祖霊舎の祀り方と神棚との違いについて

~神道で先祖をお祭りする時の基本~

先祖供養においては、仏壇の中に位牌を祀るのが一般的です。しかし、仏教式ではなく神道式の祀り方もあります。神道では神棚がイメージされますが、祖霊舎(それいしゃ)というものもあります。祖霊舎とはどのようなものか、神棚との違いについて触れ、祖霊舎の祀り方などを含めて紹介します。

祖霊舎と神棚の違いについて

(1) 祖霊舎とは
神道式の故人や祖先をお祀りするお社が祖霊舎(神徒壇と呼ぶこともあります)です。神道でも祖先の御霊(みたま)は家の守護神となり子孫を守るとされています。

(2) 祖霊舎と仏壇の相違
仏壇は「仏様を祀る場所」と「故人や先祖を祀る場所」という2つの要素を持ちますが、神道の場合は「神様を祀るのが神棚」で、「故人・先祖を祀るのが祖霊舎」という様に分かれています。
祖霊舎の中には、仏壇でいう位牌にあたる「霊璽(れいじ)」をお祀りします。霊璽は故人の霊が宿る依代(よりしろ)で、故人やご先祖が家の守護神となって子孫を守ってくれると考えられています。

神道では、人は旅立った後は子孫を守っていく霊になると考えています。仏教のように「成仏する」という考え方は持っておらず、家に留まり子孫を守っていきます。亡くなった人の魂は子々孫々に受け継がれ、永遠に不滅のものとなると考えます。

(3) 祖霊舎と神棚の違い
祖霊舎では個人や先祖を祀り霊璽をお祀りします。神棚では神様と神札を祀り、神具を供えます。祖霊舎と神棚は別になります。

神棚は伊勢神宮などの神様をお祀りし、五穀豊穣、招福、安全、商売繁盛などを祈願しています。

(4) 神道と神道の神とは
①神道とは?
神道は古代日本に生まれた素朴な自然信仰が元になり、山や火などの自然や土着の「八百万の神々」を信仰していました。神社のなかった古神道の時代には山や木や岩などを神の依代、神の宿るところとして祀っていました。

②神道の神
神道の神々は人と同じような姿や人格を有する記紀神話に見られるような「人格神」で多神教です。
伊邪那岐(イザナギ)・伊邪那美(イザナミ)による神生み神話にまつわる神々、照大御神(アマテラス)・須佐之男命(スサノオ)を中心の天岩戸神話の神々、国主神(オオクニヌシ)・建御雷神(タケミカヅチ)を中心の出雲神話や国譲りにまつわる神々、瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)・猿田彦(サルタビコ)を中心の天孫降臨などにつながっていく神々、神武天皇・ヤマトタケルにまつわる神々、日本神話の原点である天之御中主神(アメノミナカヌシ)や天地開闢にまつわる神々などがあります。

祖霊舎、神棚の祀り方

(1) 祖霊舎の祀り方
祖霊舎は五十日祭を終えた新しい御霊を祀るものですから、五十日祭までに用意して安置されることが多いです。
新しい祖霊舎を購入された場合は、五十日祭のときに神社の神職にお願いしてお祓いをして頂き、霊璽を祖霊舎の中に祀ります。祖霊舎には霊璽を祀る奥の内扉がついていますので、その中に霊璽を納めます。祖霊舎の外扉は常に開けておくのが一般的ですが、霊璽を祀る奥の内扉は閉めておきます。
祖霊舎は神棚とは別に安置し、神棚の下など神棚より低くなるよう安置します。隣に安置することもあります。

①霊璽(れいじ)
霊璽は中央の扉の中に祀ります。「…命(みこと)」という霊号がつきます。

神道では霊璽に故人の御霊を移して、家庭でお祀りすることにより、故人や先祖はその家の守護神となり子孫を守るといわれています。
葬儀において仮の霊璽を使った場合は、五十日祭までにきちんとした故人の霊璽をつくります。
・霊号(れいごう)
神道では仏式の戒名に当たるものはありませんが、神社の神職から霊号をつけていただきます。霊号は氏名の下に「命(みこと)」の号をつけた「○○○○命」という霊号が一般に多いです。
「命」の前に、男性の場合「大人(うし)」、女性の場合「刀自(とじ)」をつけ「○○○○大人命」「○○○○刀自命」とする場合もあります。子供の場合「彦」「姫」をつけることもあります。

・霊璽の形
霊璽はさまざまな形があり、角形の白木に上からかぶせる覆いがついたものが一般的です。
覆いをとった中の白木の表面には霊号を「○○○○命之霊」、裏面には亡くなった年月日、年齢を「平成○年○月○日帰幽 享年○歳」などと記入します。

