2020年09月24日更新
~グループホームの現状とその特徴について詳しく解説~
厚生労働省の平成29年版高齢社会白書によると、65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計についてみると、2012年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)でしたが、2025年には約5人に1人になるとの推計があります。そして、その数は今後ますます増え続けると予測されています。そこで、介護保険サービスで認知症に対応する認知症対応型共同生活介護というグループホームについて説明します。
グループホームとは、認知症の高齢者を対象にした、少人数での共同生活を提供するホームのことです。グループホームは介護保険の地域密着型サービスに属し、介護サービスにおける費用は介護保険利用費として支払います。介護保険制度では、認知症対応型共同生活介護と呼ばれています。
ユニット型と呼ばれる少人数制での生活基盤を採用しており、1ユニットは5~9名の高齢者で構成されています。入居者一人ひとりに個室が与えられているため、プライベートな生活が確保されています。その一方で、日中は共同スペースで各利用者同士が交流を図れるようになっていて、レクリエーションも充実し、入居者は部屋に引きこもることのないような生活を送ることができます。
認知症知識のある介護スタッフにより24時間体制でケアを実施しますが、食事の支度や清掃といった家事全般は、基本的に職員のサポートにより入居者同士が力を合わせて行うのが基本です。認知症の進行を遅らせる作業療法として、作業をすること自体に意味があるからです。可能な範囲で作業は入居者同士でコミュニケーションをとりながら共同でしてもらい、脳の活性化を図ります。
グループホームの入居条件には次のようなものがあります。
グループホームの費用には、初期費用と月額費用があります。
初期費用とは保証金や入居金などです。0から100万円程度ですが、いわゆる敷金のようなものなので、退去するときに償却額を除き返金されます。償却額は、入居期間や償却規定により施設により相違があります。
月額費用はおおよそ15万円~20万円程度で、内訳として家賃や管理費などの居住費、食費、水光熱費、介護サービス費などが挙げられます。このほか、おむつ代や散髪代などは別途負担することになります。
費用は、土地や建物代、食事内容、介護体制などで施設による違いがあります。また、介護度によって介護保険のサービス費が変わります。
グループホームの医療体制については、看護師の配置が義務付けられていないこともあり、医療的ケアが必要な人は入居が厳しい場合があります。
1990年代後半に国のモデル事業として始まり、2000年の介護保険制度開始を機に年々増え、2015年の時点では、全国の事業所数は12,983にのぼりました(厚生労働省平成27年介護サービス施設・事業所調査)。
入居者が家族や地域住民と触れ合える地域であり、病院や入居型施設の敷地外にあることが立地条件です。
入居者の定員は、1ユニットあたり5人~9人(事業所全体で最低4人以上)で、1つの施設に2ユニットまで設けることができます。
1居室の定員は1人、個室か準個室が基本です。
部屋の床面積は、収納設備等を除いて7.43平方メートル以上と定められています。
施設内には、生活する部屋のほかに、入居者同士が交流できる共同スペースが設けられています。また、施設によって多少の差はありますが、キッチン、ダイニングルーム、トイレ、浴室、洗面、洗濯室などが基本的に備わっています。リハビリ・レクリエーションルーム、健康チェックルームがあるところもあります。
具体的なサービスの内容は、介護保険法第8条第20項により「入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活の世話及び機能訓練を行う」と定義されています。
認知症ケアのできる介護職員などが配置されています。
・管理者
3年以上の認知症介護経験を有する専従・常勤の者1名
・介護計画の作成担当者
1名以上はケアマネジャー。管理者は計画作成担当者との兼務も可能です。
・介護スタッフ
常勤換算して利用者3名に対し1名以上の配置が必要(24時間常駐、夜間は常時1名以上)です。
・医療、看護スタッフ
配置は義務ではありませんが、施設によっては配置していることもあります。
・施設の代表者
