自分自身で判断するのが困難な人のための「日常生活自立支援事業」 

~暮らしの安全をサポートしてくれる社会福祉協議会の活動を詳しく解説~

「日常生活自立支援事業」については知っている方は少ないのではないでしょうか?地方自治体の公的制度ではなく、各地区の社会福祉協議会を主体とした事業で、非営利の公的な要素を持ったサービスです。しかし、社会福祉協議会とは公益性のある社会福祉法人で、地方自治体と連携し各地区の福祉サービスを担っています。社会福祉協議会によるこの制度とサービス内容を紹介します。

1.自分自身で判断するのが困難な人のための「日常生活自立支援事業」とは

日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な人が地域において自立した生活が送れるよう、都道府県と指定都市の社会福祉協議会が、利用者との契約に基づき福祉サービスの利用援助等を行うものです。

高齢者など自分自身で判断するのが困難な人が、毎日の暮らしの中で、不安や不便、困ったことが生じた場合に、福祉サービスの利用手続きや、金銭管理の手伝いをして安心して暮らせるようにサポートする事業です。

(1) 日常生活自立支援事業の対象者
日常生活自立支援事業の対象者は、次のいずれにも該当する人です。
・判断能力が不十分な人
認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な人
・事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる人

(2) 日常生活自立支援事業の実施主体
日常生活自立支援事業の実施主体は都道府県と指定都市の社会福祉協議会ですが窓口となるのは、市町村、特別区の社会福祉協議会です。

社会福祉協議会とは、民間の社会福祉活動を推進することを目的とした営利を目的としない民間組織で社会福祉法人です。民間組織ではありますが地方自治体と一体となって福祉実務を行う公益的な団体です。

実務は各地域の社会福祉協議会で働く「専門員」「生活支援員」が担い、契約者のもとを訪問して契約者をサポートします。

2.日常生活自立支援事業の現状

(1) 日常生活自立支援事業のサービス内容
日常生活自立支援事業のサービスを利用する際には、専門員が利用希望者を訪問し、困りごとや悩みごとについて相談を受けます。
そして、本人の希望をもとに適切な支援計画をつくり契約をします。また、契約内容・支援計画にそって生活支援員が定期的に訪問し、福祉サービスの利用手続きや預金の出し入れなどをサポートします。

主なサービスとして次のものがあげられます。
①福祉サービス利用の支援
福祉サービスとは、介護保険制度などの高齢者福祉サービス、障害者自立支援法による障害福祉サービスなどのことをいいます。
高齢者福祉サービスでは、ホームヘルプサービスやデイサービス、食事サービス、入浴サービスなど、障害者福祉サービスでは、就労支援や外出支援サービスなどがあります。

これらに対して、安心して利用するための具体的支援には、次のようなものがあります。
・福祉サービスの利用に関する情報の提供、相談
・福祉サービスの利用における申し込み、契約の代行、代理
・入所、入院している施設や病院のサービスや利用に関する相談
・福祉サービスに関する苦情解決制度の利用手続きの支援

②生活に欠かせないお金の出し入れの支援
お金の出し入れの支援では次のようなものが含まれます。
・福祉サービスの利用料金の支払い代行
・病院への医療費の支払いの手続き
・年金や福祉手当の受領に必要な手続き
・税金や社会保険料、電気、ガス、水道等の公共料金の支払いの手続き
・日用品購入の代金支払いの手続き
・預金の出し入れ、また預金の解約の手続き

③日常生活に必要な事務手続きの支援
日常生活に必要な事務手続きの支援では次のようなものが含まれます。
・住宅改造や居住家屋の賃借に関する情報提供、相談
・住民票の届け出等に関する手続き
・商品購入に関する簡易な苦情処理制度(クーリング・オフ制度等)の利用手続き

④大切な通帳や証書などの保管支援
利用者の希望に応じて、大切な通帳や証書などを安全な場所で預かってくれます。
預かってもらえるものは次のようなものです。
・年金証書
・預貯金通帳、銀行印、カード
・証書(保険証書、不動産権利証書、契約書など)
・実印
・その他実施主体が適当と認めた書類、マイナンバーカードなど

