「人生100年時代」の暮らし方

~生涯現役精神が大きなポイント~

日本の4人に1人は高齢者で、今後、男性は4人に1人、女性は2人に1人が90歳まで生きると見られています。ちなみに近い将来、女性の4人に1人が95歳まで生きると推計されています。人生100年時代が来るということは大げさな話ではありません。
しかし、長生きするということは、収入と仕事、年金、健康、介護など多くの問題との関係を考えなければなりません。年金財政の悪化から年金だけでは食べて行けず、老後の資金不足が問題になっています。また、年金支給年齢の延長などが背景にあり、高齢者も長く働くことが求められています。長寿が必ずしも単純に良いとは言い切れず、その暮らし方が問われています。

1.「人生100年時代」の暮らし方とは

(1) 高齢化の状況

①高齢化率
内閣府「令和元年版高齢社会白書」によると、
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/html/zenbun/s1_1_1.html ・高齢化率は28.1%
我が国の総人口は(2018年10月1日現在)1億2,644万人で、65歳以上人口は、3,558万人で、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.1%となっています。75歳以上の人口は1,798万人で総人口に占める割合は14.2%です。
・2065年には約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上
2065年には、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上になると予測されています。
総人口が減少する中で65歳以上の者が増加することにより高齢化率は上昇を続けます。

②平均寿命
厚生労働省の調べによると、日本人の平均寿命は2018年の段階で、男性が81.25歳、女性が87.32歳です。男性は7年連続、女性が6年連続平均寿命の過去最高を更新しており、今後、男女とも平均寿命は延びて、2065年には、男性84.95年、女性91.35年となり、女性は90年を超えると見込まれています。現在のペースで伸び続けると、100歳まで生きるのもそんなに珍しいことではなくなりそうです。

③高齢者世帯
「令和元年版高齢社会白書」によると、65歳以上の「世帯」の増加が顕著です。
・65歳以上の者のいる世帯は全世帯の約半分、「単独世帯」・「夫婦のみ世帯」が全体の過半数。
・65歳以上の一人暮らしの世帯が増加傾向
65歳以上の一人暮らしの世帯は男女ともに増加傾向にあり、2015年には男性約192万人、女性約400万人、65歳以上人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%となっていること。

(2) 「人生100年時代」の暮らし方とは

人生100年が視野に入ってきた現在、単に長寿に意味があるのではなく、次のような点を考える必要があります。

①人生のあり方と大切にしたい点
・健康であること。
・経済的に生活していけること。
・生きがいがあること。
・家族や隣人に支えられていること、社会的に孤立していないこと。

②人生100年時代のライフサイクル
仕事をしている男性の場合を考えてみると、人生100年時代では、次のようなライフサイクルが考えられます。

a. 65歳までの就業期
60歳定年までの現役世代期と定年後65歳までの再雇用期。何らかの形で多くの人が働き続ける時期です。年金が支給される65歳までは働く経済的必要性があります。

b. 65歳から74歳までの前期高齢者期
人により65歳でリタイアする時期でもあります。70歳まで働ける環境が進めば70歳までの就業が現実化します。フリーランスや独立起業した場合は、年齢に関係なく働けることも可能になります。

c. 75歳からの後期高齢者期
人により健康上の問題が出やすく体力も落ちてきます。多くの人が社会的にリタイアしてきて、社会との接点も乏しくなります。人生の支えとなる同居する家族がいるかどうか、配偶者が健在かどうか、などが重要になってきます。

d. 要介護期
要介護認定を受けた場合、自立して歩けるかどうかが重要です。自立して歩ける間はまだ介護の必要性は部分的にとどまりますが、自立して歩けなくなると要介護度も上がり、日常生活でも人の手を借りなければならなくなってきます。
家庭内介護では配偶者や同居する家族の存在が重要です。家庭内で介護できなくなってくると介護施設入所が必要になってきて、集団生活となり生活の仕方が大きく変化します。また、医療との関係で入院や大きな病気をすると環境は大きく変化します。