・霊璽を入れる内扉はつねに閉めておきます。
霊号を書いた霊璽は、覆いをかぶせて祖霊舎の奥の内扉の中に祀ります。
神道では、神は神聖なもので直接目に見えぬものとの考えから、仏教の位牌とは違い、祖霊舎に納める霊璽には鞘(さや)と呼ばれる蓋が付き、人の目に触れぬようになっています。 祖霊舎の扉はつねに開けておきますが、霊璽を入れる内扉はつねに閉めておきます。

②神器等の飾るもの
・神鏡(しんきょう)
太陽神を象徴する神鏡をご神体として霊璽を入れる内扉の前に置きます。神鏡は太陽を鏡で指していると言われています。神道では 太陽神である天照大神(あまてらすおおみかみ)を最上の神として崇め祀ります。また、この神鏡を乗せる台は通常雲の形をしていて雲形台と言われます。

・真榊(まさかき) 一対
先端に榊葉が飾られ、繁栄の意味があります。向って右側に「鏡」、「曲玉」、左側に「剣」が飾られ、これを三種神器(さんしゅのじんぎ)といい、神様の道具の一つです。どの神様をお祀りされていてもお飾りとして使うことができます。

・榊立て(さかきたて) 一対
榊は毎月1日と15日に新しいものに取り換えて飾ります。また、家庭内のお祝い事や、正月、お祭りなどの時にも新しい榊とお供え物をしてお参りするようにします。

・瓶子(へいし) 一対
蓋付のお神酒を入れる器で左右一対になっています。

・三宝 一対
神饌をのせて神前に供するための台です。

・かがり火立て 一対
かがり火はローソクを立て灯明をお供えします。

③お供え物
祖霊舎のお供え物は神棚と同じです。お米、お水、お塩、お酒、榊、ローソクなどが基本的なお供え物になり、これらに加えて故人が好きだったものを祀ることもあります。配置は神棚のお供え物と同じ配置になります。

④お参り
神棚と同じように、祖霊舎にもお参りします。お参りの方法は神棚と同様で、お参りする前に手と口を洗って清潔にし、二拝二拍手一拝をします。お参りするときは、先に神棚から行います。

⑤方角
祖霊舎の置き場所に特に決まりはありませんが、東向きか南向きの明るい方角で、お参りしやすい場所がいいと言われています。東向きか南向きに置くことができない場合は、他の向きでもかまいませんが、真北に向けて置くことは避けます。

⑥置き場所
床の間やリビングなど汚れにくい場所で、清浄な場所であればなお可です。

⑦祖霊舎の材質
祖霊舎は桧や栓(せん)、ビバ、欅などの素地を活かした白木造りで作られています。

⑧祖霊舎の形態の種類
祖霊舎には、さまざまな形態のものがあります。タンスの上に置く上置き祖霊舎(小型祖霊舎)、インテリア性のあるモダン祖霊舎、床に直接置く床置き祖霊舎(台付型祖霊舎)などがあります。

(2) 神棚の祀り方
神棚には神札を祀ります。伊勢神宮をはじめ、氏神様や縁のある神社で授かった神札などです。
①神札
神札の種類では次のようなものがあります。
<天照皇大神宮>
天照大御神は、天皇家の御祖神であり、日本人共通の祖先です。伊勢神宮に鎮座されています。
<氏神神社神札>
氏神神社(産土神社)とは、住まいに近い神社、会社であれば地域の最も近い神社のことです。
<崇敬神社神棚>
崇敬(すうけい)神社とは、特にその人や会社が特別に信仰している神札のことです。

②神棚を祀るのに適した場所・向き
神棚を祀る際には、家の中でも清らかで、家族の人たちにも親しみやすい場所に祀ります。高さは、目の高さより高い位置に設置するといわれています。また下をくぐり抜けないような場所が良いとされています。方角は神棚の正面が南、または東を向くように置くのがよいとされています。

祖霊舎、神棚の祀り方の注意点

(1)祖霊舎、神棚と仏壇が共にある場合
家庭によっては仏壇と祖霊舎の両方を祀っているケースもあるでしょう。日本においては神仏習合(しんぶつしゅうごう)という考え方があり、神様と仏様を一緒に祀ることがあります。仏教では亡くなった人は仏様、神道では亡くなった人は神様(守護神)になると考えられています。

そのため、神棚と仏壇を同じ部屋に安置しても問題ありません。現在の住宅では部屋数も限られており、安置する場所として、どちらも手を合わせやすく人が集まる場所を選ぶことが多いためです。