また、預かってもらえないものは次のようなものです。
・宝石、貴金属類
・書画、骨董品
・株券、小切手

(2) 日常生活自立支援事業の利用手続きの流れ
日常生活自立支援事業を利用するためには、まず、市町村・特別区の社会福祉協議会に連絡します。
手続きの流れは次の通りです。

①相談の受付
利用希望者は、実施主体に対して申請(相談)を行います。

②相談・打ち合わせ
実施主体は、利用希望者の生活状況や希望する援助内容を確認するとともに、本事業の契約の内容について判断し得る能力の判定を行います。

③契約書、支援計画の作成
実施主体は、利用希望者が本事業の対象者の要件に該当すると判断した場合には、利用希望者の意向を確認しつつ、援助内容や実施頻度等の具体的な支援を決める支援計画を策定し、契約が締結されます。
なお、支援計画は、利用者の必要とする援助内容や判断能力の変化等利用者の状況を踏まえ定期的に見直されます。

④契約
⑤サービス開始

(3) 日常生活自立支援事業の利用料
実施主体が定める利用料を利用者が負担します。
各地区の社会福祉協議会により価格は異なりますが、1回あたり利用料 平均1,200円(1時間程度)で交通費別途、資料保管費 年間3,000円程度よりです。
ただし、契約締結前の初期相談等に係る経費や生活保護受給世帯の利用料については、無料となっています。

3.日常生活自立支援事業と今後

現状の中でも判断の能力が不十分な人に対する援助制度には、日常生活自立支援事業以外に成年後見制度があります。

(1) 成年後見制度
成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度とがあります。

任意後見とは、高齢者などが認知症などにかかって判断能力が低下した場合に、本人が自分の意思で後見人を選び任意後見契約を締結し、実際に後見が必要になったときに、財産管理や介護サービス締結等の療養看護に関する事務についてなどをしてもらう制度です。

法定後見とは、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任してもらう制度です。法定後見では、判断能力の程度など本人の事情に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれています

(2) 日常生活自立支援事業と成年後見制度の違い
日常生活自立支援事業は、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭等の管理に限定していることに対して、成年後見制度は、日常的な金銭に留まらないすべての財産管理や福祉施設の入退所など生活全般の支援(身上監護)に関する契約等の法律行為を援助することができます。

日常生活自立支援事業は、福祉サービスの利用援助を目的とした生活支援のための身近なサービスであるため、利用契約者の日常的な範囲でのサービス提供が想定されており、その範囲を超えた支援は困難です。

そのため、次のような場合には成年後見制度への移行、または併用が必要となります。
①高額な財産の管理、不動産や有価証券の売買など日常的金銭管理を超えた支援(法律行為)が必要になった場合
②居所の変更が必要となる施設入所等の代理による契約が必要になった場合
③消費契約上のトラブルの解決のため取消権の行使が予測される場合
④親族や知人らによる財産侵害など虐待の被害があり、明確な財産保全の必要性が高くなった場合
⑤日常生活自立支援事業による支援だけでは生活の継続が困難となった場合
⑥身上監護に関連して、将来にわたっての支援のキーパーソンが必要とされる場合

日常生活自立支援事業から成年後見制度へ移行する場合は、日常生活自立支援事業のサービス内容の多くは後見業務の範囲に含まれるため、成年後見人が選任されたら、日常生活自立支援事業は解約される可能性があります。
ただし、社会福祉協議会の判断により、両制度を併用が可能な場合もあります。

(3) 日常生活自立支援事業では身元保証ができないこと。
賃貸住宅や介護施設への入居、病院への入院等の際に、身元保証人(または身元引受人)の設定を求められるのが通常です。身元保証人になってくれる人を見つけることができなければ、入居・入院ができないこともあります。

身元保証人は、緊急時の連絡先、日常用品や衣類の提供、看護介護のサポートだけでなく、入居・入院に関する債務を保証する責任も負うことになり重い負担がともないます。そのため身近な家族がいない人は簡単に引き受け手が見つからないことがあります。

後見人がいる場合でも、後見人と身元保証人は役割が違うため、後見人がいても身元保証人は別途必要というケースが多くあります。

今後の課題としては、利用者にとって利用しやすいように、日常生活自立支援制度と成年後見制度の整理が必要となってくるかもしれません。

4.日常生活自立支援制度利用のための準備

制度を利用できる人は、先述した、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な人、および、事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる人です。
障害者手帳や認知症に関する医師の証明などはなくても構いません。