2.「人生100年時代」の暮らし方の現状

(1) 健康寿命と平均寿命との差の存在
健康寿命と平均寿命との乖離(かいり)があります。多くの人は健康に長生きしたいと願っていますが、2016年の健康寿命(介護が不必要)は、男性72.14歳、女性74.79歳で、健康寿命と平均寿命との差は、男性8.84年、女性12.35年もあります。平均寿命が延びる長寿時代とは、寿命が延びる一方で、介護・看護が必要な期間が長くなり、要介護のリスクが高まる時代でもあるのです。
*参考 厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会・次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会 「健康日本21(第二次)の推進に関する参考資料

今後、平均寿命と健康寿命との差が大きくなれば、医療や介護に負担がかかり費用も増大します。そのため、疾病予防と健康増進、介護予防などによって、平均寿命と健康寿命の差を短縮することが課題の1つです。個人の生活の質の低下を防ぐとともに、社会保障負担の軽減も期待できます。

(2) 介護の現状
「令和元年版高齢社会白書」によると
・65歳以上の者の要介護者等数は増加しており、特に75歳以上で割合が高いこと。
介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人は、2015年度末で606.8万人となっており、2003年度末(370.4万人)から236.4万人増加しています。
・75歳以上で要介護の認定を受けた人は、75歳以上の被保険者のうち23.5%を占めます。
・家族(とりわけ女性)が介護者となっており、「老老介護」も相当数存在すること。
要介護者等と同居している主な介護者の年齢について、男性では70.1%、女性では69.9%が60歳以上であり、いわゆる「老老介護」のケースも相当数存在しています。
・介護施設等の定員数は増加傾向で、特に有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の定員が増加していること。
介護施設等の定員数をみると、増加傾向にあります。施設別にみると、2016年では、介護老人福祉施設(特養)(530,280人)、有料老人ホーム(482,792人)、介護老人保健施設(老健)(370,366人)等の定員数が多いです。また、近年は有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の定員数が特に増えています。

(3) 高齢者の就業の現状
同様に「令和元年版高齢社会白書」によると、
・「働けるうちはいつまでも」働きたい60歳以上の者が約4割
現在仕事をしている60歳以上の者の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいとし、70歳くらいまでもしくはそれ以上と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っているとしています。
・希望者全員が65歳以上まで働ける企業は7割以上
従業員31人以上の企業約16万社のうち、高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の割合は99.8%(156,607社)となっています。また、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は76.8%(120,596社)となっています。
・65歳以上の起業者の割合は上昇
継続就業期間5年未満の起業者の年齢別構成の推移を見ると、65歳以上の起業者の割合は2007年に8.4%でしたが、2017年は11.6%に上昇しました。また、男女別に65歳以上の起業者の割合を見ると、男性は2007年8.9%、2012年11.8%、2017年13.2%と上昇していますが、女性は2007年6.8%、2012年8.6%、2017年7.2%となっています。

(4) 所得の現状
昨年、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書で「老後資金2000万円必要」という問題が出され注目を集めました。麻生太郎金融担当大臣が報告書を受け取らないと言い出しさらに混乱状態になりました。これは昨年5月に行われた金融庁の審議会報告書案を朝日新聞が大きく取り上げた記事で、「人生100年時代に向けて長い老後を暮らせる蓄えにあたる『資産寿命』をどう延ばしていくか。平均寿命が延びる一方、少子化や経済環境の変化などにより、政府は年金支給額の維持が難しくなり、老後の生活費についてかつてのモデルは成り立たなくなっていると金融庁は指摘。現役期、退職前後、高齢期の3つの時期ごとにできる対策を報告書で指針している」というものでした。

2000万円の計算根拠は、金融庁の報告書によると以下の前提のもとに算出されています。
・夫65歳、妻60歳の時点で夫婦ともに無職である。
・30年後(夫95歳、妻90歳)まで夫婦ともに健在である。
・その間の家計収支がずっと毎月5.5万円の赤字※である。
※総務省「家計調査」(2017年)における高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の平均。
これをもとに計算すると、以下のように老後30年間で約2000万円不足するというわけです。
月5.5万円×12ヶ月×30年=1980万円

標準所得の世帯でさえ年金だけでは食べていけないことを政府の審議会が認めたことで、年金により生活できるという政府の方針と実体があっていないことを示し、大臣は答申を受け取ることができなくなり、今後の老後の経済生活の不安を多くの国民が持ちました。

