失敗しない生前戒名と院号取得

戒名と院号、その取得方法を徹底解説

失敗しない生前戒名と院号取得

戒名や院号が高額なことと価格の基準が不透明なことへの批判が増しています。現代の消費者感覚とマッチしない宗教の名によるサービスの特殊性があります。戒名や院号の提供は、寺院による葬儀ビジネスにおける法要と並ぶ主要なサービス商品と言えるでしょう。従来、この戒名や院号の提供はお墓を持つ菩提寺の既得権とされてきました。しかし、近年菩提寺と関係なく、僧侶の葬式や法要への派遣や、僧侶により戒名を付けるサービスが現れました。いずれも低価格での価格の明示が特徴です。生涯独身の人、子どものいない人、お墓の承継者がいない人も増え、生前での戒名・院号取得の注意点をまとめてみました。

1.生前戒名と院号

(1) 戒名と院号とは

①戒名自体の意味

戒名は仏教において現代では一般的に亡くなった人につける名前のことを指しますが、本来戒名というものは、生きている人が仏門に入るときにつけてもらう名前のことを意味します。現世で戒名を得て仏教に仕える仏弟子になる意味です。生前に戒名を授与される生前戒名が本来の形でした。
しかし、その後日本では、人は死後に成仏するものであるという考え方が広まり、亡くなった人が仏の世界に行くには俗名のままでは良くないという考えで、亡くなった人に戒名をつける慣習が生まれてきました。

②戒名と院号などの形式

現代の戒名は現世における人の欲望を反映し格付けが生まれてしまい、また寺院側のビジネスと結びつき、戒名の格式により価格の差が生まれてきている現状があります。
戒名の形式は、「院号」、「道号」、「戒名」、「位号」の4つ要素などで構成され全体を戒名と呼んでいます。

(a) 院号

院号は戒名の最初に位置し、院の字がつくものです。もともとは天皇、皇族、将軍などの地位の高い人に付けられたものですが、現代では、生前に寺院や社会に大きく貢献した人、また相当の地位や身分の人に、戒名の上位として与えられるものです。

(b) 道号

道号はもともと僧侶のことを意味し、仏教の教えを得た人や格の高い人などにつけられるものです。現代では、院号と同様戒名の上位として与えられるものです。また、宗派によっては設定していない場合もあります。

(c ) 戒名

2字から成り立つ死後の名前で、本来の意味の部分です。亡くなった人の別名のことで、その人の趣味や性格、特徴、俗名の1文字などを表す漢字を入れる場合が多くあります。

(d) 位号

位号は仏教徒の階級を表すものです。性別や年齢、地位などで決まり、戒名の後につきます。
位号に関しても、生前に社会や寺院に貢献しているほどより格式の高いものが与えられます。

(2) 仏教宗派による戒名の差異

宗派により戒名の呼び方が一部異なります。浄土真宗では戒律がないため、戒名という言葉は使わず、法名と言います。また日蓮宗では法号と言います。

①浄土宗

院号+誉号+戒名+位号
浄土宗では道号の代わりに「誉号(よごう)」をつける場合があります。・誉・・となります。

②浄土真宗

院号+釋号+法号
浄土真宗では戒名を法名と呼び「釋(釈)」をつけ、・釋・とします。釈をつけるのはお釈迦様の弟子になるという意味です。

③曹洞宗・臨済宗

院号道号+戒名+位号

④日蓮宗

院号+道号+日号+位号
日蓮宗では「日号」をつける場合があり、日号がつくと・・日・となります。

⑤真言宗

梵字+院号+道号+戒名+位号
真言宗では戒名の頭に「ア字の梵字」を記して大日如来の仏弟子となったことを表します。「ア」は大日如来を表します。

⑥天台宗

院号+道号+戒名+位号

(3) 戒名や院号は金額次第のものなのか?

仏教の基本的な教えは、本来は人の平等を説くというものです。ところが、江戸時代などで身分制度が定着化し、差別と戒名におけるランク付けが生まれ、現代でも形式において継承しています。戒名は本来、仏弟子としての信仰の度合いや生前の寺との関わりの強さなどを示しますが、実際には寺院によりランクの高い戒名ほど高く販売されている面があるのも事実でしょう。

(4) 戒名や院号は本当に必要なものなのか?俗名でもいいのではないか?