一般的な配置の注意点としては、
・向かい合わせで安置しない。
神様と仏様を向かい合わせで安置した場合、どちらか一方に手を合わせる際、もう一方に対してお尻を向けることになります。相手に大変失礼なことになりますので向かい合わせでの設置は避けます。

・上下に安置しない。
神棚の下に仏壇を安置した場合、神様が仏様を踏んでしまうことになります。逆に仏壇の下に神棚を安置することは、神様を仏様の下に安置することになってしまいます。結果、上下の位置に安置することは控えます。

・神棚と仏壇を安置する方角

神棚と仏壇を安置する方角があります。

a. 神棚を安置する方角
神棚を安置する方角は、太陽が昇り一番に光が入ってくる南向きと、太陽が昇ってくる方角である東向きが良いとされています。

b. 仏壇を安置する方角
仏壇を安置する場所としては諸説あり、方角ごとに紹介します。
{イ}南向き:「南面北座説」と言い、仏壇に直射日光が当たらず、風通しが良い向きとなります
{ロ}西向き:「西方浄土説」と言い、極楽浄土のある西方の向きとなります
{ハ}総本山向き:「本山中心説」と言い、信仰する宗派の総本山を拝む向きとなります
{ニ}全方向:「春夏秋冬説」と言い、方角を季節になぞらえ、どの方向に向けても良いとされています。

(2) 神棚と仏壇を置き、祖霊舎を置かない場合
神棚は縁起物とし五穀豊穣や服を呼び込むものと位置づけ、仏壇は位牌を置き先祖や個人を祀るものとして位置づけ両方を置き、祖霊舎は置かない人もいます。

祖霊舎を祀るときの準備

(1) 家の宗教の確認
家の宗教の確認をします。神道を信ずる場合は神棚、祖霊舎があるかどうかを確認します。

(2) 自分自身の考えと祖霊舎
自分自身の宗教や宗教的な儀礼の考え方を整理します。また、祖霊舎を置きたいかどうかも検討します。

(3) 祖霊舎の意味、祀り方、揃える神具などを調べます。
祖霊舎、神具などはどのようなものが必要かについて調べます。

(4) 家の中での置き場所を検討
家の中のどの場所に祖霊舎を置いたら良いかを検討します。

(5) 神棚の検討
祖霊舎とともに、神棚をどうするかを検討します。同時にそろえる場合は、必要な神棚や神札、神具について検討します。

まとめ

(1) 祖霊舎とは
神道式の故人や祖先をお祀りするものが祖霊舎です。神道でも祖先の御霊は家の守護神となり子孫を守るとされています。

(2) 祖霊舎と神棚の関係
神道の場合は、故人、先祖を祀るのが祖霊舎で、神様を祀るのが神棚という様に分かれています。
祖霊舎の中には、仏壇でいう位牌にあたる「霊璽(れいじ)」をお祀りします。

(3) 祖霊舎の祀り方
祖霊舎は五十日祭を終えた新しい御霊を祀ります。新しい祖霊舎を用意した場合は、五十日祭のときに神社の神職にお祓いをして頂き、霊璽を祖霊舎の中に祀ります。

(4) 霊璽
仏式の位牌にあたるものが霊璽と言われるものです。霊璽に故人の御霊を移して、家庭でお祀りすることにより、故人や先祖はその家の守護神となり子孫を守るといわれています。
神道では仏式の戒名に当たるものはありませんが、神職から霊号をつけていただきます。霊号は氏名の下に「命(みこと)」の号をつけた「○○○○命」という形が一般的です。

(5) 神器等の飾るもの
祖霊舎の中には、神鏡、真榊(まさかき)、榊立て(さかきたて)、瓶子(へいし)、三宝などを置きます。

祖霊舎、神棚の祀り方の3つのポイント

(1) 祖霊舎は神式の故人や先祖を祀るもの
祖霊者は故人や先祖の霊を祀るものです。祖先の御霊は家の守護神となり子孫を守るとされています。

(2) 祖霊舎と神棚は別に用意する。

祖霊舎では故人や先祖を祀りします。神棚では神様と神札を祀ります。祖霊舎と神棚は別になります。

(3) 祖霊舎には霊璽を安置し祀る。
霊璽は祖霊舎の中央の扉の中に祀ります。神道では霊璽に故人の御霊(みたま)を移して祀ります。
また、神道では仏式の戒名に当たるものはありませんが、霊号というものがあります。

神式は日本では出産、お宮参り、七五三、結婚式と慶事に多く行われ、仏式は葬儀とお墓の弔事に多く行われているのが一般的です。宗教的な信仰というよりもやや慣習的なものとなっています。仏式の仏壇と比較し、神式では神棚と祖霊舎というものがあることを知っておくことが必要です。