知っておきたいデイサービスの基礎知識

元気なうちに基本を知って準備すると安心!

知っておきたいデイサービスの基礎知識

はじめに

近年、少子高齢化や核家族化が進む中で、介護の問題は深刻になる一方です。ひと昔前によく見られた三世代家族の、祖父母、両親、子どもという家族構成では、祖父母が高齢になったり病気になったりしたら両親が介護をし、子は家事などを手伝うのが当たり前でした。
現在では、65歳以上の高齢者が65歳以上の高齢者を介護している「老老介護」は増加の一途をたどっています。老老介護では、すでに高齢の子どもがさらに高齢の親を看たり、高齢者夫婦や高齢者兄弟姉妹で暮らし、一人が一方を介護したりするケースがあります。
日本人の平均寿命は2018年で女性が87.32歳、男性が81.25歳で前年よりさらに延びて記録を更新しました。しかし「平均寿命」と「健康寿命」には大きな隔たりがあり、自立して生活できる年齢である健康寿命は女性で74.79歳、男性で72.14歳です。今後、高齢者の医療費や介護費の金銭的負担はますます増え、実際介護にあたる人の手もさらに必要になることが予想されます。
65歳になると市町村から介護保険被保険者証が交付され、その人の健康状態により様々な介護サービスを受けられるようになります。現代の日本では65歳の人を高齢者と呼ぶには早い、60代はまだまだ若いと思うでしょうが、元気なうちにこそ自分の住む地域、または親御さんが住む地域の高齢者サービスに関する知識を得ておくことは決して無駄ではありません。
高齢者サービスにはいろいろなタイプがありますが、この記事では在宅介護の大きな支えとなる「デイサービス」について、基本的な内容を解説していきます。

デイサービスとは何か

デイサービスとは通所介護ともいい、日中に自宅から介護サービスを提供する施設に通うことを指します。日帰りで受けられる介護サービスの代表的なもので、平成30年度の厚生労働省の調査によると、前年29年の利用者は約150万人で、福祉用具の貸与を除き、在宅で利用するサービスの中ではもっとも多くの人に利用されています。

デイサービスの内容

デイサービスは週に1回から数回、送迎車で自宅から施設に通い、以下のようなサービスを受けることができます。
 健康チェック
 入浴
 食事
 機能訓練
 レクリエーション
提供する施設により若干の差はありますが、概ね上記のサービスが受けられると考えてよいでしょう。
参考までに、ある施設の一日の流れをご紹介します。
 8:30~9:00 送迎車で自宅へお迎え
 9:30  看護職員による健康チェック(検温、血圧測定など)
 10:00 入浴、休憩
 12:00 昼食、服薬(必要な人)
 13:00 レクリエーション、体操、機能訓練など
 15:00 おやつ
 16:30 送迎車で自宅にお送り
横になりたい人は施設内で昼寝をすることもできますし、レクリエーションや機能訓練は強制されることはありませんので、気が進まないときには参加しなくても大丈夫です。
上記のように、朝のうちに家を出て夕方近くに帰宅するプログラムを組んでいる施設がほとんどで、夜は自宅で休めること、住み慣れた家を離れることなく利用できることが、デイサービスのよいところです。

デイサービスを受けるまでの手順

デイサービスを含む介護保険サービスを利用するためには、「要介護認定」を受けることが必要です。申請は市町村の窓口で行います。申請に必要なものは以下のとおりです。

①申請書(窓口でもらうかインターネットでダウンロードして印刷する)

②介護保険被保険者証、40~64歳で特定疾病の場合は健康保険被保険者証

③主治医の情報がわかるもの(診察券など)

④マイナンバーがわかるもの(個人番号カード、通知カード)

⑤提出代行者は印鑑、委任状、身元を証明するもの

申請が出されると市町村の認定調査員が自宅を訪問し、申請者の心身の状態を直接調査します。その内容と主治医意見書の内容をあわせて要支援・要介護度が判定され、30日以内に認定結果が記載された通知書が届きます。