戒名や院号は現代では形式化し本来の意味を反映していません。仏教への信仰がないか薄いまま単に死後の名前として、葬儀とお墓にだけ使われているものかもしれません。また、金額により戒名の付け方に差があること自体に疑問を感ずる人もいます。そのため、俗名のままでも良いという考えがあります。

2.生前戒名と院号の現状

(1) 現代における生前戒名と院号の目的

現代において生前戒名と院号を取得する目的は、第1に、自分の気にいった戒名を付けたいというニーズです。戒名の中の原点となる部分に自分のアイデンティティを表現したいという欲求でしょう。第2に、遺族に戒名を付ける手間と費用を掛けさせたくないという配慮でしょう。

(2) 生前戒名と院号をつける際の問題点

ユーザー、消費者に生前戒名と院号を取得する費用が高いという不満や不信があり、並行して従来の菩提寺に関係のない戒名や僧侶の派遣を低価格・価格明示で請け負う団体が生まれてきました。しかし、自分が入る予定のある寺院墓地がある場合は、そこが菩提寺となり戒名をつけるのが通常です。そのため、他で作った戒名を菩提寺が認めないというトラブルが発生する可能性があります。

(3) 生前戒名と院号と生前墓の一体化

家のお墓のある菩提寺と関係なく、新たに自分で生前にお墓を購入する生前墓が増えています。残された遺族に面倒を掛けたくないという本人の意向や、お墓の承継者がいない時代背景を反映しています。生前墓を作るのに合わせて生前に戒名を付けるという一体化した流れもあります。

(4) 戒名や院号の価格が高すぎる、価格が不透明という疑問の拡大と低価格サービスの登場

戒名や院号をつけることが寺院のビジネス商品になっており、俗名では寺院側で葬儀を上げにくいなどと言われたり、価格により戒名の格式が異なるなどもあり、戒名の価格へのユーザーの疑問や不信があります。
並行して菩提寺に関わらない団体で戒名の低額販売も行われるようになり、僧侶の派遣と合わせて葬儀関連仏事サービス業が生まれてきました。

3.生前戒名と院号の今後

(1) 生前戒名・院号をつけたいという欲求自体は伸びるのか?

生前戒名・院号を取得する目的が、自分の気にった名前を付けたいということであればそのニーズは今後拡大していくのでしょうか?現在ではそのような傾向の拡大は見られず横ばい状況ではないでしょうか?

(2) 生前墓は拡大する方向

一方生前墓について少子化傾向は今後も変わらないため、お墓の承継者のいない傾向は拡大していくでしょう。その点では、生前墓と一体化した生前戒名は増える可能性があります。

(3) 菩提寺がある場合は菩提寺で、新たに寺院でお墓を設ける場合は新しく菩提寺となる寺院で、生前戒名・院号は取得する。

菩提寺がある場合は、菩提寺で生前も死後も戒名・院号を取得することは今後もしばらく継続するでしょう。新規に求める納骨堂の場合は、檀家になることを求められない新しい傾向も生まれてきて、今後お墓を求めたかといって檀家にならなければならない拘束は緩まる可能性もあります。そうなれば、菩提寺だけによる戒名授与の拘束は緩まる可能性もあります。

(4) お墓の承継者がいない時代に伸びる樹木葬など合祀墓(ごうしばか。他の人の遺骨と一緒に埋葬されるお墓の形態)では戒名・院号自体が不要になってくる。

合祀墓は墓石がないため戒名を刻印する必要がありません。もし戒名を使うとすれば位牌です。しかし、自宅にお盆や周忌の際、僧侶を招くことがないならば位牌の戒名を読み上げることもないでしょう。

4.生前戒名と院号を取得する場合の準備

(1) 自分が入る墓をどこにするか

自分が入るお墓は家の菩提寺のお墓なのか、入るお墓がない場合は新規にお墓を生前に求めるのかを決めます。生前墓を自分で設ける場合は、寺院墓地にするのか一般霊園にするのかを決めます。寺院墓地の場合は、通常の墓地にするのか、納骨堂にするのか、寺院内樹木葬にするのかの選択があります。一般霊園でも、同様に、一般墓地、納骨堂、樹木葬がある場合があります。

