健康寿命を延ばすためのオーラルフレイル予防

~オーラルフレイルと健康寿命の関係性について~

はじめに

近年の日本では健康寿命の延伸が大きな課題となっています。健康寿命とは健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間の事であり、一般的な平均寿命よりも約10年は短いと言われています。

この健康寿命を延ばす事が出来れば、私達がより長い期間自立した生活を送れるだけでなく、若者や社会の負担も軽減する事が可能です。

そこで今回は健康寿命と密接に関係しているオーラルフレイルについて解説していきます。

オーラルフレイルとは

健康寿命を延ばすためのオーラルフレイル予防

オーラルフレイルとは食べ物を噛んだり飲み込んだりするために必要な口腔機能の衰えの事です。近年の研究によってこのオーラルフレイルが健康寿命と密接に関係している事が判明し、オーラルフレイルへの様々な取り組みや更なる研究が官民一体で進んでいます。

オーラルフレイルと健康寿命の関係性

オーラルフレイルが健康寿命や老化に与える大きな影響として、滑舌の低下が挙げられます。

老化によって口腔機能が低下すると滑舌も次第に悪くなっていきますが、それに伴い他人と会話する事にも抵抗を感じるようになります。もしそのような状態が酷くなれば認知症の発症や最悪の場合は孤独死にも繋がる可能性が考えられます。

また口腔機能には噛む力も含まれているので、この力が弱くなると食べれる食品や料理が減っていき健康バランスにも問題が出てきます。

このようにオーラルフレイルは日常生活の様々な面に悪影響を与えるので、早期に対処する事が重要とされていますが、一方で初期の症状は些細な物なので他人からは気が付きにくく発見に時間がかかってしまう場合が多いです。

オーラルフレイルの初期症状

オーラルフレイルを早期に発見するためには定期的な歯科検診だけでなく、日常の中で小さな変化が起きていないかを自分で確認する事も重要です。

例えば口臭や口の粘つきはオーラルフレイルの代表的な症状ですし、歯茎からの出血や噛み合わせの違和感などもオーラルフレイルに繋がる可能性があるので、普段から口や歯の健康状態には気を付けるようにしましょう。

オーラルフレイルと認知症

オーラルフレイルの進行と認知症の発症には明確な関係性が認められています。

2010年の厚労省の調査によると自分の歯が殆ど残っていない人は、20本以上歯が残っている人と比べて認知症の発症リスクが1.9倍も高いという結果になりました。

またそれ以外にもオーラルフレイルとアルツハイマー病についても因果関係が認められている事から、口や歯の状態は体全体の健康に大きな影響を与えると言えます。

オーラルフレイルの原因と予防

健康寿命を延ばすためのオーラルフレイル予防

オーラルフレイルの原因は虫歯と歯周病によって多くが占められています。

そもそも歯を構成しているエナメル質は人体で最も硬い素材であり、老化によってすり減ったり色が変化したりする事はありますが、機能そのものは劣化しないと言われています。

つまり歯の喪失や機能の劣化には虫歯や歯周病など老化以外の病気が関係している事になります。実際に2016年に厚労省が行った調査によると、80歳の段階で自分の歯を20本以上保っている人は全体の51.2%しかいませんでした。

この数字は8020運動などによって改善されつつありますが、割合としては未だに低い水準となっています。

虫歯の予防

虫歯の予防にはフッ素が重要とされています。フッ素には歯垢の予防やエナメル質の強化などの効果があり、様々な歯磨き粉や口内洗浄液に含まれています。

ただし製品ごとにフッ素の濃度は異なるので、購入する前にパッケージの記載を確認するなどしてなるべく高濃度のフッ素を含む製品を選ぶようにしましょう。

歯周病の予防

歯周病を予防するためには口の中を清潔に保つ事が大切です。というのも人の口の中には口内フローラと呼ばれる各種細菌が生息しており、それらは善玉菌と悪玉菌に別れています。

そして加齢が進行すると次第に悪玉菌が増加していくのですが、この悪玉菌を代表するのが歯周病菌です。歯周病菌の増加は歯茎の炎症や歯の溶解を引き起こすだけでなく、その他疾患の原因ともなりうるので普段から歯磨きを怠らず、定期的に歯科医による歯垢や歯石の除去を受ける必要があります。

特に歯周病菌は空気を嫌う傾向にあるので、歯磨きの際は歯周ポケット(歯と歯茎の隙間)を丁寧に磨くようにしましょう。

歯周病と糖尿病の関係性

歯周病は代表的な生活習慣病である糖尿病にも関係しています。

これまでは糖尿病は肥満や運動不足、ストレスが主な原因とされていましたが、最新の研究によって歯周病によるインスリンの低減が糖尿病の発症に関係していると判明しました。

実際に投薬や食事療法を継続しても血糖値が改善しなかった人が歯周病の治療を受けた事によってHbA1C(平均血糖値)が低下・安定した例が報告されています。

禁煙の重要性

オーラルフレイルを予防するためには虫歯などの病気だけでなく、喫煙のような有害な習慣も控える必要があります。

特に喫煙者は非喫煙者と比較して歯周病にかかるリスクが4倍も高く、歯周病の進行速度も2倍早いとされています。

最近では改正健康増進法の施行や禁煙治療の健康保険対象化などによって禁煙がより一層促進していますが、結局の所禁煙するかどうかは喫煙者本人の判断に委ねられているので他人が強制出来る事ではありません。

なので喫煙をしている人は今一度それを続ける事によるデメリットや病気にかかった時の事を考えて、禁煙を検討してみましょう。

喉の衰えとオーラルフレイル

健康寿命を延ばすためのオーラルフレイル予防

オーラルフレイルは口の中や歯の問題だと思われがちですが、実際には喉も含まれます。例えば喉は食べ物の通り道なので飲み込むという動作に関係していますし、息をしたり声を出すのも喉がその役割を大きく担っています。

そして口腔機能と同様に喉も老化によって次第に衰えてしまいます。喉の衰えは嚥下・呼吸・発声の3点でチェックする事が出来るので、日常生活の中で食べ物を飲み込んだり大きな声を出す事が難しくなるような事があれば、早い段階で専門機関の診断を受けるようにしましょう。

喉の衰えの原因と予防

喉の衰えは喉の筋肉が弱まる事によるものであり、40代を中心に始まるとされています。

一方で日常的によく会話する人は喉の筋肉もあまり衰える事がないですし、会話が少ない人でも深呼吸や舌の体操などによって喉の筋肉を意図的に鍛える事は十分に可能です。

なので健康目的で運動や筋トレをされている方は、同時に口や喉の筋肉も鍛える事をオススメします。

喉の衰えと口腔癌

喉の衰えは口腔癌にも繋がってきます。口腔癌とは口の中に出来る癌の総称であり、舌癌や喉頭癌を含みます。

比較的早期発見や治療がしやすいと言われていますが、口内炎と勘違いして放置する人もいるので自己判断せずに歯科医や口腔外科の検診を受けるようにしましょう。

また痛みや炎症以外にも声のかすれや嚥下した時の違和感も初期症状として挙げられます。

まとめ

今回ご紹介した通り、口腔機能の衰えによるオーラルフレイルは認知症やその他様々な疾患の原因となりうるので健康な時からしっかりと対策する事が大切です。

特に歯科医の定期検診や日常的な歯磨きをするだけでもオーラルフレイルの可能性は大きく下げる事が出来るので、しっかりと習慣化する事をオススメします。

支援や介護を必要としない健康寿命を延ばす事は自分のためだけでなく、若者や社会の将来にも繋がってくるので、一人ひとりが健康的な生活を心がけるようにしましょう。