(5) 生涯学習、趣味、社会参加活動の現状
高齢者の生きがいづくりでは、生涯学習、社会参加活動などへの関心が高くあります。
60歳以上の者のグループ活動では、ボランティア活動、地域社会活動、趣味やおけいこ事を行っています。
また、地方自治体などが行う講座などでの生涯学習も人気です。また、健康体操やスポーツに関する講座、運動施設でのトレーニングやダンスも人気があります。

3.「人生100年時代」の暮らし方の今後

(1) 就業の今後―高齢者雇用安定法の改正によって行われる継続雇用措置や定年延長
2020年に高年齢者雇用安定法改正が成立しました。2021年から希望者は70歳まで就業できるよう企業に課される以下の7つの義務・努力義務があります。
①定年延長(以下①②③のいずれか)
②定年廃止
③再雇用制度の導入

④他企業への再就職支援
自社での高齢者の雇用が難しい場合には、継続雇用の範囲を自社だけでなく、グループ会社(特殊関係事業主)にまで拡大しようという制度です。

⑤フリーランスで働くための資金提供
雇用契約が終了した高齢者がフリーランスとして働き続けるための資金提供を雇用元が行うことがあります。事業主は高齢者雇用するのではなく、資金提供や業務委託契約など働く機会を提供することで高齢者の就労を支援します。

⑥起業支援
高齢者の起業が進んでおり、中小企業庁の「2019年版小規模企業白書」によると2018年の年齢階層別の自営業主の人数は、70歳以上が90万人で最も多い人数を占め、65歳〜69歳が62万人と2番目に位置しています。
国や自治体は高齢者の起業支援を行なっており、日本政策金融公庫では最高7200万円まで特別待遇の利率で融資を行っています。

⑦NPO活動などへの資金提供 
定年後に社会貢献活動を希望する高齢者に対して資金提供によって活動を支援することがあります。事業主がNPOに資金提供することで、法律遵守しつつ企業イメージのアップやCSRに繋げることができます。

(2) 介護問題の今後
高齢期の暮らし方の中で健康寿命が終わり要介護期に入ることも考えておかなければなりません。
先の「令和元年版高齢社会白書」によると、
・65歳以上の者の要介護者等数は増加しており、特に75歳以上で割合が高いこと。
介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人は、2015年度末で606.8万人となっており、2003年度末(370.4万人)から236.4万人増加しています。75歳以上で要介護の認定を受けた人は75歳以上の被保険者のうち23.5%を占めます。

・主に家族(とりわけ女性)が介護者となっており、「老老介護」も相当数存在すること。
要介護者等からみた主な介護者の続柄をみると、6割弱が同居している人が主な介護者となっています。要介護者等と同居している主な介護者の年齢について、男性では70.1%、女性では69.9%が60歳以上であり、いわゆる「老老介護」のケースも相当数存在しています。

・介護や看護の理由により離職する人は女性が多いこと。
家族の介護や看護を理由とした離職者数は2011年10月から2012年9月の1年間で101.1千人でした。とりわけ、女性の離職者数は81.2千人で、全体の80.3%を占めています。
介護・看護の理由による離職者数をみても、平成28(2016)年では女性の離職した雇用者数は62.6千人で、全体(85.8千人)の73.0%を女性が占めています。

・認知症患者の増加
2012年時点で認知症患者数は462万人でしたが、2035年までには920万人にまで増加し、その数は65歳以上の方の4分の1を占めると推計されます。

4.「人生100年時代」に向けてどんな準備をすればよいのか

(1) 人生設計、ライフデザインを描く。

①何歳まで働くか?
自分自身は何歳まで働くかを検討します。現状では企業は60歳定年、65歳までの再雇用が中心です。定年延長は実際には少ないでしょう。働こうと思えば65歳まで働けるのか、70歳まで働けるのかは企業により異なります。
また、雇用されるのではなく、フリーランスとして個人事業で働くのか、本格的に企業などを設立して起業するのかなどの人生の選択があります。

②どのような人生を送りたいか?
老後をどのように送りたいかをイメージします。田舎暮らしをしたい人や趣味に生きたい人、ボランティアなどの社会活動に力を入れたい人など多様な生き方があります。