(2) 菩提寺のお墓に入る場合は、菩提寺で生前戒名と院号を取得する。

・菩提寺住職と生前戒名と院号についての希望を伝え了承を得ます。
・費用(お布施額)について打診します。

(3) 新たにお墓を設ける場合で、寺院墓地(納骨堂も含む)を選択する場合は、その宗派の檀家になることが条件の場合が多いため、戒名・院号も宗派の形式による。

先述した通り戒名の形式は仏教宗派により異なるため、お墓を設けた宗派の形式にならざるをえません。

(4) 新たにお墓を設ける場合で、一般霊園を選択する場合は、寺院と関係なく戒名・院号を低価格で取得し墓石に印字することはできるが、法要の際には菩提寺がないため、宗派の僧侶を僧侶派遣団体から派遣してもらう必要があること。

戒名・院号を単に形式的なものとして低価格で済ませることは可能です。ただし、菩提寺がないために各種の檀家としての寺院との付き合いがないため費用は掛かりませんが、法要を行う場合は僧侶派遣団体などを活用する必要があります。

5.失敗しない生前戒名と院号の取得―まとめ

(1) 菩提寺がある場合は、他の団体で戒名・院号取得をしても菩提寺が認めずトラブルになる場合があり、菩提寺での取得が望ましいこと。

(2) 新たにお墓を設ける場合で、寺院墓地(納骨堂も含む)を選択する場合は、その宗派の檀家になることが条件の場合が多いため、戒名・院号も宗派の形式によること。

(3) 新たにお墓を設ける場合で、一般霊園を選択する場合は、寺院と関係なく戒名・院号を低価格で取得し墓石に印字することはできるが、法要の際には菩提寺がないため、戒名・院号の形式に沿った宗派の僧侶を僧侶派遣団体から派遣してもらう必要があること。

(4) 生前戒名・院号を自分で気に入ったものにしたい場合は、菩提寺もしくは新たに寺院の生前墓を設ける際はその寺院の住職と打ち合わせ、費用についても確認しておくこと。

自分の気に行った戒名の案を住職に伝え打合せします。費用についても交渉しても良いでしょう。お任せの場合は自分で相場を調べ、できる範囲のお布施額を包みます。

(5) 戒名や院号が本当に必要なのかどうかを検討し、生前に自ら戒名・院号を取得するか、生前取得にこだわらず遺族と寺院に任せるか、戒名をやめ俗名で行くのかをきめること。

そこで最後に

6.失敗しない生前戒名と院号の取得3ヶ条

(1) 菩提寺がある場合は、他の団体で戒名・院号取得をしても菩提寺が認めずトラブルになる場合があり、菩提寺での取得が望ましいこと。

(2) 菩提寺がなく、戒名・院号を安く提供する団体で取得する場合は、どの宗派の形式にするかの検討・選択をすること。

・いったん決めた宗派は簡単には変えられません。
・菩提寺を持たないため法要では、その都度戒名の宗派の僧侶を派遣団体から派遣してもらう必要があります。

(3) 生前戒名と院号を自分で決めた場合や戒名・院号不要で俗名でいきたい場合は、生前もしくは遺言で遺族に伝えること。

・本人の意思を明確にしておかないと、遺族が世間体を気にして格式にこだわらざるをえなくなります。
・生前戒名と院号があることを遺族が知らないと無駄になる恐れがあります。

生前戒名と院号については、戒名自体の意味から考えたいものです。本来仏教では死後の世界は現世の地位や金銭に関わらず身分的に平等です。戒名のランク付けがされ、それを金銭で買うのは買う側にも売る側にも問題があるのではないでしょうか。その意味を特に反映したものが戒名の中の院号部分です。
生前戒名を行う場合、自分のアイデンティティを現わす戒名の中の戒名部分、2字で示されるものにこだわることになります。
                    頭の片隅に入れておいてください。