する施設に直接申し込みます。

なお、施設や市区町村によって申込書の記載内容や必要な書類が異なる場合があります。

②申し込み後の流れ
a. 審査
地域ごとに定められた指針に沿って、サービスを受ける必要性が高いかどうかの判断がされます。「入所調整基準」「優先入所基準」「特別養護老人ホームへの入所指針」などと呼ばれています。
b. 優先順位通知が届く。
市区町村により異なりますが、入所調整基準に基づき3カ月に1度などの一定の期間で入所希望者の状況を知らせる通知が届きます。しかし優先順位が高くても、審査基準の判断により入所が保証されているわけではありません。優先順位通知はおよその目安として捉えると良いでしょう。
c. 入所候補者になり面談を受ける。
入所候補者になると、その施設から申込者に直接連絡(電話)がきます。その後面談を受けて、健康診断書の提出を行います。
d. 入所の可否が決まり、入所
面接と健康診断書の後、施設で入所の可否を決める会議が行われ、最終決定が下ります。 入所が可能という判断が下ると、ベッドが空き次第入所になります。
e. 契約書・入所
契約書を交わし、重要事項の説明を受けて、施設での生活が始まります。

(5) 費用
入居一時金は必要ありませんし、月額費用も標準では10万円前後から10万円台で済むのが一般的です。ただし、収入により数万円から20万円近くまで差があります。また、費用の負担軽減措置が設けられており、年金などの所得が少ない方は住居費や食費の減免受けることができます。

月額費用として計上されるのは、
・介護サービス費(「介護老人福祉施設入居者生活介護」の自己負担分)
・住居費、水道・光熱費、食費、生活費など。
住居費、いわゆる部屋代は、居室の形態によって異なり、「相部屋(従来型多床室)」は約10,000円、「従来型個室」は約40,000円、「ユニット型個室」は50,000円程度が目安です。ちなみにおむつ代も施設サービス費に含まれています。
※介護サービス費では個人により介護保険の自己負担率で1~3割と異なります。介護保険の支払上限額を超えた分の費用については制度規定で払い戻しがあります。

特別養護老人のタイプと形態

(1) 特別養護老人ホームの居室タイプ
現状の居室のタイプについては次の3つがあります。最近新設されているのはユニット型個室のタイプです。

①多床室…ユニットを構成しない相部屋 人数は1人から4人程度です。
2000年頃まで居室形式として主流だった従来型多床室は、ベッドをカーテンなどで仕切っただけのもので、入所者一人ひとりのプライバシーが尊重されていないと問題視されるようになりました。そこで、2001年に新たに制度化されたのが、ユニット型です。

②従来型個室…ユニットを構成しない個室

③ユニット型個室…ユニットを構成する個室
ユニットとは、少数(10床程度)の個室と、個室に近接して設けられた共同生活室によって一体的に構成される場所のことです。
入所者が食事をとったり団欒したりする「共同生活室」を中心に個室が配置されています。
ユニット型はプライバシーがしっかりと確保されながらも、共同生活室を中心に入所者や担当職員が集まる場所として使うことで、家庭の生活に近い環境で過ごすことができます。
国の方針としてもユニット型の普及を進めており、現状では約6割の施設がユニット型個室を採用しています。

(2) 特別養護老人ホームの地域性の形態
特別養護老人ホームには、現状ではその地域性に応じて「広域型特別養護老人ホーム」「地域密着型特別養護老人ホーム」「地域サポート型特別養護老人ホーム」の3つの形態に細分化されます。
また地域密着型特別養護老人ホームは、さらに「サテライト型」と「単独型」に分けられます。

①広域型特別養護老人ホーム
定員が30人以上で申込者の居住地域に制限がない、最も一般的なタイプの特養です。

②地域密着型特別養護老人ホーム
定員が29人以下で、設置されている市区町村の居住者のみが入所できる特養です。
地域密着型特別養護老人ホームは2006年に制度化され、サービス内容は従来の広域型特養と基本的には変わらず、生活援助と身体介護を中心としています。少人数定員のため家庭的な雰囲気のもと、住み慣れた地域で生活できるところが特徴です。

a. サテライト型特別養護老人ホーム(サテライト型居住施設)
地域密着型特別養護老人ホームのひとつ「サテライト型」は、広域型特別養護老人ホームなどの本体施設と連携を取りながら、本体施設から原則20分以内の場所で運営される施設です。
本体施設と適切に連携できる場合は、医師・栄養士・機能訓練指導員・介護支援専門員を置かなくてもよいなど、人員基準や設備基準が緩和されます。

b. 単独型特別養護老人ホーム
地域密着型特別養護老人ホームのひとつ「単独型」は、その名の通り本体施設を持たずに単独で運営されている施設です。設備や介護サービスは広域型特別養護老人ホームと同じですが、共同生活スペースを中心に個室が配置されているユニット型の居室タイプが多いところが特徴です。
またサテライト型同様に、広域型特別養護老人ホームよりも人員や設備基準が緩和されています。

