知っておきたい高齢者住宅の注意点

賃貸借契約書と生活支援サービス契約書について詳しく解説

知っておきたい高齢者住宅の注意点

はじめに

急速に高齢化が進む日本で、高齢者向けの住まいも多様化してきました。高齢者ホームや高齢者向けの住宅のなかには、今は自立しているが将来が心配という人のための住居型有料老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住という)があります。
この記事では、近年高齢者向け住まい選びの有力な選択肢となっている「サ高住」について、メリットやデメリット、契約上の注意点などを解説してゆくことにします。

サービス付き高齢者向け住宅とは

サ高住は、2011年10月に施行された「高齢者の住居の安定確保に関する法律(通称:高齢者住まい法)」の改正により創設された高齢者向け賃貸住宅です。対象者は60歳以上の高齢者、あるいは要介護認定を受けた60歳未満の人で、居室の広さや廊下幅が決められており、段差解消、バリアフリー構造などを整えるとともに、安否確認と生活相談のサービスを提供します。2011年12月時点で112棟だったサ高住は、2019年5月時点で7,300棟を超えるほど増加し、人気の高齢者住宅になっています。

サ高住で提供されるもの

① 安否確認

スタッフやセンサー、もしくはその併用による定期的な安否確認が行われ、緊急時には提携先の病院などに連絡するシステムがとられています。

② 生活相談

日常生活を送るうえでのさまざまな相談に対応し、心身の状況により医療や介護サービスを受けるための相談やサポートに応じます。

以上の2点が、サ高住が提供するよう義務付けられているサービスです。その他、入浴や排せつなどの介護の提供、洗濯・掃除などの家事供与、健康管理などの提供は住宅の任意とされていますが、これらのサービスを実施しているサ高住もあり、その場合は特定施設の認定を受けた介護付き有料老人ホームとほぼ同様の内容になっています。

サ高住の契約形態

サ高住には2種類があり、多くは①一般型とよばれるものですが、②介護型とよばれるタイプもあります。

① 一般型-住まい+安否確認+生活相談の提供
② 介護型-住まい+安否確認+生活相談+介護サービスの提供

① 一般型

サ高住では賃貸借契約により入居し、介護が必要になった場合は入居者自身が外部の介護保険サービスと契約して利用する形が主流です。住居形態が有料老人ホームの住宅型と似ていますが、住宅型有料老人ホームは住居と介護サービスの契約が一体になっているのに対して、サ高住では住居と介護サービスは別々の契約を結ぶことになります。
サ高住の一般型は借地借家法に基づき、賃料を支払うことで居住の権利が確保されますので、登録する事業者に対しては「長期入院を理由に事業者から一方的に契約を解除できない」「敷金、家賃、サービス対価以外の金銭を徴収しない」「前払い金に関しては入居者保護が図られていること」など、入居者を守るための基準が設けられています。サ高住の大部分はこうした賃貸借契約に基づく、生活に不安を覚える単身者もしくは夫婦ふたり暮らし向けの住宅です。
費用は入居時に、敷金、礼金、保証金などを含めて数10万~数百万円となります。入居後は家賃、光熱費、管理費など、10万~30万円ほどの費用がかかり、食費を含む生活費は個人の生活レベルによって異なります。アパートやマンションに賃貸契約で入居するのに似ていますが、サ高住は高齢者に適した構造になっていること、サービス付きという点が一般の賃貸物件と違うところです。

② 介護型

またサ高住の一部には有料老人ホーム同様、特定施設入居者生活介護(特定施設)の指定を受け、入浴・排せつ・食事等の介護や日常生活上必要な支援を提供している施設もあります。その多くは施設に併設する形で介護サービス事業を行っていて、一般型に対して「介護型」とよばれることがあります。
契約形態は、サ高住一般型が賃貸借契約なのに対し、介護型は有料老人ホームのように利用権契約で、入居一時金または前払い家賃として数百万円ほど必要になることがあります。

サ高住の基本データ

 根拠法-高齢者の住居の安定確保に関する法律(一般型、介護型)、介護保険法(介護型)
利用できる介護保険-特定施設入居者生活介護(介護型)、訪問介護、通所介護等の居宅サービス(一般型)
個室面積-25㎡以上、共有スペースが確保されていれば18㎡以上
設置団体-限定なし(営利法人中心)
対象者-60歳以上、要支援・要介護認定を受けている60歳未満の単身・夫婦世帯
件数-7,360件(2019年5月現在)
定員数-244,917人(2019年5月現在)

サ高住一般型のメリット・デメリット

サ高住一般型のメリットは、外出や外泊、来客などに制限がないため、自由度が高い生活を送れること、一般的な賃貸アパートやマンションと同様、個室が確保できるためプライバシーが守られる点があげられます。
さらに、一般の賃貸住宅ではアパートやマンションのオーナーが高齢者だけの入居を好まない傾向にありますが、サ高住は逆に60歳以上の人が対象ですので、他の賃貸物件のように高齢を理由に審査に落ちたり入居を断られたりすることがありません。
デメリットとしてあげられるのは、入居中に要介護となり介護サービスを受ける必要が生じた際には、別途契約が必要で費用も別にかかることです。また、サ高住は自立している人から軽度の要介護状態の人を対象としているため、要介護レベルが高くなった場合に、要介護度によっては住み続けることが難しくなります。
入居時に自立していたとしても、高齢者である限り年齢を重ねるとともに身体状況が悪化したり認知症を発症したりしやすくなります。そのような変化にどの程度対応できるかの確認は必要です。サ高住は看護師常駐も義務付けられていないので、終の棲家に適しているとはいえず、住み替えを前提として入居する住まいという色合いが濃いともいえます。