要介護区分と支給限度額

要支援・要介護度は、要支援1~2、要介護1~5の7段階に分けられて、要支援1がもっとも軽く、要介護5がもっとも重くなります。要支援1~2の人は「介護予防サービス」を、要介護1~5の人は「介護サービス」を受けることになります。要介護度が高くなるほど、介護保険の範囲で受けられるサービスの種類や時間が多くなります。
下の表は、要支援・要介護と認定される目安と、それぞれの1ヶ月の支給額を一覧にしたものです。支給限度額とは、この金額の範囲以内で介護保険を使ったサービスを受けられるという意味です。自己負担額は本人の所得に応じて、1割、2割、3割となります。また、支給限度額を超えて介護サービスを利用した場合、超えた分については全額自己負担となります。

区分 認定区分の目安 支給限度額
要支援1 排泄や食事など日常生活はほとんど自分で行えるが、一部に介助が必要な状態 50,320円
要支援2 要支援1より立ち上がりや歩行の運動機能に若干の低下が見られ、介助が必要な状態。 105,310円
要介護1 要支援に比べ立ち上がりや歩行が不安定で、食事、排泄や入浴などの日常生活動作に部分的な介護が必要な状態。 167,650円
要介護2 自力での立ち上がりや歩行が困難。食事、排泄、入浴などの日常生活動作に一部または全面的な介護が必要な状態。 197,050円
要介護3 立ち上がりや歩行が自力でできず、食事、排泄、入浴などの日常生活動作に全面的な介護が必要な状態。 270,480円
要介護4 介護なしに食事、排泄、入浴、衣類の着脱などを行うことが困難で、日常生活全般に介護が必要な状態。 309,380円
要介護5 介護なしに日常生活を営むことが不可能で、ほとんど寝たきり。意思の疎通も困難な状態。 362,170円

認定結果によるデイサービスの開始

認定の結果は要支援・要介護の7つの区分か、非該当となり、受けられるサービスは以下のとおりです。

・非該当の場合
介護保険のサービスは受けられません。ただし市町村が提供している介護予防事業に参加が可能です。

・要支援1~2の場合
地域包括支援センターでケアプランを作成してもらい、「介護予防サービス」を利用することができます。要支援の人が利用できる、デイサービスの施設を探してもらいます。

・要介護1~5の場合
ケアマネージャーにケアプランを作成してもらい、「介護サービス」を利用することができます。ケアプランの中に、デイサービスの利用を入れてもらいます。

デイサービスのメリット・デメリット

デイサービスには利用者本人にとっても家族にとっても、大きなメリットがあります。半面、デメリットも考えられますので、一つずつ見ていきましょう。

デイサービスのメリット

・心身の健康増進

デイサービスで提供される機能訓練やレクリエーションは、身体の健康維持に役立ち、年齢に応じた体操や歩行練習を行うことで、生活不活発病の予防になります。さらに、他の利用者やスタッフとの会話を通して孤立感、孤独感が薄れてメンタル面も安定してきます。家に引きこもりにならず社会と接点を持てることは、デイサービスの大きなメリットです。

・安全な入浴

高齢者の入浴事故が後を絶ちません。厚生労働省人口動態統計で、家庭の浴槽での溺死者は平成18年で3,370人、平成28年で5,138人と発表され、10年間で約1.5倍になっています。これは冬場に起こりやすいヒートショックが原因とされており、家庭の浴室では寒い脱衣所から熱いお湯につかることで急激な血圧変動が起こり、意識消失や心筋梗塞、脳梗塞を発症しやすいといわれています。施設内であれば室温は一定に保たれ、常に介助者がいますので家庭での入浴よりはるかに安全です。

