意外と知られていない「喪主と菩提寺の間で生じやすいトラブル」について

~トラブルになるケースやその回避策を詳しく解説~

葬儀や法要のときには菩提寺の僧侶に来てもらってお経をあげてもらいます。
僧侶と揉めることなどないだろうと思われがちですが、実際にはトラブルがいくつか生じることがあります。
そこで、どのようなトラブルが生じるのか、トラブルを避けるにはどうしたらよいのかについてお話ししたいと思います。

菩提寺とは

まず、菩提寺とはその家が檀家となっているお寺のことを言います。
そのお寺の境内には先祖代々のお墓があり、そのお寺の僧侶に供養や法事、月命日のおつとめなどをお願いします。

菩提寺がある場合は、家族が亡くなると菩提寺の僧侶を呼んで戒名を受けた上で葬儀を執り行います。

トラブルになるケース

普段からお付き合いをする菩提寺ですが、家族が亡くなったときに喪主と菩提寺との間でトラブルが生じることがあります。

そこで、実際によく起こると言われているトラブルについてお話しします。

●菩提寺への連絡に関するトラブル
家族が亡くなったら葬儀に関する打ち合わせをして実際に葬儀を執り行うのですが、葬儀日程や葬儀会場が決まってから菩提寺に連絡をするとトラブルになることがあります。

葬儀は僧侶が主体となって行うものですので、葬儀の日程や葬儀会場が決まってから僧侶に連絡をするのは良くないとされています。

葬儀の日時などを決めるときは、まず僧侶の都合を確認しましょう。

●戒名をめぐるトラブル
菩提寺がある場合は、そのお寺の僧侶から戒名を受けて読経してもらうのが基本です。

今住んでいるところから菩提寺が遠い場合でも、家族が亡くなったらまず菩提寺に相談します。
遠方でも僧侶が来てくれる場合がありますし、都合がつかない場合は同じ宗派の別の寺院を紹介してくれることもあります。

家族が亡くなった時点では菩提寺がどこか知らず、別のお寺で戒名を受けて葬儀をすると、後々トラブルになることがあります。
葬儀の後に菩提寺があることがわかっても、別のお寺で戒名を受けた場合は菩提寺で納骨をしてもらうことはできないからです。

その場合は、戒名を受け直したり葬儀をやり直したりすることになるため、多大なお金がかかることになります。
そのため、菩提寺がどこなのかは事前に確認することが大切です。

●戒名の位に関するトラブル
菩提寺に戒名をお願いするとき、高いお布施を包んで高い位の戒名を受けたいと希望して僧侶に断られることがあります。

戒名の位は高いお金を払って受けるものではないからです。
高い位の戒名を受けられるのは、普段から菩提寺に対して高額のお布施や寄付などをしている場合です。

また、高い位の戒名を受けるということは菩提寺の護持(ごじ:大切に守り、保つこと)の責任を引き受けることでもあります。
故人だけではなく故人の家族も同じ位の戒名を受けることになりますので、そのたびに多額のお布施が必要になります。

戒名は、仏門に入ったことを表わすものですので、戒名の位が高いから故人が偉いというものではありません。
戒名を受けるときは菩提寺と相談して、故人にふさわしい戒名を受けるようにしましょう。

●お布施の金額をめぐるトラブル
戒名や葬儀、葬儀の後の法要など、菩提寺にはその都度お布施を渡す必要があります。
お布施には相場がありますが、そのお布施が高いと感じる場合もあります。

そもそもお布施とは気持ちの表れであり、もともとは「お礼の気持ちを自分のできる範囲で施すもの」でした。
高いお布施を払えない場合は、菩提寺や僧侶に直接相談しましょう。

菩提寺にとっては高いお布施を要求して関係が悪くなるよりも、無理のない額のお布施を受け取って、長い付き合いを続けることのほうが大切です。
もし、お布施の額について相談しても高い額のお布施を要求されたり、渡したお布施の額に不満を言われたりするようでしたら、その菩提寺との関係を見直す必要があります。

●直葬をしたときのトラブル
最近は、通夜や葬儀をせずに火葬だけを行う「直葬」が増えています。
しかし、火葬の後に菩提寺に遺骨を持って行くと、僧侶を呼ばなかったことに対して僧侶から不満を言われることがあります。

葬儀をするためのお金が無く、やむを得ず直葬を執り行うこともあるかもしれませんが、その場合にも亡くなったら一言菩提寺に相談することが大切です。

●僧侶に関するトラブル
僧侶に対して喪主や遺族が不満を感じたことによるトラブルもあります。

たとえば、
・読経の時間が短すぎる。
・故人の名前を間違えた。
・説教の内容がふさわしくなかった。
などです。

葬儀など、非日常の場面で起こったことは良いことも悪いことも印象に残りやすいものです。
大切な家族を送る場で故人である家族の名前を間違えたり、僧侶の心がこもっていないように感じると、僧侶や菩提寺に対して不信感が募ります。

また、葬儀で顔を合わせた親族は、年末年始やお盆にまた顔を合わせますので、お墓参りをしたときやお仏壇に手を合わせたときなどに葬儀の話が出ることがあります。
話が出るたびに思い出され、記憶が上塗りされることでしょう。

私の家では、菩提寺とお付き合いをしていたのは主に祖母でした。
その祖母が施設に入っている間に菩提寺の僧侶が亡くなり代替わりをしたと聞きました。
そのため、祖母が亡くなったときに葬儀に来た僧侶は代替わりをした僧侶で、祖母とは面識がありません。

その僧侶は、読経の後のお説教のときに「えぇと、私はこちらのおばあちゃんのことは存じないのですが」とおっしゃいました。
私たち遺族は「お坊さんがそれを言うんだ?!」と思いましたが、同時に菩提寺との付き合いを祖母に任せきりだったことに対して申し訳なくも思いました。
月命日のおつとめをしなくなり、代替わりをしたと聞いてもご挨拶には行きませんでしたので、礼を欠いてしまったなと感じたのです。

葬儀や法要でお世話になる菩提寺ですので、やはり普段から折々のお付き合いをしていくべきだと思います。

菩提寺とのトラブルを回避するためには?