サ高住介護型のメリット・デメリット

サ高住のなかでも「特定施設」の指定を受けているサ高住介護型は、介護付き有料老人ホームと同様に、要介護度が上がったり認知症の症状が進んだりしても対応できる点が大きなメリットとなります。介護サービス事業を施設内に併設もしくは隣接しているスタイルがほとんどで、入居者にとって便利な構造のため、多くの人が実際に利用しています。
しかし、入居にともない以前から利用していたサービスを継続して利用できるのか、サービス内容が合っていない、サービス内で何らかのトラブルがあったなどの場合、提携外の事業者と契約できるようになっているかは事前の確認が必要になります。

サ高住の選び方

サ高住一般型は、入居者が事業者との間に賃貸借契約を結び入居するもので、基本的に介護サービスは含まれていません。前述したとおり、サ高住一般型に義務付けられているサービスは、安否確認と生活相談の2つです。スタッフは日中のみ対応可能で、夜間については常駐が義務付けられていませんが、緊急時には駆け付ける体制になっています。
一般の賃貸住宅と生活のイメージはほとんど同じですので、サ高住を選ぶ際には①立地・環境、②費用(入居時一時金、月額費用)、③運営方針 ④居室をチェックし、総合的に選ぶようにします。
含まれるサービスは安否確認と生活相談ということ、バリアフリーであることはどのサ高住にも共通していますが、その他個別の特徴や、施設ごとに規約が違っている場合もありますので、複数の施設を比較検討し、実際の見学や可能であれば体験入居をしたうえで契約を結びましょう。

① 立地・環境

サ高住を含む高齢者住宅を選ぶ際の大前提となるのが、エリアやアクセスなどの立地条件です。最寄り駅から近くても坂が多い、渋滞が発生しやすいということもありますのでさまざまな時間帯や状況を想定しながら見学を行います。都会、田舎、郊外など入居者本人の好みがあれば考慮します。高齢になってからの転居は、物理的にも心理的にも負担が大きくなるため、長年住んだ場所と環境的に似ている土地が望ましいといえます。

② 費用

高齢者住宅のなかでもサ高住一般型は賃貸借契約に基づき入居するものですから、入居時に発生する費用に敷金や礼金、保証金があります。入居後の費用として賃料、管理費・共益費、水道光熱費がかかり、その他生活費を含めて月額どれくらいになるかを計算します。サ高住一般型には駐車場付きの物件もありますが、駐車場代は家賃とは別に支払う契約がほとんどです。サ高住の賃料は、近隣の賃貸物件の賃料相場が基準となっていることが多く、大都市など地価の高い地域では賃料も高く、地方都市など地価の安い地域では安くなります。
賃料の支払い方法には、月額で支払うほかに「前払い式」があり入居期間中に必要な費用を前もって支払う方式で、終身利用を前提として想定住居期間の住居費用と、その想定を超えた期間分の住居費用をもとに、施設ごとに決められています。
サ高住一般型の場合、要介護になった際の介護サービス費用は月額料金に含まれませんので、
将来的に介護サービスを利用するとしたらどれくらいの金額になるのかを考慮する必要があります。
入居時に引っ越し業者に依頼する場合は、通常の引っ越しと同様に、距離が長く荷物が多いほど料金が高くなります。入居時に発生する費用、月々の費用の確認、その他の負担額の予測をしておきましょう。

③ 運営方針

高齢者住宅や高齢者ホームの設置には自治体への届け出が義務付けられていますが、都道府県等へ事業の届け出を出しているかの確認は念のため行います。また、サ高住の運営者側は、入居者の身体状況の変化にどの程度対応するのか、事故防止の取り組みを行っているかどうかも確認し、長く住めるかどうかの判断材料にしましょう。

④ 居室

サ高住は25㎡以上の居室面積、食堂やリビングなどの共有スペースが十分にあれば18㎡以上の居室面積が義務付けられています。多くの時間を過ごす居室は、間取り、明るさ、設備のチェックを注意深く行います。
一般的に南向きの間取りはもっともよいとされていますが、夏は暑すぎる場合が多くエアコンは必需品です。東向きは、午前中は明るいのですが正午以降は暗くなります。西向きは午後から日当たりがよくなりますが、夏の西日は非常に暑くエアコンはもちろん断熱ガラスや遮光カーテンも必要、などの特徴を考慮しましょう。

まとめ

サ高住は自由度が高くプライバシーも守られるため、まだ介護は必要ないが少し生活に不安を抱き始めた高齢者に人気があります。入居を検討している人は5年先、10年先の身体状況の変化もある程度見越し、介護度が重くなった場合は介護付きの施設に移るなど、柔軟に考えることが必要と思われます。
契約に関しては、繰り返しになりますが賃貸借契約であり、介護や生活支援が必要になった場合は入居者自身が外部のサービスと契約するようになります。