・活力のある生活

デイサービスでは、様々なレクリエーションが行われています。折り紙や工作など手先を使うものも多く、楽しいことに加えて、脳の活性化には非常に有効なプログラムです。夏には七夕飾り、冬にはクリスマス飾りやお正月飾りを作るなど季節感を忘れない工夫がなされています。かるたやトランプなどのゲームもよく取り入れられます。また、近隣の保育園や幼稚園から慰問に来て、歌や踊りを見せてくれたり通所者と一緒に歌ったりする企画もあります。レクリエーションは各デイサービス事業所が特に力を入れているプログラムで、コミュニケーション能力や身体機能の向上にたいへん有効とされています。

・介護者の負担軽減
介護をしている側の家族にとっても、休息が必要です。被介護者がデイサービスに行っている間は自由に時間を使うことができますし、数時間にせよ距離を置くことで介護疲れや介護ノイローゼの予防になります。介護は思った以上にストレスがたまる作業で、家族だけの介護は孤立しやすく精神的に追い詰められがちです。介護には他人の手を借りることが、介護する側、される側の双方のために非常に重要なのです。

デイサービスのデメリット

・費用負担

デイサービスの費用は介護保険を使うため自己負担額は収入に応じて1~3割ですが、それでも自宅介護よりは費用がかかります。費用負担は利用する回数に比例するため、利用回数を調整するなどして考えるとよいでしょう。

・利用者のストレス

これは本人の性格や今までの生活習慣により個人差がたいへん大きいのですが、デイサービスを喜ぶ高齢者だけではありません。周囲の人が良かれと思って勧めたことが、裏目に出ることもあるのです。
「知らない人たちと一緒に過ごすくらいなら、家に一人でいたほうがいい」、「自分のことは自分でできる」、「年寄り扱いしないで欲しい」など、高齢者の心の中は想像以上に複雑でデリケートです。
そのように感じている人を無理やりデイサービスに参加させることは、本人にとって大きなストレスになりかねません。また、通ってはみたものの、通所者やスタッフの中に合わない人がいたり、通所者同士で喧嘩をして行かなくなったりという例もあります。

デイサービス利用上の注意点

さて、デイサービスに通うことが決まったら、いくつか準備しておくことや注意することがありますので、説明します。デイサービスは集団生活の場ですので、一定のルールを守る必要があります。

・持ち物に氏名を書く

靴やカバン、衣類などの持ち物にはすべて名前を書いておきましょう。高齢になるほど忘れ物が多くなりますし、入浴や着替えの際に自分の衣類がわからなくなることがあります。直接名前を書くのが難しい場合には、アイロンで貼れる名前シールなどを使ってみましょう。

・貴重品は持って行かない

デイサービスは自宅と施設の往復だけで、施設に滞在中もお金を使う機会はありませんので財布は必要ありません。また高価な時計やアクセサリーなども、紛失すると自分も周囲の人もスタッフも嫌な思いをしますので、持って行かないようにします。

・体調不良のときはデイサービスに参加しない

特に発熱や咳、下痢や嘔吐の症状があるときは感染症の疑いがありますので、参加を見合わせ、医師の許可が出るまで自宅で待機します。

・普段飲んでいる薬、健康保険被保険者証とおくすり手帳を持参する

お昼の服薬がある人はその分を持参し、施設で飲むようにします。またデイサービス利用中の病気やけがなどで家族が呼ばれ、施設から病院に向かうこともありますので、健康保険被保険者証や診察券、おくすり手帳は携帯するようにします。

まとめ

在宅介護を続けているとどうしてもストレスがたまり、介護者が感情的になったり被介護者に対する虐待につながったりします。週のうち何日か施設に通うデイサービスは、介護される側にとってもする側にとってもメリットが大きいものです。
各施設では、利用者とその家族が生き生きとした有意義な時間を過ごせるように、また高齢者が少しでも健康寿命を延ばせるようにとあらゆる工夫をしています。上手に利用して健やかな介護生活を送りたいものです。