(1) 市町村または特別区の社会福祉協議会の連絡先を調べる。
市町村または特別区の社会福祉協議会の連絡先を調べます。窓口は市町村または特別区で都道府県の社会福祉協議会ではありません。社会福祉協議会は全国すべての市区町村に設置されており、連絡先は各社会福祉協議会のウェブサイト等に掲載されています。

(2) 社会福祉協議会への相談
窓口の社会福祉協議会に連絡します。本人以外でも、家族など身近な方でも構いません。
相談・打ち合わせは、専門的な知識を持った担当者(専門員)が自宅や 施設、病院などを訪問し相談にのります。相談にあたっては、プライバシーに配慮し秘密は守られます。

(3) 契約書、支援計画の作成
専門員から困っていることや希望を聞かれ、その後、契約内容・支援計画を提案され契約書が作成されます。

5.まとめ

(1) 日常生活自立支援事業の特殊性
日常生活自立支援事業とは、社会福祉協議会による福祉サービスです。また、社会福祉協議会とは社会福祉法人の法人格を持った公益団体で、地方自治体と提携している民間組織です。

(2) 日常生活自立支援事業を利用できる人
制度を利用できる人は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な人、および、事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる人です。

(3) 日常生活自立支援事業のサービス内容
福祉サービス利用の支援、生活に欠かせないお金の出し入れの支援、日常生活に必要な事務手続きの支援、大切な通帳や証書などの保管支援です。特に日常的なお金の出し入れや通帳や証書などの保管は介護事業ではできないことで重要です。

(4) 日常生活自立支援事業を利用するには
日常生活自立支援事業を利用するためには、市町村または特別区の社会福祉協議会に連絡し、相談の受付、相談・打ち合わせの実施、契約書・支援計画の作成、契約、サービス開始の手順で行います。

(5) 日常生活自立支援事業では、身上監護に関する契約等の法律行為を援助することができないこと。
日常生活自立支援事業は、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭等の管理に限定しており、福祉施設の入退所などのいわゆる身上監護や契約等の法律行為を援助することはできません。これらの行為には成年後見制度の利用が必要です。

6.日常生活自立支援事業の3つのポイント

(1) 日常生活自立支援事業は単身高齢者などにメリットがあること。
同居する家族がいればやってもらえる各種の日常生活に必要な各種の費用の預金からの引き落としや預け入れの管理、年金などの入金管理も、介護が必要になり、認知症になれば大変困るものです。また、単身高齢者などでは手間のかかることも多く困っている分野です。特にこれらの管理は介護会社での家事支援ではやらない分野、できない部分で、日常生活自立支援事業の支援は利用者にメリットがあります。

(2) 日常生活自立支援事業を実施するのは、社会福祉協議会という非営利の社会福祉法人であり利用費も安いこと。
社会福祉協議会は非営利の公益的サービスを行う社会福祉法人であり、利用費の標準は1回(1時間程度)で1,200円程度、資料の保管費は年間3,000円程度と安価です。

(3) 日常生活自立支援事業では、老人ホームなどの介護施設への入居や病院への入院には対応できないこと。
有料老人ホーム・特別養護老人ホームでは通常身元保証人が求められます。病院への入院でも同様です。実質的に支払いに関する債務保証をしなければならず、日常生活自立支援事業でも成年後見制度でも対応できないのが通常です。地方自治体でもそのような支援はありません。民間の身元保証団体はありますがかなりの高額の費用が必要です。

社会福祉協議会は、社会福祉法に基づきすべての都道府県・市町村に設置され、地域住民や社会福祉関係者の参加により、地域の福祉推進の中核としての役割を担い活動を行っている非営利の民間組織です。
日常生活自立支援事業は、都道府県社会福祉協議会が市区町村社会福祉協議会と連携して実施しているものです。市区町村社会福祉協議会は、高齢者や障害者の在宅生活を支援するために、ホームヘルプサービス(訪問介護)や配食サービスをはじめ、さまざまな福祉サービスを行っているほか、地域の多様な福祉ニーズに応えるため独自の事業に取り組んでいます。