浄土真宗の法名について

~帰敬式と法名を授かる意味について~

浄土真宗の法名について

(1) 浄土真宗とは
浄土真宗は、親鸞聖人によって開かれた日本仏教の宗派です。本尊は阿弥陀如来で、空間や時間を問わず、いつでも救いの手を差し伸べてくれる仏さまとされています。そのため、浄土真宗の教えでは、阿弥陀如来を信じるだけで浄土へ行ける「他力本願」が説かれています。「他力」とは阿弥陀如来がもたらす「はたらき」のことを指しています。そして「本願」は、阿弥陀如来を信じている人を成仏させようという願いです。そのため、亡くなった人はすぐに悟りをひらいて仏になるといわれています。

(2) 浄土真宗の法名とは
浄土真宗の法名とは、浄土真宗の教えを依りどころとして、仏教徒としての自覚を持って生きる仏弟子の証としての名前です。戒律を守って仏教の修行を積むのが難しい人が、阿弥陀仏の教えを聞いて守る人に授けられる名前です。

浄土真宗には、戒律がないので受戒が存在しません。受戒の代わりとして、仏法をよりどころとして生活する証として法名を授けられ、仏教徒として生きる誓いを立てるものです。
法名は本来亡くなってから授かるものではなく、生きている間に授かります。阿弥陀仏の教えを守りながら生きていくことを誓うものであるためです。

法名というものは、浄土真宗に帰依した人の名前で、キリスト教で言えば洗礼して授かる洗礼名(クリスチャン・ネーム)のようなものです。
主に京都の本願寺で行われる後述する帰敬式(ききょうしき)を受けた人に対して、門主から授与されるものです。

(3) 浄土真宗の法名の基本的な考え方と他宗派の戒名との相違
浄土真宗の教えは、誰でも阿弥陀如来の本願を行えば極楽浄土へ往生できるものです。生前における社会的地位や修行の度合いによって、死後が決まるというわけではありません。信心を大切な要素としており、すべてのものが平等に浄土へ生まれるという考え方があります。
また、法名は、本来は生きている間に授かる名前です。そのため、帰敬式を執り行わずに亡くなられた方には、葬儀の前に法名を授ける帰敬式が行われます。

法名と関連するものに戒名がありますが、意味に明確な違いがあります。戒名は、本来は自力本願の教義に基づき、厳しい戒律に従って仏の道を歩み、戒律を守ることを誓う出家者が授かる名前です。大乗仏教や上座部仏教の両方で行われているものです。

戒律とは、自発的に規律を守りたい心の表れを意味する「戒」と、信条や規則を指す「律」を組み合わせています。仏教の戒律は、人々から非難を受ける行いや悪事を働く行いを禁じており、戒律を守らなければ地獄に落ちると教えている厳しい規範です。戒名を受けるのはとても重要であるとみなしています。

しかし、現実には日本の浄土真宗以外の他の宗派では、戒名の現実として、人が亡くなった時に葬儀などで僧侶から授けられるもので、あの世へいった時に俗名のままでは浄土へはいけないとし死後の名前が戒名として付けられています。本来の生前の信仰や戒律とは無関係なものになっています。

(4) 法名の形式
最初に、「釈(釋)」という字が置かれ、法号の2字と合わせた3文字で表されます。ちなみに、釈という字はお釈迦さまから取ったとされています。仏教が中国に伝わったころは、師が名乗る姓を弟子が自らの姓として扱っていましたが、その後、お釈迦さまの弟子である者は皆平等に釈を姓とすべきであるとされ、このことから、法名には釈の字がつけられるようになったと言われています。法号とは、戒名における狭い意味での「戒名」に当たる部分です。

法名の基本の形式は、「釈(釋)号+法号」となります。
岡倉天心の場合は、釋天心となっています。
浄土真宗での法名は3文字に収まることがほとんどで、必ずつける「釈(釋)」の後には、法号の2文字をつけ、この2文字が故人特有のものとなり、存命の頃の名前からとったり、宗派や信条に由来するものをつけたりします。

