新型コロナウイルスが変える葬儀の形

~葬儀会社の取り組みは?~

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからないなか、4月7日に政府が宣言した7都府県を対象とする緊急事態宣言は、4月16日には対象範囲がすべての都道府県に拡大されました。それにより、例年多くの旅行客や帰省客でにぎわうゴールデンウィークも、都市部からの移動等による感染拡大を抑制するため、国民は都道府県をまたいでの移動を避けるように要請されました。
国民が感染拡大防止に努めた結果、日々の感染者数は減少傾向となり、5月14日には39県に対して緊急事態宣言が解除されています。北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県の8都道府県では同日には解除にならず、その後5月21日に大阪府、京都府、兵庫県が解除となり、緊急事態宣言が継続するのは東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の首都圏1都3県と北海道となりました。(2020年5月21日現在)
このような状況下で、多くの業種で業務の縮小や休業、在宅勤務を行っています。各葬儀会社でも、感染防止のためさまざまな対策を講じています。密閉・密集・密接の3つの密が容易に起こりやすい葬儀や法要の場で、各葬儀会社の当面の方針はどのようなものか、また施主や参列者側が留意すべき点はなにかを考えてゆくことにします。

葬儀場は生活を維持するうえで必要な施設

各都道府県は緊急事態措置として、「休業要請をする施設」と、「休業要請はしないが感染防止対策の要請をする施設」を発表しています。後者は社会生活を維持するために必要な施設であり、医療施設、販売施設、宿泊施設、交通機関、工場があり、そのほかに葬儀場・火葬場も含まれます。緊急事態宣言下において、国民の行動が大きく制限されるなかでも、亡くなった人を荼毘に付し弔うことは、中止や延期ができない性質のものです。
そうなると、いかに感染を防ぎながら葬儀を行えるのかが大きな課題で、今の時点で考慮すべきポイントは以下のようになるでしょう。
① 葬儀に参列する人の人数
② 参列者同士の距離
③ 葬儀にかかる時間
④ 他都道府県からの参列者の可否
①に関しては、葬儀の規模を縮小する、すなわち参列者数を制限することで感染防止対策になります。高齢者や基礎疾患を持つ、感染した場合のリスクが高い人には参列を控えてもらいます。
②は密集、密接を避けるために人と人とのあいだに2メートル(最低でも1メートル)の距離が必要ですので、ある程度の広さのある会場が必要になります。
③は通常の葬儀から弔辞などを省き、参列者を少人数にすることで焼香の時間も短縮することができます。
④は緊急事態宣言が解除になっても、県境をまたぐ移動を極力控えるように要請されているため、遠方の親族には参列を遠慮してもらうようになるでしょう。
なお、4月20日に「濃厚接触」の定義が以下のように更新されました。
1. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者と接触した日のはじまりを「発病した日」から「発病した日の2日前」に
2. 濃厚接触と判断する目安を「2メートル以内の接触」から「1メートル以内かつ15分以上の接触」に
(引用元:国立感染症研究所感染症疫学センター「積極的疫学調査実施要領における濃厚接触者の定義変更に関するQ&A(2020年4月22日)」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9582-2019-ncov-02-qa.html
このQ&Aによると、「感染しやすい状況については徐々にわかってきたが、感染しないことを保証する条件についてはよくわかっていない」とあります。これは非常に重要なポイントです。3つの密(密閉・密集・密接)を避けることは感染リスクを下げる手段ですが、それでも葬儀の場に集まるということは感染のリスクを負うことになります。