(2) 自分の将来の年金額を調べる。
自分の年齢にもよりますが、将来の自分の得られる年金額を調べます。
厚生年金、国民年金、企業年金などの加入する年金により、また、所得により相違があります。自分の年金額が低い場合は65歳以後も働き続ける必要が出てきます。

(3) 自分自身の生きがいは何かを考える。
生きがいでは、第1に、人の役に立つことがあります。個人事業へのチャレンジ、NPOなどの非営利活動やボランティアなど、幅広い新しい働き方で、社会参加を続けていくことが大切なためです。第2に、好きなことがあります。趣味や旅行などに関することです。第3に、働いて収入を上げることもあるでしょう。

(4) 家族とともに老後の人生を考える。
自分だけでなく配偶者や子どもなどとも暮らし方、生き方を考えます。

5.まとめ

(1) 伸びる平均寿命
日本人の平均寿命は2018年の段階で、男性が81.25歳、女性が87.32歳です。

(2) 大切なのは健康寿命
健康寿命とは介護が必要となる前の段階です。介護認定で要支援・要介護になる前の段階でしょう。介護予防、認知症予防や健康維持が重要な課題となってきます。

(3) 人生100年時代のライフサイクル

就業する男性を場合次のようなライフサイクルが考えられます。それぞれの時期の要点を捉えて自分自身のライフサイクルを考えてみます。
a. 65歳までの就業期
b. 65歳から74歳までの前期高齢者期
c. 75歳からの後期高齢者期
d. 要介護期

(4) 70歳まで働ける環境づくりが進む。
高年齢者雇用安定法改正による70歳まで働ける環境づくりが始まりますが、背景としては年金財政の悪化に伴う年金支給年齢の現在の65歳から70歳への延長問題があります。強制的に一気に70歳支給にするわけにはいかないので、希望者にインセンティブを付けて支給繰り下げを政府は提案している段階です。ただし、個人としても長く働けるのは意味があることであり、働き方は雇用されるだけでなく、個人としてフリーランスで働く、会社を作って起業するなど多様な形態が可能です。

(5) 老後の生活資金
金融庁の金融審議会で平均して老後2人世帯でおよそ2,000万円の資金不足が提言され、財務大臣が答申の受け入れを拒否するという異例自体が発生しました。年金だけでは生活できないということを公に認めるわけにはいかないということですが、年金額の不足は深刻です。自己防衛としては、多少の預貯金が必要となるか、長く働くか、副業収入を作るか、うまくいけば資産運用で利益を上げるかなどを考えなければなりません。

6.「人生100年時代」の暮らし方3つのポイント

(1) 人生100年時代の1番の柱は健康
健康であれば長寿も喜ばしいものです。しかし、植物人間になって長生きすることに意味があるのでしょうか?植物人間とまではいかなくても医療の現場では延命治療が行われています。延命治療をしないためには、本人の意思が明確である時に延命治療拒否の文書を残しておくことが必要です。苦しみながらの生命だけの長生きは、意味がないのではないでしょうか?

(2) 高齢になっても希望者は長く働けることは意味があること。
高齢になっても希望者は長く働けることは、年金財政不足を補い個人的にも年金収入不足を補う意味があります。また、仕事をできることは社会に役立つ、社会の中での役割を持てることで、生きる意味を感じることができます。

(3) 75歳以降の後期高齢者期、そして、その後の要介護期をどう過ごせるかが人生100年時代では重要であること。

平均寿命が、男性がおよそ81歳、女性が87歳の現代にあっては、75歳の後期高齢者になってから男性でおよそ6年、女性で12年をどう過ごすかが重要になってきます。どこまで健康が維持できるか、介護を必要とせず自立した生活ができるかが重要です。
しかし、一方では人間は死が避けられない、健康の衰えが避けられない宿命から、介護が必要になっても、認知症になっても、病気になっても、家族や周囲の社会が高齢者を孤立させずに支えていける社会づくりが重要です。

高齢社会の人生100年時代では、生涯現役精神が重要になってきます。長い人生を前向きに、生きがいをもって生きていけるのかどうかが幸せにつながってくるのではないでしょうか。幸せとは何でしょうか?人生の永遠のテーマかもしれませんが個人の価値観、生き方が反映する課題です。最後には、やはり家族に囲まれて、あまり苦しまずに、死を迎えることができれば良いように思えますが皆さんにとってはどうでしょうか?