③地域サポート型特別養護老人ホーム
2013年に開始した新しい制度で、在宅介護を受けている高齢者に24時間・年中無休で見守りや援助を提供する特別養護老人ホームです。
主なサービス内容としては、生活援助員による日中の巡回訪問や安否確認、夜間緊急時の看護師の派遣などです。現状として、地域サポート型特養を実施している自治体の数は少なく限られています。

特別養護老人ホームの今後

介護する側もされる側も高齢化が進む日本においては、ますます自宅での介護は難しくなっています。だからこそ、特別養護老人ホーム=特養は、今後ますます重要視される介護施設であると言えるでしょう。しかし、今後の入所にはいくつかの問題点があります。

(1) 介護者の人員不足
もともと介護全般で介護職員の不足が深刻です。特別養護老人ホームでも同様で、居室が空いていても介護職員が不足していて入所を受け入れられない場合も多くあります。特にコロナ禍では人員不足はより深刻化しています。介護職員の報酬などの改定や働き方改革が必要です。

(2) 施設不足
入所ニーズに対して施設自体の不足も深刻です。大都市部では敷地の不足もあり、東京都杉並区では区内だけではなく、静岡県の南伊豆地域に特別養護老人ホームを新設するなどの新しい展開を模索しています。

(3) 医療体制
特別養護老人ホームは基本的に住居であり、たとえ医師が常駐していても医療行為はできません。腎臓の人工透析が病院で行われるにしてもそのような症状にある人の入所自体を断るケースがほとんどです。もちろん医療行為が必要な人は退所しなければなりません。しかし、急性期の患者ではない高齢者の受入病院も少なく、介護施設と療養型病院の連携が求められます。

特別養護老人ホーム入所のためには

(1) 住まいの地域の特別養護老人ホームの状況について調べておくこと。
入所を希望する人の住まいのある地域の特別養護老人ホームの状況について調べておくことが必要です。施設数の充実度や待機状況などです。地域により差があります。大都市部では一般的に高齢者の絶対数も多く倍率は高いです。また、大都市の中でも差があります。

(2) 特別養護老人ホームの入所要件は基本的に要介護3以上であること。
入所要件では65歳以上で要介護3以上であることが基本的に必要です。かつ入所の必要性に高い人が優先されます。先着順ではありません。

(3) 特別養護老人ホーム申し込み後の待機期間をどうするか?
特別養護老人ホーム申し込み後の待機期間を施設で過ごすには、民間の有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームなどがあります。それらについても調べておくことが必要です。

まとめ

(1) 特別養護老人ホームとは
特別養護老人ホーム(特養)は、地方自治体や社会福祉法人が運営する、いわば「公的な老人ホーム」で介護保険法では「介護老人福祉施設」とも呼ばれ、老人福祉法では「65歳以上の者であって、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものを入所させ、養護することを目的とする施設」としています。

(2) 特別養護老人ホームの特徴
特別養護老人ホームは公的な管理のある介護施設で次のような特徴があります。
①費用の安さ
②重度介護への対応可能
③終の棲家の可能

(3) 特別養護老人ホームの入所要件
入所要件では次のような点があります。
①65歳以上で要介護3以上の高齢者
②40~64歳で、かつ特定疾病(がん末期や脳血管疾患、関節リウマチなど)が認められた要介護3以上の方
③特例により入所が認められた要介護1~2の方。

(4) 特別養護老人ホームの入所方法
施設への申込は地方自治体別に、地域内の特別養護老人ホーム施設ごとに直接申し込みます。住まいの地域以外での申し込みも可能ですが、地域住民優先の施設もあります。

(5) 特別養護老人ホームの入所判断
申し込み後審査があり、地域ごとに定められた指針に沿って、サービスを受ける必要性が高いかどうかの判断がされます。「入所調整基準」「優先入所基準」「特別養護老人ホームへの入所指針」などと呼ばれています。申込者には優先順位通知が届き待機状況がわかります。

特別養護老人ホームの3つのポイント

(1) 特別養護老人ホームはすぐには入れないこと。
特別養護老人ホームへの人気は高く、申込者数が定員よりも多いため待機人数が多くすぐには入れません。要件に合えば申し込みをしておくことも必要です。

(2) 特別養護老人ホームの空き状況についての入所は先着順ではないこと。
特別養護老人ホームの入所には基準があり必要度の高い人が優先されます。

(3) 特別養護老人ホームの空き状況については差があること。
実際には特別養護老人ホームの空き状況について差があります。地方などでは空きがあるところもあります。現在の住まいから離れてでも良い場合は検討する意味があります。また大都市部でも差があるので情報収集が必要です。大都市部の中央部で住民が少ない地域も穴場である場合があります。

特別養護老人ホームの費用も実際にはかなり差があります。例えば新設のユニット型個室ではかなり高額な費用の所もあり申込者が少ない場合もあります。また、逆に古い老朽施設は人気が薄く入所しやすい場合もあります。そのため、施設により申し込み前に見学を義務付けているところあります。施設が老朽化していることを見て分かった上で、申し込みして欲しいという意図からです。