現代は菩提寺との関係が薄くなってきています。
祖父母世代や親世代が菩提寺との付き合いをしてきても、その子ども世代になると日々の生活が忙しくなり付き合いがおざなりになることは多いでしょう。

しかし、家族が亡くなったときにまず菩提寺に知らせる必要がありますので、事前に菩提寺がどこなのか確認するのはとても大切です。
同時に、菩提寺の場所や連絡先、僧侶の名前なども把握しておきましょう。

また、菩提寺は葬儀や法要などでお世話になるところです。
普段から折々で話をしたり相談をしたりしていると、葬儀の内容や進め方についてもスムーズに決めることができます。
また、お布施の額に関しても相談しやすくなります。

普段の関係を良くすることでトラブルを回避しやすくなることも多いものです。
菩提寺は月命日のおつとめや法要を通じて、その家族との親交を深めていきます。
家族構成が変わったり、その家の子どもが成長していく様子を見つめていきます。

大切な日にお呼びする僧侶が家族にとってもっと身近な存在となっていけることが理想だと思います。

菩提寺とのトラブルが解消できないときは?

親交を深めようとしたり、いろいろと相談したりしても、菩提寺とのわだかまりがどうしても解消しないこともあります。
また、特にトラブルがなくても菩提寺とのお付き合いに時間を使えなくなったり、お墓や仏壇の管理が難しくなったりすることも出てくるかもしれません。

先祖代々お付き合いしている菩提寺がある場合は、自分の理想とするオリジナル葬儀ができないことがありますし、好きな霊園に埋葬することもできません。
菩提寺があることで、葬儀やお墓に制約が生じることもあるのです。

それらの理由で菩提寺との関係を断ちたいと考える人も増えてきています。
その場合は、檀家をやめる「離壇」をすることになります。

離壇をするときは、まず菩提寺の僧侶に今までお世話になったことのお礼と、離壇をする理由を伝えます。

離壇する時の理由として無難なものは以下です。
・親が亡くなったため、家や仏壇を引き継ぐ人がいなくなった。
・実家や仏壇を引き継ぐ人はいるが、遠方に住んでいるため管理が難しい。
・結婚し、嫁ぎ先の宗派に変更するため。
などです。

一方、菩提寺側に引き留められる可能性があるため、なるべく言わないほうがいい理由は以下です。
・宗派や宗教を変えたい。
・無宗教になりたい。
などです。

ただ、離壇する時にはいくつかの不安も出てくると思いますので、それらについて一つずつお話しします。

不安①:菩提寺を持たないのは罰当たりなことではないの?
檀家制度は江戸時代にできた制度ですが、国民がキリスト教徒にならないように強制的に仏教徒にするために作られたものです。

現代は信仰の自由が法律で定められていますので、どの宗教を信仰しようが無宗教であろうが何の問題もありませんし罰当たりなことでもありません。
大切なのは先祖や家族を大切に供養したいという気持ちです。

不安②:高額な離壇料を請求されるのではないか?
離壇するときには離壇料が必要だという話を聞いたことがあると思います。
菩提寺と檀家の間に契約書のようなものがある場合は、その契約書の内容に従う必要はありますが、実際にそのような書類はほとんど存在しません。

仮に契約書があったとしても交わされたのは大昔のことです。
その書類に離壇料に関する事項があったとしても、その金額を現在の価値に換算するとさほど高額ではないはずです。
また、契約書自体は先祖が交わしたものであり、あなたがそれに従う義務はないとも言えます。

そのため、契約書を盾に離壇料を請求されても基本的には従わなくても問題ありません。
菩提寺側も弁護士を立ててまで離壇料を請求するのは得策ではありませんので、そこまではしないと思われます。

不安③:離壇をしたら、今あるお墓はどうなるの?今後、法事をする場合はどうしたらいいの?
お墓や仏壇を処分するとき、離壇していると菩提寺には頼みづらいこともあります。
そのようなときは、専門の業者に依頼すると良いでしょう。

また、法事で僧侶にお経をあげてもらう場合は、僧侶を手配してもらえるサービス会社で紹介してもらうことができます。

まとめ

葬儀や法要など、普段とは違う場面で関わることになるのが菩提寺です。
菩提寺の僧侶は大切な儀式や節目に立ち会う存在ですので、トラブルが生じると後々まで尾を引く可能性があります。
そうならないように菩提寺とは普段から良い関係を築いていくことが大切です。

ただ、どうしてもトラブルが解消できない場合や、付き合いを続けられない理由ができた場合などは檀家をやめるという選択肢もあります。
菩提寺との関係を断つときは、音信不通になって関係を自然消滅させるのではなく、菩提寺に話をしてお礼と理由を伝えてからにしましょう。