施設従業者かホームヘルパー3年以上の経験者、もしくは保健医療福祉サービス事業の経営経験のあることが求められます。
今後さらに高齢社会が進行する中で認知症についても拡大していくことは確実です。そのためグループホームの増加が望まれます。しかし、介護保険適用施設であるために、国の介護保険運用の変化に影響を受けます。
グループホームへの入居を検討する場合、メリットとデメリットを正しく把握しておく必要があります。
グループホームは軽度の認知症高齢者を対象とした施設なので、認知症が心配な家族にとって安心できる施設です。
入居者がユニット単位(5~9名)の少人数で、食堂や浴室など共同スペースもあることから、他の入居者や職員とのコミュニケーションを図りやすく、アットホームな雰囲気で生活できることがあります。
部屋については個室か準個室のため、プライベートな空間も確保できます。
グループホームは市町村の介護保険法上の事業者指定を受けなければ開設できません。そのため、人員や設備の基準を満たしているので安心できます。
医療・看護スタッフの配置は義務ではないため、医療ケアには特化していません。
定員が少ないこと、地域に密着していることなどにより空きがない施設が多く、入居までに時間がかかることがあります。
介護認定を受けていても、ある程度は自立して日常生活を送れることが利用の条件であるため、介護が重くなると退居しなくてはなりません。
グループホームの入居条件は、現在65歳以上で要支援2または要介護1以上の認知症の人のみが入居可能となっています。「物忘れが激しい」など認知症の傾向がある場合でも、要支援1の人は入居が認められていません。また、実際にはある程度の自立した生活が求められることから、車いす生活が必要な要介護4以上では難しくなる場合が多くあります。
入居までの流れは下記の通りです。
ケアマネジャーなどの紹介があれば検討します。施設探しでは、市区町村の介護資料や直接の問い合わせ、インターネットでの介護施設の検索サイトを利用し探します。
空き状況がない施設が多くあります。空きがない場合は待機人数を確認します。空き状況があるところや待機人数が少ないところを絞り込みます。
複数のグループホームを見学し比較検討することが大切です。
料金プラン、緊急時の体制、退去要件、入居時必要書類などを確認します。
必要書類は、申請書、収入や資産を証明する書類、健康診断書などです。また、認知症であることが入居条件になるため、認知症を証明できる医師の診断書も必要です。
グループホームは介護保険制度の中で規定された施設サービスで、軽度認知症に対応するものです。
入居基準では、現在65歳以上で要支援2または要介護1以上の認知症の人のみが入居可能となっています。また、実際にはある程度の自立した生活が求められることから要介護4以上となると難しいのが現状です。
グループホームでは介護度が重くなると退去しなければなりません。グループホームを退去した後に移る場所としては、介護付有料老人ホーム、特別養護老人ホームなどが考えられます。
少人数のため、利用者同士も親しくなりやすく、職員とのコミュニケーションも十分とれるシステムです。そこが最大の良さです。
グループホームの入居では待機が必要な場合が多くあります。待機人数は市区町村の介護資料、インターネットなどで知ることができる場合が多くあります。また、施設への直接の問い合わせは内容が正確に分かり有効です。
そこで最後に
グループホームに入ろうという人は認知症です。認知症であれば人による症状により、被害妄想や心身の不安定さ、うつ状況などがともなう場合があります。そこから施設への入居について強い拒否感がある場合があります。このような不安感、拒否感がある場合にどうするかですが、本人自身の施設への見学がどうしても必要です。ここなら自分でもやっていけるかなと安心させることが必要です。そのためには家族のサポートが不可避です。
住所地の施設にしか原則的に入れません。施設数も限られており市区町村での施設情報が参考になります。
認知症の進行を遅らせるにはコミュニケーションが重要です。コミュニケーションをとることは脳の活性化につながり、うつや引きこもりを防ぎます。
グループホームの運営は民間企業でも参入可能です。施設も社員寮の跡地利用など既存物件をリフォームしたものも多く見られます。中小ビルでフロアー別にユニット体制を組んでいるところも見受けられます。少人数制で職員の目が行き届き、介護サービスも充実している場合が多くあります。