失敗しない棺の選び方

~自分の希望がある場合は事前に準備が必要です~

日本で遺体を埋葬する際にどんな場合でも必要なのが棺(ひつぎ)です。火葬では棺ごと燃やしてしまうため棺は簡素なものが中心です。あまりこだわっていないとも言えます。また、棺については葬儀社任せであることがほとんどです。しかし、西洋の棺では大変装飾に凝ったものも多く、棺にも文化や宗教、そして、埋葬の仕方が深く関わっています。死生観を反映する棺の文化、棺の形態から選び方を紹介します。

棺について

(1) 棺とは
棺とは、遺体を納めて葬るための容器です。
同様の意味の字に「柩」があり、読みはいずれも「ひつぎ」です。音読みにすると棺は「かん」、柩は「きゅう」と読みます。棺では、遺体を納める儀式である「納棺式」や遺体が火葬場に向けて出発することを「出棺」といいます。また、柩では、遺体を運ぶ車の「霊柩車」で使われています。

(2) 棺の宗教文化
棺のあり方、棺そのものを用いるのかどうかは宗教による相違があります。
①ヒンズー教の葬儀
遺体は洗われた後、リンネルにくるまれます。儀式の後、遺体は棺に入れられることなく火葬されます。火葬は薪で燃やし、火葬後遺灰を集め川で撒きます。

②イスラム教
世界的にみて、イスラム教やキリスト教では、火葬を禁忌とする戒律を有する文化があります。キリスト教では死後の復活の関係でしょう。
イスラム教では、故人の遺体を洗ったあと、白のモスリンの布で遺体を包みます。木製の棺が用いられる場合もありますが、棺を用いずモスリンの布に包まれたままで土葬される場合もあります。

(3) 日本の棺の歴史
日本では庶民の間で棺が使われ始めたのは鎌倉時代からです。江戸時代に入り一般庶民の間でも棺の使用が普及します。埋葬は土葬が主流であり、場所を取らないようにするために身体を丸めて収める屈葬により埋葬するため、桶型の座棺が使用されました。
明治時代に入り、富裕階層の間で平型の寝棺が使用されるようになり、火葬場の普及と共に普及して行きました。しかし、十分な火力のある火葬場がなく土葬文化も継続し、棺も座棺が使い続けられました。その後、火葬場の技術・設備が進歩しましたが、現在のように十分な火力設備の整った火葬場が出来たのは昭和年代に入ってからです。

現状の日本の火葬場では、遺体を棺に納めた状態でないと火葬を引き受けてもらえませんので、棺は必ず必要なものとなります。

棺の選ぶときのポイント

葬儀社と打ち合わせをする時、棺を選ぶポイントには次のような点があります。

・故人の宗教を確認する。
・故人の身長、体重を確認する。
・棺の形状、材質などの種類を確認する。
・棺の値段を確認する。
これらを踏まえて、棺の選び方では次のような点があります。

(1) 棺のサイズを選ぶ。
一般的に、棺の基本サイズは6尺(180cm)とされていますが、故人の身長によって変わってきます。
棺桶のサイズを選ぶ時の目安は、身長+10〜15cmの大きさで選びます。
死後硬直により足の甲、指先まで伸びることがあるため、つま先立ちしたくらいの大きさを考慮します。
サイズの表記は尺で表記(1尺は約30cmくらい)されています。

(2) 棺の材質を選ぶ。
棺の材質は火葬に適したものとしては基本的に4種類あります。

①木棺
檜、もみ、桐をはじめとした天然木材を使ったものや、「フラッシュ材」と呼ばれる2枚のベニヤ板と芯材を貼り合せた加工板材を使ったものがあります。天然木材には、彫刻を施すことも漆を塗ることもできます。
フラッシュ材には、木目調などの柄をプリントした特殊な紙を貼りつけることもできます。フラッシュ材を使った棺はフラッシュ棺とも呼ばれ軽量なために現在はこれが主流になっています。

②布張棺
木棺の周りを布で巻いている棺です。布では色のバリエーションが豊富にそろっています。シンプルなものから、凝った刺繍をあしらったものまであります。

③エンバー棺
エンバーミング処置を施した遺体専用の棺です。故人との対面を想定してアクリル製の透明のふたが中にあります。エンバーミングとは遺体の保存のため防腐剤の注入や衛生処理、遺体修復などをする技法です。

④エコ棺
間伐材もしくはダンボールで作られている棺です。
近年の環境問題に対する関心の高さから生まれました。二酸化炭素の排出量が少ない、環境にやさしいといった特徴がうたわれています。ただし、価格は通常の棺と比べ割高となっています。

(3) 棺の形状を選ぶ。
棺の形状は、宗教・宗派によって決められていることもありますので、本人の宗教を確認します。

①箱型棺(キャスケット型棺・平棺)
最もシンプルで、蓋部分は平らで、長方形の形状で「キャスケット型」「平棺(ひらかん)」とも呼ばれます。日本ではこれが中心です。

②山型棺
蓋部分が台形に盛り上がっている形状のもので、箱型よりも少し装飾性のあるデザインです。キリスト教ではこの形状のものが多く使われます。

③船型棺
頭部が広く、足元が狭くなっている形状で「コフィン型」とも呼ばれます
主にイギリスなどで使われています。

④かまぼこ型棺
蓋の上部分が曲線を描く形状になっているもので、「アール型」とも呼ばれます
柔らかな印象で女性に人気があります。

⑤インロー型棺
インローとは印籠(いんろう)のことです。その名のとおり、蓋の縁の部分が印籠のようにはめこみ式になっている形状のものです。

⑥組み立て型
簡単に組み立てることができ、使用するまで折りたたんでおけることが特徴の形状です。

(4) 棺の値段で選ぶ。
ほとんどの場合、葬儀社で用意しているものを購入することと思いますが、相場としては5万円~20万円が目安です。

大きさ、材質、形状の違いによって値段が変わります。
種類によっての値段の目安を参考にしてください。
・木棺:約4万円代〜100万円以上(ベニヤ使用品などは4~10万円、檜使用品などは高額になります)
・布棺:約1万円代〜30万円代(刺繍などを入れなければ2~10万円)
・エンバー棺:約10万円代〜40万円代
・エコ棺:約3万円代〜20万円代