なお、法名では男性と女性で異なる付け方を取る宗派もあります。
浄土真宗本願寺派は、男女ともに「釈(釋)○○」ですが、真宗大谷派は、男性は「釈(釋)○○」、女性は「釈(釋)尼○○」としています。

また、院号をつける場合もあります。これは生前寺院に大きく貢献した人や、社会貢献に功績のある人が寺院からいただくもので頭に3文字が追加されます。有名人などでは多く見られます。松本清張の清閑院釋文張、向田邦子の芳章院釋清邦大姉などです。

(5) 法名を授けられる時
法名は浄土真宗の本山などで行う帰敬式で授けられます。戒名のように寺院の各僧侶が法名を授けるのではなく、あくまでも本山もしくは別院などへ本山から派遣された僧侶が行う本山の指導性が基本となっています。ただし、浄土真宗にも各派があり派により異なります。

浄土真宗の帰敬式について

(1) 帰敬式とは
帰敬式とは、主に浄土真宗の門徒になるための儀式のことで、原則として生きている間に執り行われます。ただし、死後葬儀の時に行われる場合もあります。髪を剃り落とす「おかみそり」を経て、法名を授かり、仏教徒としての誓いを立てて浄土真宗の門徒となります。現在では、髪を剃ることはせずに、髪にかみそりの刃を三度あてるだけで済ませます。そうすることで各種の欲望を断ち切り、仏さまの教えに向き合う決意を固めます。
帰敬式は、原則、宗派の本山で行います。

(2) 宗派による帰敬式
①浄土真宗本願寺派(西本願寺)の帰敬式
浄土真宗本願寺派では、本山の龍谷山本願寺(西本願寺)で毎日、朝昼の2回行っているほか、寺院からの要望によって別院や直轄寺院などで帰敬式を行うこともあるようです。またこの場合も本山から帰敬式を執り行う僧侶が、それぞれの寺院に出向き行います。

②真宗大谷派(ひがしほんがんじ)の帰敬式
真宗大谷派では、本山の真宗本廟(東本願寺)でやはり毎日、朝と昼に帰敬式を行っているほか、全国の所属寺でも行っています。お寺で大きな儀式がある際に行うなど帰敬式の日は定められています。

(3) 帰敬式の流れ
帰敬式の流れとしては、受付けで冥加金(礼金)を支払い、開始の時刻がきたら帰敬式が始まります。
・開式の辞(ことば)が述べられ、真宗宗歌を歌います。
・カミソリの刃をあてる剃刀の儀・執行の辞と続き、法名を授かる法名伝達が行われます。
・浄土真宗の門徒としての誓いの辞を述べたら、勤行へと続きます。
・仏をほめたたえる正信偈(しょうしんげ)、和讃、念仏、死者を供養する回向(えこう)を唱えます。
・門首・鍵役・住職などから法話をいただき、恩徳讃(おんどくさん)と呼ばれる和讃を斉唱します。
・閉式の辞をもって終了します。

(4) おかみそりの意味
おかみそりは、帰敬式で髪を剃り落とすことを指します。本来は髪を落として仏門に入りますが、出家をしない在家と呼ばれる人たちに対しては、髪を剃り落としません。カミソリの刃を髪にあてるところで止めています。

仏門に入るときに、髪を落としたり、髪に刃をあてたりする理由については、目に映らない3つの髻(もとどり)を捨てるという意味があります。髻は髪の束のことで、人には3つの髻があるといわれています。1つは利得を意味する「利養」、2つ目は名声という意味の「名聞」、そして3つ目は人よりも優れている・勝っていたいという「勝他」です。人は利益を欲しがったり、名声を求めたり、人と比べたりするやましい心を持つとし、おかみそりには、これらの心を捨てる意志が込められているのです。

(5) 帰敬式の参加方法
①参加申し込み
参加希望者は本山での帰敬式の受式願の申請の書類を自分で作成し、送って手筈を整えることができます。(インターネットでもダウンロードできます)
・式を始める30分ほど前に、式についての説明を受けます。
・指示にしたがって、帰敬式を進めます。