葬儀会社向けの対応マニュアルより

日本医師会総合政策研究機構(以下、日医総研とする)『ご遺体の搬送・葬儀・火葬の実施マニュアル支援プロジェクト』が葬儀社等へのマニュアルを企画しています。名称は「新型コロナウイルス感染症ご遺体の搬送・葬儀・火葬の実施マニュアル」です。
こちらは、葬祭関連事業に従事する人自身がまず感染しないこと、葬儀等への参列者の健康を守る基礎的な知識と感染防御のスキルを身につけること、それにより葬祭事業が継続的に事業を営むために必要なリソースを確保することを目的として作られています。
このマニュアルは新型コロナウイルス感染症で亡くなった人の納棺、搬送、火葬、葬儀に関するものですが、葬儀の打ち合わせ時と葬儀の際の対応については、すべてのケースに対応できる内容になっています。
このマニュアルの「葬儀の打ち合わせの対応」と「葬儀の際の対応」の部分を参考に、葬儀事業者が行うと考えられる感染防止対策を考察します。葬儀の施主、参列者側は葬儀社が行う感染防止対策をよく理解し、協力することが必要です。
 葬儀の打ち合わせ時
新型コロナウイルス拡大期において、葬儀担当者が家族と行う打ち合わせは、集団感染が起こりやすい条件である3密に該当します。葬儀の前に家族と葬儀スタッフの打ち合わせは欠かせませんので、対面の場合はより感染に気をつけることと、可能な限り電話やインターネットを介した打ち合わせが望ましいといえます。
*対面による打ち合わせ
自宅での打ち合わせの場合は、打ち合わせに参加を希望している家族のなかに発熱している人や体調の悪い人がいないかを確認し、いる場合は別室にいてもらうようにします。自宅以外での打ち合わせの場合、葬儀式場や打ち合わせ室に入る人数を制限します。家族が建物内に入る際には手指消毒とマスク着用をお願いします。家族と葬儀スタッフのあいだは常に2メートルの距離を維持することが必要です。
*Web等を活用した打ち合わせ
感染リスクを避けるためには、一部またはすべての家族とWeb等のツールを活用した打ち合わせが有効です。活用できるツールには、電話と、ビデオ会議ツールであるSkype、Zoom、Google Meetなどがあります。電話やインターネットで打ち合わせを行う場合は、必要な資料を事前に郵送やファックス、もしくはEメールで送付するようにします。
 葬儀の際の対応
*会場設営
式場の大きさに応じ、座席の距離を1~2メートルあけて配置を行います。1時間に1~2回程度会場の換気を行います。トイレや洗面所には液体せっけんを常備し、会場には手指消毒用アルコールを設置します。
*参列者にお願いすること
マスクの着用とアルコール消毒剤による手指消毒の協力をしてもらい、参列者同士の直接的な接触(手を握る、ハグをするなど)を避けてもらいます。焼香の際は3密にならないよう、前の人と十分な間隔をあけるよう注意をうながします。
<参考>
日医総研「新型コロナウイルス感染症ご遺体の搬送・葬儀・火葬の実施マニュアル」
https://www.jmari.med.or.jp/download/sousaimanual.pdf

実際の葬儀社の対応例

日医総研のマニュアルには、葬儀関係者向けの感染予防対策の詳細が記載されており、ほとんどの葬儀社ではこのマニュアルの内容に即した対策をとっているものと思われます。ここからは、各葬儀社のホームページなどを参照し、具体的な対応例をあげてみます。
 H社(東京都)の取り組み
*10人未満の葬儀を推奨:密閉・密集・密閉を防ぐため
*椅子と椅子との間隔をあける:ソーシャルディスタンスをとるため
*葬儀でのマスク着用:葬儀中のマスク着用はマナー違反にはならない
*窓あけ換気:式場内は30分毎に窓やドアを開放し換気をする
*アルコール葬毒液の設置:式場入口の受付付近に設置する
*食事:ビュッフェ形式をやめ、個別の食事メニューのみ提供、持ち帰り可能な弁当形式の提供
*参列できない人に葬儀の無料インターネット中継を配信
 A社(栃木県)の取り組み
*スタッフのマスク着用での対応
*会葬者への手指消毒の呼びかけ
*各施設の消毒の徹底:ドアノブ、椅子、トイレ等のアルコール消毒液による拭き取り
*食事提供の制限:会食の自粛または弁当、飲食カタログギフト等への変更
*遺骨での葬儀に対応:先に火葬を済ませて後日に葬儀を執り行う
*施設内に消毒液を設置
*スタッフの健康観察の徹底:出社スタッフとその家族の検温、健康観察を義務化
*会葬者の時間外受付の実施:参列時間の分散のため
*式場施設の定期的な換気を実施:最低1時間に1回の換気
*席の間隔を通常より広くとるレイアウト

まとめ

葬儀会社の対応をみると、参列者およびスタッフのマスク着用や手指消毒の徹底、会場レイアウトを変更して席と席の間隔を広くとる、会場内の頻回の換気などは共通していました。スタッフが感染源になることを回避するため、スタッフおよびその家族の検温や健康観察も行われています。
対応が異なるのは、①会食の有無、②骨葬(先に火葬し、のちに葬儀を行う)の対応、③打ち合わせや葬儀、法要のオンライン化、④参列者数の制限などです。
葬儀後の会食に関しては一切を中止して持ち帰り弁当やカタログギフトにするところ、会食は提供するがビュッフェ形式は行わないところなどの相違がありました。
骨葬に関しては、東北地方や北海道、九州の一部で一般的な葬儀として行われていますが、地方の風習によるものが大きいため対応に差が出ると思われます。
葬儀や法要、打ち合わせ等のオンライン化(リモート化)は、今回のコロナ禍で急遽導入している葬儀社や寺院がみられますが、機材やインターネット環境が必要なため、葬儀社により対応が異なります。
参列者数の制限は、10人以下などと人数を明確にしているところ、可能な限り少人数、としているところとがありました。
新型コロナウイルスは日々感染者数が減少傾向をみせており、緊急事態宣言も予定より早く解除の方向に進んではきましたが、予断を許さない状況にあります。今後しばらくのあいだは感染防止を最優先とし、従来の形式にこだわらず、規模を縮小したり時間差を利用したり、インターネットを活用したりする葬儀の形が主流になるものと思われます。