(5) 体重が重い人の場合
遺体の体重を支える必要のある棺の作りはしっかりしている必要があります。最悪の場合、棺の底がぬけてしまうと困ります。ダンボール素材のものや組み立て式のものは避けた方が良いでしょう。

(6)環境問題への対応
環境問題から、ダンボール製や間伐材を利用したエコ棺が増えています。今後も続くでしょう。
エコ棺に使われるダンボールは通常のダンボールではなく、棺用に加工された丈夫で特殊なものになっています。中は布張りなので、見た目は通常の棺と変わりありません。

棺の準備について

(1) 本人の生前のこだわりは?
棺にこだわる人は少ないと思いますが、こだわる場合は家族に伝えておくかエンディングノートに書いておく必要があります。棺に入れる副葬品についてこだわる人は多いので同様です。

(2) 身体が大きい人は棺のサイズや構造について知っておくこと。
身長が高い人は標準のものでは収まらず身長+10〜15cmのサイズのものを選びます。
また、体重が特に重い人はしっかりした構造でできたものを選びます。

(3) 故人の好みなどを反映した棺の材質や形状を知っておくこと。
木棺でも高級な天然素材にこだわり、木材に彫刻を施すことも漆を塗ることができます。また、フラッシュ材にプリントした特殊な紙を貼りつけ華やかにすることもできます。 布張棺ではよりバリエーションが豊富になります。刺繍をあしらうこともできます。

(4) 棺の中に収める「副葬品」についても知っておくこと。

①一般的に棺に入れるもの
棺の中に収める品物としては、主に故人が愛用していたものや故人に手向けたいものになります。生花、手紙、色紙、寄せ書き、千羽鶴、写真、お菓子、タバコなどの嗜好品などです。服を入れる場合は、天然素材のもののみ可です。

②棺に入れるのは控えた方がよいもの
・写真―故人以外の人が一緒に写っている写真を入れることは控えます。
・位牌―位牌は故人そのものとなります。仏式では仏壇の中に入れ供養するものです。

③棺に入れてはいけないもの
副葬品として許可されていないものは次のようなものです。
・燃やして有害となるもの
ビニール、プラスチック、ポリエステルなどの素材を使用したもの
・燃えないもの
金属、ビンなどのガラス製品、陶磁器など
・完全に燃えつきにくいもの
大きなぬいぐるみ、水分の多い果実、分厚い書籍など
・燃やして危険なもの
スプレー缶、電池、ペースメーカーなど(故人の遺体にペースメーカーがある場合、申告が必要です)
・火葬炉が故障する原因になるもの
釣り竿、ゴルフクラブなどのカーボン製品(電気炉のヒューズが飛んでしまうことがあるため)
・紙幣(お札)
紙幣を燃やすのは法律で禁じられているため

失敗しない棺の選び方-まとめ

(1) 日本の棺の歴史と現状
日本では土葬の文化も地方では残っていたため、棺では棺桶という屈葬用の形態も明治大正時代まで残っており、その後火葬場の近代化に伴い寝棺が一般的なってきたこと。

(2) 失敗しない棺の選び方では、棺のサイズがあること。
棺のサイズは6尺180cmが基準ですが、現代では日本人でも身長の高い人が多くなり、かつ、死後硬直で足の甲や指の部分が伸びるなどから、身長+10〜15cm程度のものを選ぶことが必要です。

(3) 失敗しない棺の選び方では、棺の作り方・構造もあること。
故人の体重が特に重い場合もあり、棺の底が抜けないためにしっかりした作り方・構造のものを選ぶ必要があります。

(4) 棺の材質、形状の種類
材質では、木棺、布張棺などがあることを知っておくこと。また、形状では、箱型棺(キャスケット型棺・平棺)、山型棺、かまぼこ型(アール型)棺などがあり、日本では箱型棺が中心で、山型棺はキリスト教式で多く見られます。

(5) 棺の相場
相場としては5万円~20万円が目安です。
サイズや材質、形態、装飾などにより価格が異なってきます。

失敗しない棺の選び方3つのポイント

(1) 棺のサイズでの失敗をしないために
標準的な棺のサイズは180cmですが、身長が高い人の場合は、身長に10〜15cm加えたサイズが必要です。

(2) 棺の値段と作り方で失敗しないために
あまり安いものを選び、結果として作りが粗悪で構造がしっかりしていないものを選んでしまうと、体重が重い人の場合は棺の底が抜けてしまう心配があります。

(3) 自分の入る棺にこだわりのある人は生前に希望を家族に伝えておくこと。
遺族は棺にまでこだわってはいないのが通常です。自分の入る棺にこだわる人は生前に家族に希望を伝えるか、エンディングノートや遺書に希望を書いておくと良いでしょう。

棺は火葬により燃えて消えてしまうものです。棺にこだわりすぎる必要はありませんが、まったく関心がなくただ費用にしか関心がないとすれば寂しいと言えるでしょう。棺を通して故人と最後に対面しお別れします。棺は故人のこの世での最後の華やかな演出の道具でもあります。故人の考えや好みがあれば棺にも反映できたらと思います。