②帰敬式費用
浄土真宗に帰属して通常の法名をつけるだけなら、真宗本願寺派では、成人は10,000円、未成年は5,000円と一律で低額です。
なお、希望する法名をいただくことを法名の内願(ないがん)と言い、別途10,000円以上の内願法名懇志(こんし)の進納が必要です。法名の内願については、寺院の住職からの申請が必要となります。
ただし、浄土真宗は細かく宗派が分かれていることで、詳細は宗派により異なり確認が必要です。

宗派による帰敬式の法名授与の費用
・真宗本願寺派       成人10,000円、未成年は5,000円
浄土真宗の主要宗派のひとつで、西本願寺を本山としています。信徒は780万人以上、寺院の数は1万を超え最大です。
・真宗大谷派(東本願寺派) 21歳以上は10,000円、20歳以下は5,000円
大谷派は東本願寺を本山とし、本願寺派に次ぐ規模をもちます。徳川家康が当時の浄土真宗内部の分裂を利用し、浄土真宗の力を分散させる目的で生まれたと言われています。
・真宗興正派   10,000円
・真宗木辺派   10,000円

まとめ

(1) 浄土真宗の法名とは
浄土真宗の法名とは、浄土真宗の教えを依りどころとして、仏教徒としての自覚を持って生きる仏弟子の証としての名前であり、阿弥陀仏の教えを聞いて守る人に授けられる名前です。

(2) 浄土真宗の教義の基本
浄土真宗の教えでは、阿弥陀如来を信じるだけで浄土へ行ける「他力本願」が説かれています。「他力」とは阿弥陀如来がもたらす「はたらき」のことを指しています。
また、浄土真宗には、戒律がないので受戒が存在しません。受戒の代わりとして、仏法をよりどころとして生活する証として法名を授けられ、仏教徒として生きる誓いを立てるものです。

(3) 法名は生きている間に授かるのが基本
法名は本来亡くなってから授かるものではなく、生きているあいだに授かります。死者の名前ではありません。阿弥陀仏の教えを守りながら生きていくことを誓うものであるためです。

(4) 法名は帰敬式で授かる。
法名は帰敬式という浄土真宗各宗派の本山の帰敬式などで授かります。

(5) 法名の形式
法名の形式の基本は、まず、「釈(釋)」という字が置かれ、法号の2字と合わせた3文字で表され、釈(釋)号+法号となります。釋尊空などの形式です。
必ずつける「釈(釋)」の後には、法号の2文字をつけ、法号が故人特有のものとなり、存命の頃の名前からとったり、宗派や信条に由来するものをつけたりします。法号とは、戒名における狭い意味での「戒名」に当たる部分です。
また、一部に「院号+釈(釋)号+法号」というものもあります。院号は頭に付ける3文字です。

浄土真宗の法名についての3つのポイント

(1) 法名は生きている間に授かるのが基本であること。
浄土真宗の法名とは、浄土真宗の教えを依りどころとして、仏教徒としての自覚を持って生きる仏弟子の証としての名前です。そのため、法名は本来亡くなってから授かるものではなく、生きているあいだに授かります。また、戒名も本来の意味では出家者が生きている間に授かるものでした。

(2) 法名の背景となる浄土真宗の教義を知っておくこと。
浄土真宗の教えでは、阿弥陀如来を信じるだけで浄土へ行ける「他力本願」が説かれています。そのため、亡くなった人はすぐに悟りをひらいて仏になるといわれています。法名は仏の教えを聞いて守る人に授けられる名前です。

(3) 法名の基本は平等であること。
法名の基本は、最初に、「釈(釋)」という字が置かれ、法号の2字と合わせた3文字で表され「釋号+法号」となります。
男女別に法名を付ける宗派や位を示す位号というものを付ける場合もありますが、法名の平等性を主張しそれらを付けず平等とする考えも宗派によりあります。

浄土真宗は死者の平等性の意味で仏教の原点に近い要素を持っています。仏教もインド、中国を経てそれぞれの土着の宗教の要素が取り入れられ変化し日本に伝わってきました。そのうえで、日本で新たな宗派の開祖が現れ独自の教義が確立してきました。法名や戒名を通して単なる仏教のしきたりではなく、その教義についても理解すると良いでしょう。